レイレイ誕生 その17
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ルルテは、ガリンがレイレイを屋敷に連れてくる間の半日を使って、数々の家具を物置に運び込んでいた。
もともと物置にあったものは、数が多くなかったこともあり、厨房横の食料庫の脇に移動されていた。
時間がなかったこともあって、壁はそのままの石肌そのままであったが、王室ご用達の家具屋から取り寄せたありとあらゆるものが、所狭しと並べられていた。
ガリンは、部屋に入った瞬間に呼吸をするものを忘れたように驚いたが、脇で自慢気に微笑んでいるルルテに視線を向けて、
「よくぞ、ここまで」
と素直に賛辞を述べた。
ガリンの言葉を、文字通りの賛辞として受けとったルルテは、自分が殊更選ぶのに時間を費やした、寝台のことをとうとうと自慢を始めたのだった。
ガリンは、眉を寄せないように苦労をしながらも、ルルテの話を聞きながら、片方の手でレイレイをベットに寝かせるようにストレバウスに指示をだした。
自慢話をとうとうと語っていたルルテであったが、いざレイレイが部屋に入ってくると、もう興味はそちらに移っていた。
ガリンが、
「レイレイは、苦しい思いをしてやっと、今落ち着いた状態になっています。
数日感は眠ったような状態が続くと思います。
じきに、体の筋組織が通常の状態に戻れば、徐々に話すこともできるようなるでしょう。
今しばらくはそっとしておいてあげましょう。」
ルルテに、そう説明をしてレイレイに突撃アタックしようとしているのを制すると、ルルテも
「そうだな。我もこの者の保護者であるのだから、気を付けねばならぬな。」
そう言って、一度だけレイレイの顔を覗きこんで、すぐさまジレとレイレイの部屋の壁紙の話を再度語り始めた。
しばらく話続けたルルテは、最後にもう一度レイレイの顔を眺めてから、満足気な表情を浮かべて自室に戻っていった。
ルルテの退室を見届けたストレバウスも軽く会釈をして、部屋から退出したため部屋にはガリンとセルだけが残された。
ガリンは、セルに向き直ると、
「セル殿。これから、レイレイとも長い付き合いになると思います。
教育係としても、セルに頼らなければならないことも多いでしょう。」
そう言ってセルを見つめ、
「よろしくお願いします。」
と、頭を下げた。
セルは、普段ほどの余裕を感じさせはしなかったが、ルルテがレイレイを完全に受け入れているのを見たことにより多少の安堵感は感じたのかもしれない。
少しだけ笑顔を取り戻して
「承知しました。」
そう言いながら、安堵のため息をついて軽く頭をさげた。
「しばらくは、ここは私が見ています。部屋の鍵の件もありますしね。
セルも慣れない事で疲れたでしょう。
少し休んでください。」
セルは、緊張がほぐれたのか、幾分ほっとした表情を浮かべ、そのまま再び頭をさげて部屋から退出した。
1人なったガリンは、椅子をベットの脇によせると、レイレイの横に腰に下ろし、ようやく大きなため息をついたのだった。
ガリンは、もともと他人を思いやったり、気を遣った声を掛けたりといったコミュニケーションそのものが得意ではない。
そのガリンが、ルルテだけではなく、エバやレン、ストレバウスにセルと、多くの人に気を遣いながらのレイレイの引越である。普段周囲を気にしないガリンにとっては大変な1日であったのだ。
ガリンは、ため息と共に心の中で
『しばらくは気がやすまることはなさそうですね・・・』
と独り言ち、再びレイレイに視線を移した。
今度は困ったような顔で、
『パパか・・・。困った言葉を最初に覚えたものだな。』
と再び心の中で呟いて、ため息をついた。
部屋の外からは、今度はジレと、運悪く捕まったストレバウスに対して、ルルテのレイレイの部屋の装飾に関する議論がいつまでも聞こえていた。
体調を壊してしまい、投稿に間が開きました。
またよろしくお願いします。




