閑話 領主としての責任と重圧
「父上」
「里見は、
これから“人を守る領地”になります」
「それは、
戦を呼びます」
「それでも、
引き受ける覚悟は、
おありでしょうか」
家臣が息を呑む。
義堯は、しばらく沈黙した後、
低く、しかし明瞭に語る。
義堯――領主の責任
「覚悟など、
とうに済ませておる」
「里見の名を継いだ時に、
すでに、
逃げ場は捨てた」
「領主とはな、
勝つために戦う者ではない」
「守ると決めたものを、
見捨てぬために戦う者だ」
義堯は、机に置かれた地図を見る。
「人が増えれば、
守るものも増える」
「守るものが増えれば、
判断は遅くなる」
「それでも、
切る時は切らねばならぬ」
重圧の正体
「重いのは、
戦ではない」
「戦わぬと決める時だ」
「戦えば、
理由は敵に押し付けられる」
「だが、
退けば、
すべてが己の判断になる」
義堯は、まな姫をまっすぐ見る。
「それを、
お前は分かって、
ここに来たか?」
まな姫の答え
「はい」
「だからこそ、
父上に、
お願いがあります」
「里見が表に立つと決めた時、
私も、
逃げません」
「決断の理由を、
民に、家臣に、
一緒に語らせてください」
義堯の覚悟
義堯は、深く息を吸い、吐く。
「……よい」
「それが、
次の里見だ」
「だが、
覚えておけ」
「最後に矢を受けるのは、
当主だ」
「お前ではない」
「それが、
父であり、
領主である者の役目だ」
会談の終わり
義堯は立ち上がる。
「準備をせよ」
「人を受け入れる」
「その代わり、
里見は、
二度と“中途半端な領地”にはならぬ」
まな姫は、深く頭を下げる。




