130話 思想で攻めてくる相手の正体
――「彼らは“負け”を恐れていない」
① 百地からの報告
夜更け、城の一室。
百地三大夫は、珍しく言葉を選んでいた。
「桜よ……
“攻める理由”を探しておったが、
理由が無い」
桜が顔を上げる。
「無い?」
「あるのは、
正しさだけだ」
② 敵は“困っていない”
百地の言葉は続く。
飢えていない
財に困っていない
兵も足りている
「それでも動く」
「なぜなら――」
百地は、静かに結論を置いた。
「お前たちの在り方が、許せぬ」
③ “思想で攻める者”の輪郭
慈光尼が補足する。
「彼らは、
古い秩序を“正義”と信じている」
土地は武家のもの
領民は従うもの
技術は独占するもの
女は前に出ないもの
「それを崩す存在は、
悪なのです」
④ 桜が気づく、決定的な違い
桜は、ふと呟いた。
「……だから、話し合えない」
百地が頷く。
「奴らにとっては、
説得=敗北」
「理解することが、
信念を壊す」
⑤ 敵の正体は「人」ではない
桜は、はっきり言った。
「敵は、
武家そのものじゃない」
「“武家とはこうあるべき”という像」
まな姫が息を呑む。
⑥ なぜ里見なのか
慈光尼が続ける。
「里見は、
武力で伸びたわけではない」
商いが動く
人が集まる
女が意見を言う
医が命を選ばない
「成功してしまったのです」
桜が静かに言う。
「……成功は、最大の罪」
⑦ 敵の“願い”
百地は、低く笑った。
「奴らは勝ちたいのではない」
「戻したいのだ」
昔の上下
昔の恐怖
昔の従属
「そのためなら、
損をしても構わぬ」
⑧ 桜の結論
桜は、深く息を吸った。
「なら――
私たちは」
「勝ってはいけない」
全員が一瞬、固まる。
「“正しい形”で在り続けるしかない」




