閑話 一同がまな姫に話をする
場所は、堅すぎないが私的すぎない空間。
障子越しの春の光、庭先の音。
「教える」のではなく、“聞いてもらう”空気が大切です。
話し手の役割分担
桜:全体像と迷い
百地:現実と危険
慈光尼:意味と覚悟
まな姫:受け取る側
桜が語る
桜はまず、結論を言わない。
「里見の領内には、人が増えています
逃げてきた者、職を求めた者、理由は様々ですが」
「今は、まだ平穏です
でも……平穏というのは、
何もしなくても続くものではない」
まな姫は黙って聞く。
桜は少し言葉を選ぶ。
「守りを固めすぎれば、人の流れが止まる
けれど、備えなければ、
一度の戦で全てを失うかもしれない」
「私は……囲わない道を選びたい」
ここで桜は、自信ではなく不安を見せる。
「正しいかは、わかりません」
百地が補足する
百地は短く、刺す。
「戦は、刀で始まるとは限りませぬ」
「噂、妬み、恐れ
それらが先に刃となる」
「里見が“良い国”と知られるほど、
それを壊したい者も現れます」
まな姫が思わず口を開く。
「……それでも、人を受け入れるのですか?」
百地は即答しない。
「だからこそ、
受け入れ方を選ぶのです」
慈光尼が意味を与える
慈光尼は、まな姫の目を見る。
「そなたは、“一所懸命”という言葉を知っておるな」
「土地は命
先祖代々守り、子へ渡すもの」
「だがな、まな姫
それは“守れた者”の言葉でもある」
少し間を置く。
「守れなかった者は、
土地と共に、誇りも失う」
「それでも生きねばならぬ」
頭を下げに来る領主の話
ここで桜が核心を出す。
「近いうちに……
領民を連れ、頭を下げに来る武家が現れるでしょう」
「刀を置き、
武士の誇りより、民の命を選んだ者です」
まな姫の表情が揺れる。
「それは……
弱い、のですか?」
まな姫の問い(この回の核心)
全員が黙る。
桜ではなく、慈光尼が答える。
「強いから、頭を下げられるのだ」
百地が続ける。
「民を見捨てぬ覚悟は、
刀より重い」
桜の決意を、まな姫に託す
桜は、まな姫に視線を向ける。
「もし、その者を受け入れれば
里見は、ただの領国ではなくなります」
「“逃げ場”を持つ国になる」
「それでも……
それを選ぶ価値は、あると思いますか?」
まな姫の答え(未来を象徴する一言)
まな姫は少し考え、静かに言う。
「守れなかったことを、
一生悔いるより」
「守ろうとした人を、
もう一度信じる国の方が、
私は好きです」
この一言で、
戦略が“人の物語”に変わる。




