128話 敵にとって“攻めると損をする領地”の設計
――勝てないから攻めない、ではない
――攻める理由が消える
① 桜の結論は、あまりにも地味だった
桜は、地図を前に言った。
「……攻められない領地、じゃない」
皆が顔を上げる。
「攻めても、割に合わない領地です」
慈光尼が、ゆっくり頷く。
「恐怖ではなく、損得か」
② 戦国の「攻める理由」を分解する
桜は、指を折りながら整理する。
戦を仕掛ける理由は、実は単純。
土地が欲しい
人が欲しい
富(年貢・商い)が欲しい
威信・実績が欲しい
「じゃあ――」
桜は、静かに言う。
「それ全部、手に入らない構造にする」
③ 土地を“奪っても意味がない”場所にする
まず、土地。
「里見の強みは、土そのものじゃない」
灌漑の知識
作付けの工夫
保存・流通の仕組み
医療と衛生
「これ、人がいないと機能しない」
慈光尼が補足する。
「つまり、土地だけ奪っても
運営できぬ、と」
桜は頷く。
④ 人が“逃げる構造”を作る(ここが重要)
「次、人」
桜は少し言葉を選んだ。
「戦になったら、
里見の民は――逃げます」
場が、静まる。
「戦うために残らない。
生きるために逃げる」
医療網
食糧備蓄
受け入れ先の村
商人ネットワーク
百地が、低く笑った。
「奪った城に、人がいない。
年貢も取れぬ」
⑤ 富を“外に出しておく”
「富も同じです」
桜は帳簿を示す。
「金は、里見に“留めない”」
商人の手に分散
京・堺・南蛮へ循環
物資は契約で動く
「城を落としても、
金庫は空」
これは、略奪戦争の否定だった。
⑥ 威信を“壊せない形”にする
最後は、名。
「里見は――」
桜は少しだけ、間を置いた。
「壊すと、悪者になる領地になります」
医療を支える
飢饉時に米を出す
技術を広める
公家・商人・寺と繋がる
「攻めた瞬間、
敵は“敵”になる」
まな姫が、はっと息を飲む。
「……評判そのものが、盾」
⑦ 慈光尼の評価
慈光尼は、静かに言った。
「これは、防衛ではない」
「包囲だ」
敵を囲い、
選択肢を奪う。
⑧ 百地の視点
百地は、腕を組んだ。
「忍びがいらなくなる戦だな」
「だが――」
視線を桜に向ける。
「成功すれば、だが」
⑨ 桜の覚悟
桜は、はっきり言った。
「失敗したら、
一気に崩れます」
「だから、
一つずつ制度にします」
感情ではなく、構造。
奇跡ではなく、仕組み。




