レイレイ誕生 その15 最終準備
1人研究室に残ったガリンは、漠然としか考えていなかった、レイレイの今後の扱いについて考えていた。
確かに今の状態のレイレイをどこかに預けるわけにもいかない。完全な人ではない以上、まともな状態であったからといって、自由に行動を許せるものなのか、という問題そのものもある。どちらにせよ今の状態のレイレイは確実に監視が必要ではあるのだ。
その点では屋敷に引き取るというルルテの考え方は間違ってはいなかった。
屋敷には2人の育児に長けていると思われる女手もあり、ガリンが教えることの出来ない性別特有の様々な事を教えてもらうことも可能だろう。
ただ、自分自身は、普段の生活の中ではルルテの護士として任を全うするだけでも、かなりの時間をそれに使うことになるだろう。それに加えてレイレイのことまで気が回るだろうか。エバや研究室の助手達の力を借りるという方法もあるのだ。
とはいえ、不測の事態に紋様術をもって対応をすることを考えれば、自分以上にレイレイの保護者として適切な者はいないのも事実。
もちろん、デメリットもある。竜と人の合いの子であるレイレイが、予想もしないような本能的な行動をする可能性だ。
ルルテを守るという観点でいえば、屋敷にレイレイを住まわせることは危険要素を増やすことにもなりかねないのだ。
だからといって、例え研究室であったとしても、直ぐに駆け付けることの出来ない場所にどレイレイを住まわせ、個別にレイレイに時間を使うのにも限界がある。
それに、1日に何度もルルテにレイレイとの面会を求められるのも目に見えている。これは現実問題としてはかなり厄介でもある。
レイレイを屋敷に側に置くメリットが、デメリットを上回るよのであれば、やはり手元に置いておきたい。
いくら考えても同道巡りになるだけであった。
暫くは屋敷で側に置き、今後どうするのが最適なの判断は、少なくともレイレイがある程度の記憶を取り戻してからでも遅くはないのではないか。その時改めて考えれば良いのだ。
散々悩み、思いを巡らした結果、今回の結論はそんな当たり障りのないものへと落ち着きを見せたのだった。
『結論を先伸ばししているだけかもしれないが・・・』
ガリンは、素直にその心のささやきを認めた。
側に置く、そして当面はセルに教育係を頼んで様子をみる。
今は、とにかくそれが一番のように思えたのだ。
『では、屋敷内のどこで生活を?』
次々と自分自身への質問が心に浮かぶ。
そう、たしかに済む場所、部屋は問題だ。
自分の部屋で一緒に生活をするのが最も目が届き易いだろう。しかし、それはちょっと無理というものだ。
ガリンは、ルルテがまた『幼女趣味か?』と問いただしてくる、そんな顔を思い浮かべながら、今度は口にだして
「論外だな。」
と。そして、次は、
『では、どこに?』
だ。
『ルルテと一緒はどうだろうか?』
そんな危険なことは毛頭できない。
『セルやジレと一緒はどうだろうか?』
それも同じく危険だ。
1人で住んでもらうのが現実的だ。日中の世話は、自分もセル達も、万が一の時はストレバウスもいる。
で、空いている部屋といえば、物置代わりの小会議室しかない。
あそこに一通りの家具を揃えて、簡単に出入り出来ないような鍵をか掛けるのがいいだろう。
しばらくは中からは開けられないように、元力石で封をするとしよう。
ガリンは、とりとめもなく浮かんでくる様々な問題を自問自答しながら、何となくの方向性と方針を組み立てていくのだった。
あらかたの当面の問題が片付き方針が定まるとガリンは、目の前にある明日、レイレイを培養層から出す、その作業の準備を始めたのだった。
培養槽の中を、外気温、外気圧に合わせたり、酸素濃度の調整である。
日が変わる頃には、明日に向けての調整も終わり、ようやくガリンは帰路についた。
まあ、ガリンが元力石の文様に指を這わせて調整をしている間、それを見つめる2つの瞳があったことにガリンは気付いていないのではあったが・・・。
翌日のレイレイを水槽からだす作業は、ガリンとレン、エバ、そしてセルで行なわれた。
これは、レイレイを培養槽から出した後、そのまま連れて歩くわけにもいかないからだ。服を着せたり、屋敷までつれていくのにも、人手と女手が必要だったのだ。
ルルテは、直前まで、研究室に一緒に行くと言い張っていたが、ガリンの、
「ルルテはレイレイと歳も近いことですし、屋敷に残ってレイレイの新しい住まいの家具、調度品などの手配をお願いします。これは、ルルテにしか出来ない仕事ですよ。」
という説得に最終的には折れたのだった。
実際、レイレイを培養槽からだす手順はそんなに複雑なものではなく、時間も掛からないものであった。
それは、レイレイの身体が成体として確認された時点で、培養槽内の水を呼吸をすることを前提としたの酸素濃度に調節をしていたし、昨晩のガリンの調整によって温度や気圧なども外界のものに調整されていたからだ。
実際作業といっても、水を抜き、溶液内では肺に充満していた液体からの呼吸をしていたものを、純粋に大気内での肺呼吸へ移行するのを見守るのが作業の中心であった。
この時に、かなりの苦痛を伴うはずなので、何もしなくても意識は目覚めると考えていた。
一旦意識が目覚めれば、現時点ではほとんど筋力はないはずなので、セルにお願いをして服を着せたり、屋敷までつれて帰るための、車椅子にレイレイを載せることとなる。
服を着せれば背中の羽もどきは見えないし、体の竜鱗も見えない。あとは角だけだが、小さな角なので目立つほどではない。爪や犬歯も注視をされなければ特に目立つというほどもでもなかった。
事前の準備があらかた終わり、ガリンがエバに視線で合図を送ると、エバも軽く肯いて返すのだった。
前後の文脈からの文章の多少の変更。語尾の修正。短文化などなど。2026.1.5




