103話 最初に“制度化”するもの
――桜が選んだ、たった一つの基盤
場所
里見城・同じ小座敷
日が少し傾き、障子越しの光がやわらかくなる。
議論は一度、途切れていた。
誰も軽々しく口を開けない。
桜、口火を切る
「……最初に制度にするものは、
全部じゃありません」
「むしろ、
一つだけです」
まな姫が視線を上げる。
「一つ?」
桜の答え
「人です」
一瞬、空気が止まる。
桜の説明 ――“人”を制度に落とすとは何か
「今の里見は、
人が集まりすぎています」
「でも、
誰が、何をして、
どこまで責任を持つか」
「それが、
曖昧なままです」
桜、はっきりと言い切る
「だから最初にやるのは――」
・人の登録
・役割の明文化
・引き継ぎの仕組み
「つまり、
人を守るための帳面です」
野乃が理解する
「……戸籍、ですね」
「医療の現場でも、
誰が診たか分からないのが一番怖い」
桜、首を振る
「ただの戸籍じゃ足りません」
「里見に必要なのは、
**“生き方の台帳”**です」
“生き方の台帳”の中身
桜は、指を折って示す。
名前と年齢
家族関係
居住地
得意なこと・学んだこと
今の役目
教えられる技術
「これがあれば、
人は“替えが利く”んじゃなく」
「繋げていける」
香織の視点
「技術が、人に閉じなくなる……」
「次の人に、
最初から渡せる」
知子も続く
「造船も同じですね」
「一人いなくなって、
全部止まるのが一番まずい」
まな姫、静かに問う
「でも桜」
「それは――
人を縛ることにもなる」
「反発も、出ます」
桜の覚悟
「はい」
「だから、
罰は作りません」
「あるのは、
選択だけです」
桜が示す“制度の顔”
「帳面に載る人には、
守りがある」
・医療の優先
・仕事の斡旋
・家族単位での保護
・逃げ場の確保
「載らない人は、
強制しない」
「でも、
守れない」
室内に、重い沈黙
それは支配ではない。
だが、責任は確実に発生する。
まな姫、決断する
「……分かりました」
「それを、
里見の制度として始めましょう」
「名は――」
少し考え、はっきり告げる。
「里見人帳」
姫としての最初の制度
「この帳面に載る者は、
里見が守る」
「だが同時に、
里見を支える」
桜の内心
ああ……
戻れないところまで来たな
でも、これで――
人は流れじゃなく、
“柱”になる
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