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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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139話 歴史の現在地

――桜、百地に“全図”を求める

桜は、頭の中で勢力を並べた。

武力最強の脅威――北条。

名分と秩序の象徴――上杉。

革新の遠雷――織田。

調整役、海の勢力――里見。

(ここまでは……大きくは変わっていない)

だが、問題はその外側だ。

浅井。

三好。

徳川。

今川。

そして、まだ名も定まらぬ中小勢力。

(私が動いたことで、

 この人たちの“選択の順番”が

 変わっていないか)

桜は、紙に指で円を描いた。

中心は里見。

そこから波紋が広がる。

(港、技術、金、京……)

影響が出ていないはずがない。

桜は、静かに百地三大夫を呼んだ。

「……お願いがあります」

百地は、少しだけ目を細める。

その声色で、ただ事ではないと悟った。

「勢力図を――

 “歴史の流れ込み”で見たいのです」

「軍勢の数でも、城の数でもない」

「人が、

 どこへ期待し、

 どこから離れ始めているかを」

百地は、すぐには答えなかった。

「……重い問いだな、姫」

「知れば、

 戻れぬ道も見える」

桜は、迷わず頷いた。

「だから、今、知りたい」

「歴史が

 まだ、元の川筋を流れているのか」

「それとも――

 私が、堰を作ってしまったのか」

百地は、深く息を吐く。

「承った」

「伊賀の耳と目を、

 “国境を越えて”動かそう」

「ただし――」

百地は、桜を見据える。

「結果を聞いた後、

 お主は“動くな”と言われても、

 動くだろう?」

桜は、少しだけ笑った。

「……はい」

「でも、

 動かない選択も含めて、

 考えます」

百地は、かすかに笑った。

「ならば良い」

「北条は“刃”」

「上杉は“旗”」

「織田は“火”」

「里見は“水”」

「その水が、

 どこまで流れを変えたか――

 見てこよう」

百地が去る。

桜は、ひとり残り、空を見る。

(浅井は……挟まれている)

(三好は……崩れかけている)

(徳川は……耐えている)

(今川は……まだ、形を保っている)

それが、

史実の記憶。

だが、現実は――

忍びの報告でしか測れない。

桜は、胸の奥で小さく呟く。

「歴史よ……

 まだ、私を許している?」

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