101話 里見義堯の決意
――家臣一同に告げられる、領主の言葉
場所
里見城・大広間
上座に里見義堯。
その一段下、まな姫。
左右に、重臣・中級家臣・若手家臣まで、余すことなく居並ぶ。
誰もが分かっている。
今日の評定は、いつもの政務ではない。
空気が、張りつめている。
義堯、立つ
義堯はゆっくりと立ち上がり、
家臣一人ひとりを見渡す。
「……皆、顔を上げよ」
頭を垂れていた家臣たちが、
一斉に視線を上げる。
領主の言葉は、まず“責任”から始まる
「近頃、
里見の領内に人が流れ込んでおる」
「医を求める者、
働きを求める者、
身を寄せる先を失った者」
「それを許したのは、
他ならぬ、この私だ」
家臣の間に、ざわめき。
「ゆえに、
その先に起こるすべての事は、
里見義堯の責である」
逃げ道を塞ぐ宣言
「勘違いするな」
「私は、
善政を語るつもりはない」
「里見は、
優しい国になるのではない」
「覚悟を求める国になる」
一瞬、空気が冷える。
領主の重さ
「人を受け入れるとは、
守るものを増やすことだ」
「守るものが増えれば、
失うものも増える」
「戦を避けても、
恨みは避けられぬ」
「それでも私は、
人を追い返さぬと決めた」
家臣への問い
義堯の視線が、
若い家臣から老臣までを射抜く。
「この決断に、
不満のある者はいるか」
沈黙。
「怖れを抱く者は?」
沈黙。
「ならば、
覚えておけ」
領主の言葉は“命令”ではなく“誓い”
「この国で流れる血は、
私の判断の結果だ」
「お前たちの命を、
軽んじるつもりはない」
「だが、
守ると決めた以上、
退かぬ」
「退路は、
すでに断った」
まな姫、初めて“当主の隣”に立つ
義堯は、まな姫の方へ手を差し出す。
「この者は、
私の娘であると同時に、
次の里見だ」
「私が倒れた時、
決断を下すのは、
この者になる」
家臣たちが、息を呑む。
最後の一言
「だから問う」
「この国に、
命を預ける覚悟のある者だけ、
ここに残れ」
「それ以外は、
今この場で去ってよい」
重い沈黙。
誰一人、動かない。
家臣一同
やがて、
最前列の老臣が、深く頭を下げる。
「里見に、
命を預けます」
それに続き、
一人、また一人と膝をつく。
余韻
義堯は、静かに座り直す。
「……では」
「この国を、生き延びさせる」
大広間に、
重く、しかし確かな決意が満ちた。




