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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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100話 幸恵の挑戦 2

――「試さなければ、始まらない」

幸恵は、紙束を抱えて桜の前に座った。

そこには数字が並んでいる。

身長。

体重。

病の回数。

疲れやすさ。

「仮説は立ちました」

そう前置きして、幸恵は続ける。

「でも……分かっているだけでは意味がありません」

桜は黙って聞いている。

「里見でも、食の改善だけでどこまで変わるのか

 それを、試してみたいんです」

一瞬、場が静まった。

食は、生活そのものだ。

変えるということは、反発を生む。

幸恵は、それを承知で言葉を選ぶ。

「戦のためじゃありません。

 南蛮人みたいになる必要もない」

紙の端を指で押さえながら、続けた。

「でも……

 病で倒れにくくなる。

 子どもが途中で命を落とさない。

 それだけでも、里見は強くなります」

桜は、ふっと息を吐く。

「で、どうやる?」

幸恵の目が、はっきりと光った。

「小さく、です」

まずは――

港の仕事人。

船大工。

鍛冶場の若者。

体を使うが、人数は限られる。

・一日一度、肉か魚の内臓

・豆と油を必ず添える

・塩分を減らし、出汁を使う

・食後に温い乳もどき(豆乳)

期間は三月。

変化を見る。

疲れの抜け。

怪我の治り。

顔色。

「数字で残します」

桜は、紙をめくりながら言った。

「……失敗したら?」

幸恵は、迷わなかった。

「原因を書き出します。

 やり直します」

その即答に、桜は笑った。

「いいね。

 “商いの盾”になる前に、

 “人の盾”を作るってわけだ」

許可は、あっさり出た。

だが現場は、簡単ではなかった。

「腹が重い」

「こんな脂っこいもの、慣れん」

「金がかかるだろう」

幸恵は、毎日回った。

作り方を教え、

量を減らし、

味を調えた。

「一気に変えません。

 少しずつでいいんです」

一月。

港の男が言った。

「……最近、息が切れねぇ」

二月。

船大工が、怪我をしても仕事に戻るのが早くなった。

三月。

数字が、嘘をつかなかった。

身長は変わらない。

だが、体重と筋の締まりが違う。

「里見でも、ここまでになります」

幸恵は、報告書を差し出す。

「食を変えれば、

 人は、変われます」

桜は、しばらく紙を見てから言った。

「これは、武器だね」

幸恵は首を振る。

「いいえ」

少しだけ、微笑んで。

「基礎です」

その基礎が、

里見を、静かに変え始めていた。

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