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二つの影

そこは、レオン達が乗っていた夜行列車の屋根の上。


      「嫌だ」


 少しみすぼらしい古びたマントに身を包み、汚れた屋根の上に座り込んでいる二人組の一人がそう言った。

「何で?せっかく主様が命じてくれたんだし、楽しもうよ」

「何を楽しむんだよ!(コウ)!こんなことして!」

 バンっと怒って屋根を叩くが、二人組のもう一人は寝転がったまま快活に笑った。少年・・・・否、もっと幼い男の子の様な声。時間は深夜を回っているので、その声に気付く者はない。ちなみに、この二人は無賃乗車だ。

「怒ったって無駄だよ。そんなこと、分かりきってるだろう?オレらが主様の手を握った時、契約は成立した。おかげで私達はこうして生きてるし、万事順調じゃん?」

「でも・・・・でもっ!やっぱり僕は・・・・」


「今更無理だよ。歯車は回り始めてる。もう止められやしないよ。後は、ボクらがピリオドを打つだけだ」


 それは、分かり切っていたことだった。それでも、納得は出来ない。出来るはずがない。

そう思い、ぎゅっと拳を握りしめて彼は相棒に訴える。どれだけ言葉を紡いでも、鋼には届かない。それが分かっていても、それしか出来ることは無かった。

「もう、やめようよ。僕は、誰にも傷ついて欲しくない。今まで何人も殺し、傷つけてきた僕が言うべきことじゃ無いかもしれないけど・・・・」

「じゃ、言わなきゃいいでしょ?私はね、まだ満足してないよ。ボクらを傷つけたあいつらに、まだ何もしてないんだもん。あいつらが苦しみ、のたうち回って狂い死ぬまで満足は出来ないかなぁ?」

 風圧でマントから金属を思わせる銀色の長髪が飛び出す。寝転がりながら頭を支えていた腕を使い、器用に髪をマントの中に戻しながらそう言う鋼。その狂いかけた笑顔を見ながら、胸を痛めるしかない自分を彼は呪った。

 悔しそうな顔をする彼のマントから、髪がこぼれる。柔らかな緑色をしたそれを放置しておく彼を見かねて、ごろ寝から胡坐に座り直して鋼は彼の髪をマントの中にしまった。

「お前が嫌なら、俺が代わりにやるよ。(ショク)

「大丈夫。鋼に全部を任せるわけにはいかないし」

 先程までのふざけた態度とはうって変わって、労わるように鋼は笑う。

「もう寝よう。明日から忙しくなるから。町に着いたら何か美味いもんでも食ってさ、私が奢ってやるよ!」

「何で一人称をごちゃごちゃにしてるの?」

 諦めたように植は溜息をつき、鋼はまた屋根の上に寝転ぶ。そんな彼の隣に植も寝転んで、目を閉じた。






 そして、こんな二人の凸凹コンビは数時間後にアルフェン町に到着するのである。

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