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第一章 人形の町  作者: 黒蝶 羅々
第一話 開かずの部屋と謎の少女
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 南部軍に辿り着いたレオンとマイケル、シェラン、サエは、スマイクの所へ行くことにした。もちろん、将軍に怒られる可能性のあるレオンとマイケルは付き添いである。




 将軍の執務室へ向かっている途中。


「あらっ?」


 セルビーが、丁度一階の資料室から出て来たところだった。何かの調べ物をしていたのか、手には大量の書物やファイルを抱えている。

 自分達が鍵を盗んだ事を知っているであろう人物に、レオンとマイケルは思わず不自然に体を硬直させた。

「あ、セルビー、さ、ん・・・・・ど、ど~も~」

「え~っと、も、もしかして将軍から・・・・何か話とかは・・?」

 二人の異常な行動に不思議そうな顔をするシェランとサエを横目に見て、セルビーはにっこりと微笑んだ。

「ええ。確か、レオンハルトさんは執務室まで来るように、と。それからマイケル少尉には・・・・」

 そう言って書物をいったん床に置き、軍服のポケットを漁りだした。そして、お探しの物を見つけたのか満足そうに頷いた。

 手に持ったそれは、白いメモだ。


 二つに折り畳んだメモを広げ、そこに書いてある事を呼んだ。

「ええっと、『マイケル少尉。貴様は休みが終ったら覚悟しておけ。お前のために大量の仕事を用意しておいたからな。・・・・・追伸。今度指令党内に煙草一箱でも持ってきたら、貴様を下界行きにしてやるからな』・・・・・・・・・・・・以上です」

 “下界行き”と言う言葉を聞き、顔面蒼白になって動けなくなるマイケルである。そんなマイケルの胸ポケットに使用済みになったメモを突っ込むと、セルビーはレオンに向き合った。

「レオンハルトさん。早く将軍の所へ向かった方が良いと思います。そして・・・・・・」

 シェランのほうを向いて、


「あなた(・・・・)も」


 優しく微笑んだ。何か裏がありそうな微笑に小首をかしげるシェランだが、気にせずレオンと共に将軍の執務室へ向かった。











「失礼します」


 恐る恐る言ったので震えてしまった声を無視し、スマイクは冷静だった。机に頬ずえをつき、一枚の書類をレオン達に見せた。


「国家魔術師リリーダル・レオンハルト、同じくクラウス・シェラン。諸君ら二人に、アルフェン町での魔薬事件の解決を命じる」
















 部屋に入った途端に仕事を頼まれた二人は、困惑するしかなかった。とりあえずソファーに座り、スマイクと向き合っている。テーブルの上には先程の書類が二人に見えやすいように置かれている。

「アルフェン町での魔薬事件・・・・って、最近ニュースなんかで載っている?」

「そうだ。実はこの事件は南部の管轄内でな・・・・おまけに、ややこしいと来ている。今までに三人派遣したのだが全員白旗を挙げてしまった。Sランクの者が何とか魔薬対策の陣を完成させた位しか解決できていない」

 そうやってすらすらと話を進めてしまうスマイクとレオンの二人だが、話に着いていけない者がいた。


 シェランはサエと共に小首を傾げ、早速質問した。

「あの・・・・・私、全然話が分からないんですけど。まず、Sランクとかって何ですか?」

「ああ、そう言えばクラウス殿はまだ一度も国家魔術師としての話をしておりませんでしたね?」

 慣れない相手ということなので、急に口調を和らげるスマイクである。そんな彼とは違い、逆にレオンは顔をしかめた。

「大体、何でシェランは今まで仕事やらなかったんだ?サボったらすぐに資格を剥奪されるだろうし・・・」

『貴様のようなアホとは違うのじゃ』

「休暇、と言う事になっていたんだ。かなり長めにとってあったが、ランクがなかなか高かったのでこちらとしては受け入れるしかなかった。・・・・そうだ、ランクについてだったかな?」

「はい」

 レオンの疑問も解決(?)し、やっと話が元に戻った。次はシェランの疑問の番だ。


「国家魔術師等の国家資格には、基本的にランクがついていてね。国家魔術師の場合、下からBランク、Aランク、Sランク、SSランクと四つある。特にSとSSは人数が少なく、国としては重宝している」

「ちなみに俺はSSな」

 説明の間に迷惑にも割り込んでくるレオンである。

「そして、クラウス殿はSランク。つまり上の方だ。仕事をこなせば、その分国から金がもらえる。もらえる金額もそいつのランク次第ということだ。・・・・・ちょっと訊きたいが、クラウス殿は所持金はいくらかな?」

「所持金・・・・お金は、まだ無いんです」

 さすがに所持金ゼロと聞き、固まる男性二人。


 しかし、しばらくするとレオンが話題を元に戻した。

「で、アルフェン町の事件って、一体どんな?ニュースでは詳しく出て無いけど」

「話したとおり魔薬事件なのだが、その魔薬が問題でね。まだ流出先も犯人もつかめていない。ただ、その薬の効果だけは分かっている。ある一定の量が人間の体内に入った場合、その人間の感情が消える。しかし、脳は働いているようで、体は他人に言われたとうりに自由自在に動く。しばらくして薬が体内からある程度抜ければ意識は戻る。ただ一つの問題は・・・・・」

 話のトーンを少し下げた。何か少し言い難そうな感じである。

 そんなスマイクに、大人しく話を聞いていたサエが助言した。

『感情がなく、意識も無い。つまり、その体の異常が外部には全く分からず、そのまま水分不足や便を出さないでいたことが原因で起こる大腸癌等で死に至る・・・・と言うことか』

 しゃべる猫。と言うよりも理解力の良さにスマイクは感心した。


 その後、特に理由も言わず、二人で仕事をしてこいと言うスマイクに促され、アルフェン町行きの切符を貰った二人だった。

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