第11話「芽吹く台帳、広がる畑、家の役割」
1. 収量の変化、最初の“揺れ”
春の兆し。畑の土は昨日より柔らかく、水路の音も落ち着いている。
宗吉が走ってきた。
宗吉「桜様! 二ノ区画の小麦の育ちが明らかに違います!」
桜「…どれくらい?」
宗吉「例年より**半分の刻(約1か月)早く青さが濃い。収量も増えるかと」
桜「青さが濃いのは“土の体調が上向いてる証拠”。収量は必ず増える。増えなきゃ作戦が泣く」
(脳内) A「国力ゲージ上昇の初期変動確認」
B「ついに数字の手前まで来たな」
C「“石高システム” という言葉はまだ封印」
D「封印しても思想は解放中」
■ 2. 棚札の模倣、村へ伝播
農民たちが自作の棚札を持ってくる。
農民・伊助「桜様、我が家でも棚に札をつけました!」
桜「読ませて」
【畑 5】
・寝床: 藁 1束
・食事: 糠 半袋
・世話: 伊助
・次の耕し: 4日後
桜「よくできてる。棚は“土の記憶”。札は“土との約束”。それを守る人が“土の味方”」
伊助「土の…味方?」
桜「うん。畑で戦ってるんじゃない。畑と一緒に勝っていくの」
(脳内) C「この時代で農民がPDCA回し始めてるぞ」
B「だから現代語禁止だってば!」
■ 3. “人の力” を読む台帳=戸籍の萌芽
桜は棚の三段目の奥から新しい帳面を取り出した。
見出しは家臣には読めないが、桜の中では完成している。
【耕し世帯根帳】
家臣・綱吉「…根帳?」
桜「そう。人の根っこ=家の力を記す帳面。
この畑は誰が耕してるか、家に何人の働き手がいて、誰が棚札を更新できて、水路を任せられるか——全部書く」
綱吉「なんのために?」
桜「畑を強くするための“人の配置図”。土地だけ整えても人が疲れたら意味がないから」
父・椿が静かに言った。
「…つまり、働ける者を見える形にして、負担を分け、収穫を増やすのだな」
桜「そう! さすが母さん!」
(脳内) A「親の姓=正木。制度導入の理解力高い。味方強すぎ」
B「敵なしじゃん」
D「敵は過労よ?」
■ 4. 休ませる区画と休ませる人の設計
桜は宗吉と共に土を握り、さらに別の区画を指した。
桜「ここは“休ませる区画”。そしてここを耕す家の人員は今季は3人から2人に減らす」
宗吉「減らして大丈夫ですか?」
桜「大丈夫。休ませる土は育つ土。休ませる人は潰れない人。
潰れなければまた耕せる。耕せればまた収穫できる。収穫できれば棚札に勝ちを書ける」
宗吉「勝ち…?」
桜「成功って意味!」
■ 5. 正木家の団らん、日常は戦略の休憩所
その夜。正木家の座敷。囲炉裏の前。
弟「姉ちゃん、また成功って言ってたね」
桜「言っちゃった。でもちゃんと言い換えた」
祖母・志乃「翻訳の姫じゃな」
桜「翻訳じゃなくて戦略! いや、翻訳も戦略!」
父「で、明日は?」
桜「畑視察と台帳の更新稽古」
綱吉「稽古好きだな…」
桜「好きなんじゃない。制度は繰り返しで国になるから」
母「桜、倒れないでね?」
桜「倒れない。棚があるから。台帳があるから。家族がいるから。——あと私が強いから!」
(脳内) B「それは大胆」
C「それはフラグ」
A「でも倒れさせないのが制度設計だ」
D「また会議してる場合じゃないわよ?」
桜は笑った。




