吾輩が魔王である
俺は富田花郎。高校2年生にして、存在感皆無の冴えない奴だ。
勉強はからっきし駄目。体育はもっと駄目。唯一の取り柄と言えば絵を描くことくらいで、pixivではちょっとした人気者だったりする。でも、それすら学校では誰も知らない。美術部に入るような度胸なんてないからな。
友達はいない。0人である。かと言って、いじめられているわけでもない。いじめを受けるのも一つの才能だよな。それだけ人の注目を集めれているということだから。
天は二物を与えず、というからには俺は絵以外の才能はないのだろう。
「はぁ...今日も疲れたな」
今日は数学の授業中に1回と、掃除時間中に2回も口を開いてしまった。早めに寝てしまったほうが良いだろう。
いつものように一人で下校して、マンションの玄関を開けた瞬間、違和感を覚えた。靴が散らばっている。親は海外出張で今月も不在のはずなのに。
「泥棒...!?」
咄嗟にバッグを握りしめ、恐る恐るリビングを覗く。家具は倒れ、本は床に散乱。でも、タンスの中の通帳や印鑑は無事だった。
「なんだこれ...」
心臓が早鐘を打つ中、最後に自分の部屋のドアを開けた。そこで目にしたのは——
「んぅ...…」
俺のベッドで眠る少女の姿だった。
真っ赤な長い髪。白い肌。そして、頭から生えた2本の黒いツノ。年齢は12歳といったところか。コスプレイヤー...?いや、あのツノは明らかに本物だ。
「や、やばい...こんなの警察呼んだほうが...」
面倒ごとには巻き込まれたくない。そう思って部屋を出ようとした瞬間——
「むにゃ...…ん?」
少女が目を覚ました。燃えるような赤い瞳が俺を捉える。
「おや? 貴様が此の館の主か?」
玉を転がすような声で少女は言った。まるで中二病患者のような話し方だ。
「え、えっと.…..」
「我が名を名乗ろう」
少女はベッドから優雅に立ち上がり、胸の前で腕を組んだ。ベッドに立つんじゃねぇ。
「吾輩は魔王リアスである!」
...…え?
「人間界における我が新たな居城として、貴様の住まいを選んだのだ!」
いや、待て。なんでこの展開は? そう叫びたくなるが、うまく舌が回らない。
「あ、あの...…」
「なんだ?従者」
「従者って...…」
「当然であろう?我が居城に住まう者は、即ち我が従者なのだ!」
魔王と名乗る少女・リアスは得意げに宣言した。困惑する俺をよそに、彼女は部屋を見回して首を傾げる。
「しかし、この居城はいささか手狭ではないか?」
「そりゃそうだよ!だってここ、ただの学生の一人暮らしの部屋だし!」
「む?汝、我に逆らうつもりか?」
リアスが眉をひそめる。その瞬間、部屋の空気が重くなった。ヤバい、本物だこいつ。
「い、いえ!そんなつもりは...!」
「うむ、良い心がけだ」
にっこりと微笑むリアス。その表情は、確かに可愛らしかった。




