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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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126/172

126話 抑止のために“見せる演出”をどう設計するか

――見せる力、隠す力――

① 抑止は「噂」から始まる

桜は言った。

「兵を増やすより先に、“話”を増やします」

まな姫が首を傾げる。

「話……ですか?」

百地が小さく笑った。

「噂だな」

桜は頷く。

「正確な情報は隠す」

「だが、想像させる余白だけを与える」

② 見せる演出の設計

桜が出したのは、三つの指針だった。

一、数は見せない

「兵数は一切公表しない」

「ただし、“常に動いている”ように見せる」

港に現れる兵は日替わり

街道の詰所も配置を定期的に変える

見る者はこう思う。

「今日は多い」

「昨日とは違う」

= 正確な数が掴めない

二、技術を“半分だけ”見せる

鉄砲も、大砲も、南蛮技術も。

「撃たない」

「だが、見える場所には置く」

港に据えられた見慣れぬ砲架

火薬の匂いが漂う作業場

撃たないからこそ、

「いつ使われるか分からない」

という恐怖が生まれる。

三、情報源を錯覚させる

百地が補足する。

「風魔が聞く“噂”は、伊賀が流す」

だが、それは嘘ばかりではない。

本当の話:港の拡張

嘘の話:内陸での新兵器実験

混ざった情報は、

取捨選択する側を疲弊させる。

③ 慈光尼の懸念

慈光尼は、静かに言った。

「演出は、刃と同じ」

「使いすぎれば、必ず切り返されます」

桜も分かっていた。

「だから、一度だけ“破れかける”ところまで行く」

全員が顔を上げる。

一度だけ、抑止が破れかける小さな事件

――誰も知らぬ“境界線”――

④ 小さな異変

ある夜。

里見の外れの港町で、

倉が一つ、荒らされた。

奪われたものは少ない。

火薬の袋が一つ

見慣れぬ金具

被害としては、軽い。

だが百地は言った。

「試されたな」

⑤ 風魔の誤算

風魔側は、こう判断した。

「噂ほどの備えはない」

「内部は、まだ整っていない」

つまり――

抑止を“演出だけ”と見た。

一歩、踏み込んだのだ。

⑥ 破れかけた瞬間

翌朝。

港の警戒が一段階だけ上がる。

兵が増えたわけではない。

武器が増えたわけでもない。

ただ――

港の責任者が交代

倉の配置が変わる

噂話が、ぴたりと止まる

これが、逆に不気味だった。

⑦ 桜の静かな対応

桜は言った。

「追わないでください」

若い家臣が反発する。

「今叩けば――!」

「叩けば、“演出”が“実戦”に変わります」

その一線だけは越えなかった。

⑧ 百地の報告

数日後。

百地が告げる。

「風魔は、引いた」

理由は単純だ。

「奪ったはずの情報が、何の役にも立たない」

つまり、

見せたものは偽物か半端

本命は別にあると悟った

⑨ 桜の胸中

夜。

桜は、倉を見つめていた。

(今のが、限界だった)

(もう一歩踏み込まれていたら――)

初めて、背に冷たい汗が流れる。

抑止は、常に綱渡り。

それを、誰よりも理解した瞬間だった。

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