122話 周辺諸国の反応
——里見の“変化”が、静かに波紋を広げる——
里見領の変化は、派手な布告や軍事行動では始まらなかった。
だがそれゆえに、周辺諸国の目には不気味なほど静かな異変として映った。
まず気づいたのは、国境沿いの村々だった。
「里見へ行った者が、戻らぬ」
「いや、戻ってきても“帰らぬ”のだ」
逃散ではない。
略奪でもない。
里見に入った農民や職人が、戻る必要を感じていない。
・年貢が急に増えたわけではない
・兵に取られたわけでもない
・宗教が変わったわけでもない
それなのに、人が流れる。
小領主たちの動揺
中小の武家領主たちは、最初こそ高を括っていた。
「一時の噂だろう」
「里見は商いに傾きすぎている」
「武家の国のやり方ではない」
だが、現実は数字として現れ始める。
・年貢の集まりが悪い
・耕作放棄地が増える
・兵役を嫌がる者が増える
理由は単純だった。
里見の領民の“顔色”が違う。
働く意味を知り、
暮らしの先を語り、
子の代の話をする。
戦国の常識では、領民は「耐える存在」だった。
だが里見では、「生き延び、積み上げる存在」になりつつあった。
有力大名の沈黙
北条、上杉、武田――
名のある大名たちは、すぐに動かなかった。
代わりに、沈黙した。
これは警戒の沈黙だった。
・軍備の増強ではない
・同盟の破棄でもない
・宗教改革でもない
それでいて、国力が“底から”上がっている。
「武力で潰せば済む話ではない」
「潰せば、流民が他へ散る」
「むしろ、真似される」
戦を仕掛ければ勝てるかもしれない。
だが、勝っても“問題”は消えない。
商人と忍びの報告
商人たちは、率直だった。
「里見は、儲かる」
「約定が守られる」
「役人が話を聞く」
忍びの報告は、さらに厄介だった。
「不穏な動きはない」
「だが、民が国を信じ始めている」
「兵よりも制度が怖い」
百地の報告書には、こう添えられていた。
「これは反乱の芽ではない
“国家”の芽である」
ある領主の決断
そして、ついに起きる。
国境に近い、小さな領地の領主が、
領民を引き連れて里見へ向かう。
武装はない。
旗もない。
あるのは、土に汚れた手と、頭を下げる覚悟だけ。
「このままでは、領地が死にます」
「戦ではなく、暮らしで負けました」
この出来事は、周辺諸国に決定的なメッセージを送る。
——里見は、もう“一国”ではない
——時代の向きを変え始めている
桜の視点(締め)
桜は、この報告を聞いて静かに思う。
「始まったな……」
戦ではない。
革命でもない。
だが、戻れない変化。
制度を動かした責任は、
これからますます重くなる。
そして次に問われるのは――
「この国は、他国とどう向き合うのか」




