第10節:そして彼らはまたやってきた
アビゲイル
もふもふ王国・二宮66点
もふもふ王国・神埼100点
田口エンタメ野郎 100点
西瓜亭羊 78点
河井一美 75点
「お前らを待っていた!」
審査員席で目を赤くして涙を流す男が一人。
誰でもない田口エンタメ野郎だ。
今年の敗者復活戦は笑み籤で最後の組となった。
興味深い敗者復活戦の順位をここに記そう。
1位 アビゲイル
2位 瑞祥
3位 ロンサム・ハンサム
4位 燦燦七拍子
5位 じりーぷあー
最後の決戦投票が前年大会準優勝の瑞祥、そしてアビゲイルの2組。
投票は会場にご来場の漫才王になろうGP審査員資格を持って抽選に応募した約300人のオーディエンス。会場は同じテレビ太陽本社ちかくにある建物内の巨大ホール。去年のような寒空の下でやるなんてことはなかった。
視聴者はヨウチューブで日中におこなわれた大会の模様を観ることができた。300人のオーディエンスのなかに入るという事で特別コメンテーターに漫才王GP歴代王者の中村兄弟・二郎そしてコンフレーク・駒村。MCにはクリスタルエデンの看板タレントの倉木理亜奈もいた。
会場の熱気はとても素晴らしいものだったらしい。
雰囲気的にはクリスタルエデン所属の新星女子コンビ燦燦七拍子がいけそうだ! というSNS投稿もあったりして話題に。しかして最後にステージの中央に立ったのは瑞祥とアビゲイルの4人。
やがてアビゲイルのコンビ名が呼ばれると2人は大急ぎで会場を後にする。
会場の外では野田栄一郎の運転するキャデラックが待ち構える。
やがて会場について準備に入る。このときからタグエンの眼は潤んでいたとも。彼らの漫才が始まった時にそれはもう万雷の拍手と喝采が。
結果はバニラアイスに1点差で負ける5位。
それでも審査員2名から100点を獲るという前代未聞の快挙を成し遂げた。
「ん~好き嫌いは分かれますよね。俺はやっぱりギャグと下ネタは好まないので高い点数はつけられませんでした。タグエンさん、アビゲイルファンの皆さん、ごめんなさい!」
両手を合わせて頭を下げる二宮氏。これぐらいやらないといけないだろうってぐらいに彼もアビゲイルの点数をつけるのには多少の躊躇いもあったと思われる。
そう、このアビゲイルというコンビは好き嫌いが明瞭に分かれるのだ。
でも、何か一度目にして耳にすることで忘れられなくなる彼らの漫才。
それはまごうことなき彼らの実力。
彼らは誰しもが忘れることのない記録と記憶を今大会で残した。
それは後藤が点数の発表を受けて即座に吐いたこの名フレーズ。
「急いで妻に負けに来た……」
また決勝に来て欲しいとは言わない。
私はもう来年の景色がみえている。その景色のなかにこいつらがいる。
こいつら、絶対に来年も決勝の舞台にあがってくるだろう。
私だけでない筈だ。何度でも言う。これは願望でなくて確信であると――




