スキなヒト
「一番大切なのは佳世さんがオレを好きなのか、って事じゃない?」
一瞬時が止まった。
なんて伝えるのがいいのか、と迷った。
(余計な事は言わずに、ストレートに伝えた方がいい。桧山くんは私の不安を一掃してくれた)
「うん、好きだよ、桧山くんの事」
胸の鼓動が早くなる。
薄暗いのが幸いして、恥ずかしさが隠せてちょうどいい。
「ありがと、佳世さん」
桧山が手をひきながら、またゆっくり歩き出す。
「オレが佳世さんを好きになったのはね、満面の笑顔がきっかけだよ」
そう言って、佳世を見た。
佳世は恥ずかしそうにして微笑む。
「気になって佳世さんを目で追うようになったら、誰に対しても平等なところとか、誰がやってもいい仕事をさりげなくやってるところとか、どんどん気付いてやっぱり佳世さんが好きだな、って確信したんだ。
だんだんオレだけの特権が欲しくなって、そのうち他のヤツに取られそうで、焦りだして、でもこのままだと絶対に佳世さんオレの気持ちには気付いてくれないって思って、告白したんだ」
ちょうどいい風がいいタイミングで通った。
「それこそ二次会で〝彼氏欲しいなぁ〜〟とかボヤいてたから、今がチャンスだ!と思ってさ」
桧山が思い出したのか、クスッと笑った。
「そんなに前から見ていてくれたのに、罰ゲームとか言って本気にしなくてごめんね」
佳世が下を向く。
「ホントだよ。でもさ、オレのスキに佳世さんのスキはまだ追いついてないから」
「…どうして?」
目の前の障害物を避けるために、桧山は佳世を背中側に寄せ、避けさせた。
「佳世さんはオレの告白がきっかけで意識してくれるようになったんだよ。オレはその前からいろんな佳世さんを見てる」
行き止まりにきて、また小さい橋を渡る。もう駐車場が見えてきた。
「これからオレのカッコいい所もカッコ悪い所も、強さも弱さも全部見せるから」
街灯の下で、桧山の顔がハッキリと見えた。
2人で立ち止まる。
「だから、ちゃんとオレの事見て欲しい」
佳世がうなずく。
「分かった」
「オレがスキなのは佳世さんでそこに年の差は関係ないから」
2人で顔を見合わせて、笑う。
急に照れくさくなって2人で恥ずかしそうにしてしまう。
「佳世さん、お腹空いた。このままご飯食べに行こう」
「うん」
何を食べに行こうか…と相談しながら土手を下る。
桧山から、佳世は佳世らしくいればいいのだと、改めて教えてもらった気がして、心が軽くなるのを感じていた。
結局年の差なんて、好きな気持ち以上に大切な事ではないのだ。
ありがとうございました。
2025/2/4




