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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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91話 利を分けるという設計

――南蛮船が“残る理由”

港は、まだ完成していない。

だが――

人は、もう動き始めていた。

桜の提案「技術者を“渡す”」

南蛮の技術者たちが里見に滞在して三日目。

桜は、マテオの前に一枚の書付を置いた。

「こちらからも、人を出します」

マテオが目を細める。

「……弟子、ということですか?」

「はい。ただし――」

桜は続けた。

「学ぶだけではありません。

“南蛮船の役に立つ者”として、です」

派遣される里見の人材

桜が挙げたのは三種。

鍛冶・木工の若者

 船具、滑車、釘、補修材を学ばせる

 → 航海中の簡易修理が可能になる

算用に長けた者

 積荷・歩合・交換比率の整理

 → 南蛮側の商談が速くなる

医療・衛生を学んだ者

 壊血病・傷の化膿・水の管理

 → 船員の生存率が上がる

マテオは、ゆっくり息を吐いた。

「……それは、船の“寿命”を延ばす」

南蛮側の利益

桜は、最後にこう言った。

「里見で育てた者は、

“南蛮で役に立つ人材”になります」

・寄港地で即戦力

・言葉と慣習を理解している

・交易を“早く・安全に”回せる

「つまり――」

慈光尼が補足する。

「里見に寄るほど、

南蛮船は強くなる」

マテオの決断

「……良いでしょう」

マテオは笑った。

「船に“敵を乗せる”のではない。

“仲間を育てる”のですね」

南蛮船にとって、

これは単なる取引ではない。

人材投資だった。

義堯の懸念と桜の答え

義堯は静かに問う。

「技術が流れすぎるのではないか?」

桜は迷わず答えた。

「はい。流れます」

一瞬、場が凍る。

「でも――

“戻ってくる流れ”の方が、大きい」

・情報

・最新技術

・世界の動き

「閉じれば、遅れます。

開けば、選べます」

梨良の役目

この場で、梨良が名を呼ばれた。

「梨良。

南蛮語の習得を本格化させます」

彼女は驚き、そして深く頭を下げた。

「はい……必ず」

彼女は“通訳”では終わらない。

交易の空気を読む者として育てられる。

南蛮船が思うこと

その夜、南蛮船の甲板で。

「この地は、港が完成する前から――

もう、港になっている」

そう語る船員がいた。

見えない契約

金でも、物でもない。

人を育て合う契約。

それは書に残らず、

しかし確かに結ばれた。

桜は海を見つめる。

(これで、南蛮は――

里見を切れない)

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