102話 会談の始まりは、まな姫から
「……皆」
「今日の父上の言葉、
聞いて終わりにはしません」
「だからこそ、
本当の問題を、ここで出してほしい」
柔らかい声だが、逃げはない。
桜、現実を切り出す
桜は一度、息を整える。
「……意識は揃いました」
「守る、受け入れる、退かない。
そこは、皆同じです」
「でも――」
視線を仲間たちに向ける。
「できることと
支え続けられることは、別です」
問題① 人は増え続ける
「人が来るのは、良いことです」
「でも、
医も、食も、住も、
無限じゃない」
野乃が小さく頷く。
「診療所も、
今は回っています」
「でも、流行り病が来たら、
一気に崩れます」
問題② 技術は“人”に依存している
香織が静かに口を開く。
「ガラスも、
南蛮の技も」
「今は“知っている人”がいるから動いています」
「でも、
教えきれなければ、
途切れる」
知子が続く。
「船も同じです」
「一隻作れても、
続かなければ意味がない」
問題③ 里見は“狙われる側”になった
幸恵の声が、少し硬い。
「人も、物も、技術もある」
「それはつまり、
奪えば得だと、
思われるってこと」
沈黙。
誰も否定しない。
まな姫、黙って聞く
まな姫は、急かさない。
ただ、一つ一つ、受け取っていく。
桜の核心
「だから、まな姫」
「これからは、
全部を良くするは無理です」
「何を守り、
何を遅らせ、
何を切るか」
「それを決めないと、
私たちは潰れます」
まな姫の答えは“即断しない”
「……分かっています」
「そして、
それを一人で決めさせないために、
この場があります」
まな姫は、桜を見る。
「桜」
「あなたは、
先を見すぎる」
「だからこそ、
皆がついてきた」
姫としての宣言(小さく、だが確かに)
「私は、
全てを完璧にはできません」
「でも、
皆が潰れる判断だけは、
しません」
「迷ったら、
必ずここに戻る」
仲間たちの反応
野乃が、少しだけ笑う。
「……それなら、
まだ続けられます」
香織も、肩の力を抜く。
「“終わりを決めない”って、
大事ですね」
会談は“結論”では終わらない
桜は、心の中で理解する。
ああ……
これは、解決の場じゃない
継続するための場だ




