124話 危機感を日々募らせる桜
——南蛮の知が、現実を突きつける——
港から吹く潮風は、どこか冷たかった。
里見の領内は、表向きは穏やかだ。
人は流れ込み、商いは活気づき、技術も芽吹き始めている。
だが――
桜の胸の奥に、ざらつく不安が消えない。
(これだけ動けば、必ず見られる)
(見られれば、欲しがられる)
技術も、人も、土地も。
戦は、始まる前から始まっている。
南蛮人との会談
桜が向き合ったのは、
南蛮船に同行してきた技術者兼商人。
装束も、言葉も違う。
だが「戦を知る者の目」をしていた。
桜は単刀直入に聞く。
「防ぐために、最も現実的な方法は何ですか」
感情を挟まない。
理想論もいらない。
南蛮人の答え①:城壁ではない
南蛮人は首を横に振った。
「高い壁は、安心を与える」
「だが、戦争では最初に壊される」
万里の長城のような話をすると、彼は苦笑する。
「壁は“境界”を示すだけ」
「商いを止め、情報を止め、敵を呼ぶ」
桜は、静かに頷いた。
(やっぱり、囲えばいいわけじゃない)
答え②:火力の“見せ方”
次に、彼は大砲の話をした。
「大砲は、撃つための武器ではない」
桜が眉を上げる。
「撃てると、示すための武器だ」
港に向けられた数門の大砲。
それだけで、船は距離を測り直す。
「港に入る前に、敵は計算する」
「この国を襲う価値があるかどうかを」
答え③:鉄砲の扱い方
鉄砲について、南蛮人は慎重だった。
「鉄砲は、誰でも使える」
「だからこそ、秩序が崩れる」
大量に持てば、内乱の火種になる。
持たなければ、外に弱くなる。
「数は少なく」
「だが、訓練された者だけに」
桜は、その言葉を強く心に刻む。
(武器は、力じゃない)
(統制そのものだ)
答え④:最も重要な防衛策
南蛮人は、最後にこう言った。
「最強の防衛は――」
少し間を置いて。
「攻める理由を与えないこと」
「商いがあり」
「情報が流れ」
「民が逃げ込む国は、壊すと損をする」
桜の内面
会談が終わったあと、桜は港を見下ろした。
船。
人。
積み下ろされる荷。
(里見は、もう“ただの一国”じゃない)
(なら、防ぎ方も変えないといけない)
剣を増やす前に、
理由を消す。
囲う前に、
価値を示す




