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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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105話 制度を動かす

そして、領は静かに変わり始める

里見人帳・運用初日

城下の朝は、いつもと変わらない。

商人は店を開き、農民は畑へ向かい、浜では漁師が舟を出す。

だが――

城の外れ、仮設の詰所だけは違った。

小さな机が三つ。

帳面が積まれ、硯と筆。

壁には簡素な札。

「人帳記し所」

知子、初めて“責任者”として座る

背筋を伸ばして座る知子の手は、わずかに震えていた。

だが、目は逸らさない。

最初に来たのは――

農夫の夫婦と、幼い子。

「名を……載せてもらえると聞いて」

声は恐る恐るだ。

最初の記帳

名。

年。

家。

生業。

知子は一つずつ、確認しながら書く。

「この帳は、

年貢を増やすためのものではありません」

「逃げぬためのものでも、

縛るためのものでもない」

「ここに生きている、という証です」

夫婦は顔を見合わせ、

深く、深く頭を下げた。

噂は、昼までに広がる

「名を書くだけでいいらしい」

「咎められぬ」

「逃げた者を探す帳じゃない」

午後には列ができていた。

想定外の変化①

“逃げ戻り”が起きる

名を書きに来た者の中に、

かつて他領へ流れた元・里見の者がいた。

「戻っても……いいのか」

知子は即答しなかった。

代わりに、まな姫の言葉をそのまま伝える。

「里見は、

戻る者を責めない」

その場にいた者たちが、

息を呑む。

想定外の変化②

治安が“静かに”改善する

夜盗が減る。

争いが起きても、

「人帳記し所へ行こう」と言葉が出る。

理由は単純だった。

名があると、

無茶ができなくなる

桜、遠くからそれを見る

桜は表には出ない。

だが、記し所の様子は逐一報告が上がる。

強制していないのに、

人が集まる

制度は、

恐怖では動かない

慈光尼の評価

「これは、

“支配”ではありません」

「“信用の積み立て”です」

百地の言葉

「忍びの里でも、

これに似たことはある」

「名を持つ者は、

裏切りにくい」

想定外の変化③

周辺領から“視線”が集まる

「里見は、人を囲い込んでいる」

「だが、鎖がない」

中小領主たちは困惑する。

どうやって、

人を縛っている?

答えは簡単だが、

彼らには真似できない。

まな姫、静かに言う

「これで……

逃げる理由が、減りました」

桜の脳内戦略会議(短く)

人は、

安全と尊厳があれば、

留まる

次は――

“この制度を、

悪用しようとする者”が出る

そこが、

本当の試金石

そして、領は変わる

急ではない。

派手でもない。

だが確実に――

人が逃げない

人が戻る

名を持つことが誇りになる

里見は、

**「住む理由がある領地」**になり始めていた。

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