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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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140話 百地からの第一報

――一致と、歪みの始点

夜半。

里見の城に、風の気配が一つ落ちた。

桜が文を受け取った瞬間、

封を切る前から――ただならぬものを感じ取っていた。

墨は静かで、文は短い。

百地三大夫らしい、余分を削ぎ落とした報告だった。

《一致している点》

・北条は、相変わらず「武」に重きを置き、

 周辺小領主への圧迫を強めている。

 ――史実通り。

・上杉は、関東への名分を失っておらず、

 内向きながらも秩序の旗を掲げ続けている。

 ――史実通り。

・織田は、まだ“遠雷”。

 美濃・尾張の均衡は崩れていない。

 ――史実通り。

・今川は、体制を維持。

 徳川は忍耐の内側にある。

 ――史実通り。

桜は、ここで一度、息を吐いた。

(……大枠は、まだ壊れていない)

だが、文は続く。

《ズレ始めた一点》

・京を経由する銭と物の流れが、

 想定より早く“東へ寄り始めている”。

・公家筋の一部が、

 北条でも上杉でもなく、

 「海の安定」を基準に名を挙げ始めた。

・名は、まだ公には出ぬ。

 だが、裏では囁かれている。

「あの海の国は、

 戦を呼ばずに、

 物を呼ぶ」

桜の指が、わずかに止まった。

(……里見だ)

百地の文は、そこで少しだけ言葉を増やす。

《所見》

・これは、軍事的介入ではない。

・制度でもない。

・だが、期待が移動し始めている。

・一度、人の期待が動けば、

 歴史は“自ら修正を始める”。

・この動きは、

 姫が意図したものではなかろう。

・しかし――

 止めねば、広がる。

文は、最後に一行だけ、私信のように締められていた。

「姫。

 これは“成功の兆し”であり、

 同時に“歴史介入の証拠”だ」

桜は、文を膝に置き、目を閉じた。

(……やはり、来たか)

戦で変えたのではない。

勝利でも、敗北でもない。

人の期待。

安心の流れ。

金と物の向き。

それが、

歴史の“重心”を、

ほんの少し――ずらし始めている。

桜は、小さく呟く。

「私は……

 歴史を壊してはいない」

「でも……

 触れてしまった」

窓の外、港の灯が揺れている。

完成した港。

人が集まる海。

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