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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第9章 レイレイ誕生
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レイレイ誕生 その4

----*----*-----


ガリンは、エバの手助けも借りながら、その日のうちに、研究室の中で最も奥にある、エバ専用の個室にレイレイの培養槽の設置を終えた。


これは、他の者の目に触れない配慮はもちろんの事であったが、エバ自身が、培養中に危険な兆候を発見した場合の対処をすばやく行なうためでもあった。


培養槽は、大人1人がゆっくりと入ることが出来そうな円柱形の水槽で、中は子宮内の羊水とほぼおなじ成分の液体で満たされていた。


ガリンは、竜の遺伝子が作用し人型に変化する前に比較的大きな躯体が成長する可能性を考え、もっと大きな培養槽を要求をしていたが、そもそもそのような大きな成長の可能性が見えた時点で、培養そのものを中止するべきであるという、エバ、レン両名の見解には逆らえず、この大きさで甘んじていた。


それでも、不眠不休で彫りあげた融合設計の文様や、人遺伝子を中心とするための竜遺伝子の成長抑制の文様等、それらを研究室に持ちこむたびに、何度もエバをうならせてもいた。


中には激しい言い争いの結果採用された元力石を、培養槽に組み込んだこともあり、最終的に満足する培養槽が完成したときには、培養槽の大きさのことなどすっかり頭からは吹き飛んでいたのではあったが。


レンもエバも、そんなガリンの満足気な顔を見るたびに、自分の知的欲求を満足させるためではなく、あくまで王女のためであり、始祖の残した多くの技術を解き明かすという、この培養のそもそもの目的をガリンに思い出させなくてはならなかったのは言うまでもなかった。


通常は、3,4個の元力石でキメラの培養は可能になるのであるが、今回ガリンがレイレイの体の培養に対して用意した文様は、実に20にも及んでいた。

それらの元力石の中には、エバ自身想像すらしたことのないようなものもあり、口では相変わらずの悪態をついていたものの、ガリンの能力には舌を巻いていたのだった。


培養槽が組みあがってから、エバが培養槽を入念に精査し終えたのは、既に翌日の昼過ぎであった。


2人は軽く仮眠をとり、すぐに実験を再開したのを見たレンに言わせれば、2人とも『研究馬鹿』である。


再開後、培養槽にはエバの混合した培養液が注入され、いよいよ培養する細胞片が設置された。


設置された細胞片は、既にガリンの遺伝子を竜族の細胞に組み込んだものを小さなガラス瓶で、ある程度培養したものである。


この遺伝子の組み込みの時点で確実になったのは、竜族の細胞の元の主が生物学的には雌であり遺伝子的に優位である種であることから、培養されるレイレイも雌、つまり女性として培養されるということだった。


もともと一般的なキメラの合成は、擬似交配を繰り返すことによって生まれる、突然変異遺伝子を抽出するといった作業の繰り返しになる。これは人工的な進化の促進ともいうことができる。

培養槽内であれば、誕生した瞬間に突然変異を見つけることが可能なため、自然界での進化の何万倍での速度で進化を促すことができるのだ。


まったく違う生命体でも遺伝子の形状にはあまり違いがないために、人工的な培養槽内での異種交配は、元力石の力を借りればそれほど難しいものではない。ただし、成長した卵巣と精子を必要とするため、生命倫理が問われる手法であり、そのことを踏まえた上で、人をその対象として使うことを厳しく禁じられていた。

これはクローニングやホムンクルスの培養も同様であった。


今回ガリンが提案した細胞単位での合成は、細胞同士での遺伝子融合であるために、生命倫理への抵触が少ないという判断ではあった。


『詭弁である』というのが、エバ自身の判断ではあったが、今回は、ガリンの言う、


『まったく通常のキメラの培養と変わらない。』


という屁理屈を採用していた。


これは、細胞単位の遺伝子融合であれば、判断極端な話、融合の元となるものは一歩の髪の毛と髪の毛で事がたりるため、王国法、生命倫理に抵触しないというのである。


エバの言うように明らかに詭弁ではあるのだが、それでもレンの説得という助けを借りて王の許可をとることもできたし、万が一の言い訳と、一般論としては抜け道を得た詭弁となったのだ。


その上で、エバが最初に今回の融合で提案した技術は、まず有機体内の遺伝子情報を電気的に取りだす。それをもう1つの母体となる細胞内のDNAの体の形容をつかさどるいくつかの遺伝子を人為的に破損させ、その破損部分に高周波をもちいて、さきほど取りだした遺伝子を注入する。その後、注入した遺伝子情報から、母体の破損した部分を補完させるという、科学文明が栄えていた先史の技術をそのまま応用したものだった。


しかしながら、竜族の形容の遺伝子情報の中に一緒に人型への変化遺伝子が組み込まれている可能性があると判断をしたガリンは、すこし違う手法を提案していた。


ガリンが提案したものは、竜に人型を固定させる目的があったために、人型の形容を維持する遺伝子を人為的に破損させてしまっては元もこもないとして、遺伝疾患などの特定の余分と思われる遺伝子をだけを破損させ、そこに人遺伝子の形容に関連した部分だけを注入し、元々竜の遺伝子内の人型への変化遺伝子の補完させる。


その後、残った遺伝子を注入して、人遺伝子と母体の竜遺伝子を喧嘩させて、生命体として強く、必要な部分を淘汰させ、竜と人の遺伝子内での自然融合を図ろうというものだった。


エバは、この手法に関してはかなり時間をかけて、ガリンに異を唱えていた。

うんちくが多い話になりましたね(笑)

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