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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第9章 レイレイ誕生
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レイレイ誕生 その9


急に話を丸投げされたレンは渋い顔で、


「わしに話を振るんじゃない。この手法は王家の門外不出の定着法に酷似しておるのだ。軽軽しく話すことはできないじゃぞ?わかっておるのか?」


と弟子へ批難混みで投げ返した。


「わたしは、独自でこの手法を作り上げています。先生のご意見はどうですか?」


まあ、結果はこの通り・・・。

レンはため息をつき、返答をした。。


「まあ、お主の予想のとおりじゃろうな。」


ガリンは、感情が伺えない、そのままの表情で


「ということです。」


とエバに告げた。


「しかし、なんだ?レン。お前の息子は本当に可愛くないな?目上のものを敬ったりする心構えはないのか?」


エバも渋い顔をする。


「あれば、苦労せんわい。」


「・・・。」


エバと、レンが同時にため息をつき、遠い目をした。場に一瞬の静寂が訪れた。


「先生・・・。」


ガリンが、幾分情けない声で静寂を破る。


「まあ、とにかく、あとはどうすりゃいいんだ?ガリン先生。」


エバの嫌みともとれる軽口に幾分眉をしかめたが、ガリンは、再び淡々とた口調で今後のことを話す。


「まず、レイレイの意識が完全に体を支配するのを待ちましょう。

数日で大丈夫だと思います。

もし、成功していれば、培養槽の中で意識が覚醒するはずです。」


「覚醒してから、培養槽から出すということだな?」


『なるほど、なるほど。』といったようにエバが頷く。


「はい。臓器が完全にできていないかもしれませんので、覚醒後、エバ殿に確認をしてもらってから、培養槽からだしましょう。」


「最後は俺に押し付けるのかよ。」


エバとレンが苦笑いを浮かべる。


「お願いします。」


「・・・。」


エバが、沈黙で返すと、


「お願いします。」


ガリンは念押しのように軽く頭を下げた。


「ふん。よかろう・・・。」


どちらにしても最終の確認は必要である。

エバが、折れた。

雰囲気を察したレンが口をはさむ。


「いよいよ佳境じゃな?」


「はい。」


師の問い掛けに、今度は柔らかい表情で頷いた。


「お嬢ちゃんには?」


「先生その質問がすでに2回目ですが?」


ガリンの表情は見えない。


「重要なことじゃろう?」


「覚醒後に話をします。」


先程と同じ返答をするガリン。

レンとしては、『もうここまでくれば、ルルテに伝えても良いのではないか』という、レンなりの優しさを含めた示唆であったのだが、まあガリンのルルテに対する気持ちも理解はできた。

レンは、『ニヤリ』として、


「慎重じゃな。まあ、ええわい。自分の娘のことじゃ、がんばるんじゃぞ。パパ。」


と、こと更に『パパ』を強調して言った。


「なっ・・?」


今度はガリンが苦い表情を浮かべる。

エバが、面白そうに尋ね返す。


「パパ?何の話だ?」


レンが、エバに説明をした。

説明を聞き終えた、エバは、『これほど面白いことがあるか』という表情を隠そうともせず、


「ガリンパパ?」


そう言って大声で笑った。

そして、そのままレイレイの培養槽の前にいくと、


「パパがお前を待ってるぞ!」


そう言いながら、培養槽の表面を人差し指と中指で2回ほど軽く小突くと、やっと意趣返しが出来たとばかりに、踊るような足取りでその場を後にした。


ガリンは、声にならない抗議の眼差しを、エバ、そしてレンに向けたが、元力石の定着でかなりの体力、意思力を消耗していたこともあり、そのまま何も言わずにうなだれるように、椅子に腰をおろした。


レンは、そんなガリンと、培養槽内のレイレイを交互にみつめ、やはり軽い足取りで笑顔を浮かべながらゆっくりと部屋からでていったのだった。


----*----*-----


意思体の定着している元力石をレイレイに埋め込んでから、もう何日かが経過していたが、レイレイが覚醒する兆候は現れていなかった。


人型に限らず、キメラを覚醒の段階までもっていくことは、キメラを始めとする魔法合成生物の第一人者であるエバにとっても稀なことであった。


先述したように、エバが通常行なっている培養は、成体まで培養することが目的ではなく、突然変異体の遺伝子情報を得ることにその目的があるためである。

元力石の助けを借りることにより、効率的な人為的進化を促しているとはいえ、最終的に目的と形態・特性を有したキメラにたどり着くのにはかなりの時間と根気を必要としていた。


王国が法で禁ずる以前は、人型のクローンや、場合によっては人そのもの胎児を利用してキメラの実験が行なわれていたのは、この時間的な問題を解決できる上に、実験体の特性や形容が決定づけられるまえに直接異種生物の遺伝子を組み込む事により、より確実なキメラを造りだすことを可能にしていたからである。

この技術は当然戦争にも使われていた。

名もない様々なキメラが世にはなたれたことと、際限のない実験は、人の生命倫理そのものを危うくしていた。

晶角士として、文様術そのものが王国の法制度に組み込まれ、そして王国でそれらを禁じてから、ようやく人は生命に対する倫理を思い出したのであった。


現王が、簡単にレイレイの培養に許可を出さなかったのは、歴史を鑑みれば当然のことではあるのだ。


いつものように培養槽の前で確認作業をしているガリンに、


「まだおねんねしたままか?」


エバが声を掛けた。

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