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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第9章 レイレイ誕生
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レイレイ誕生 その2

----*----*-----


レンは、王から例の幽霊騒ぎの際の意識体の主である『レイレイ』の体の培養に関して、ようやく王の承認にこぎつけたことをガリンに伝えるべく、学院向かって歩を進めていた。

その頃ガリンは、学院の奥に位置する、晶角士にして、魔法合成生命体、いわゆるキメラと呼ばれる、人獣、あるいは獣人、魔物の研究における第一人者である、エバンサーラの研究室を訪れていた。

と、いうより、今日だけではなく、ここのところ、ほぼ毎日といっていいほど、エバの元を訪れていたのだ。

最初のうちは、ルルテも研究室そのものへの興味とレイレイの体の誕生という大事件に立ちあうことを熱望しており、毎日のようにガリンと共に研究室を訪れていたのだが、ガリンがエバの研究室を訪れて何日かが過ぎると、徐々に足が遠くなり、10日も経った頃には、


「研究が進んだら声をかけるのだぞ。」


そう言って、研究室に顔を出さなくなってしまった。


ガリンは、万が一の場合の研究の中断のことを考えると、そもそもルルテがこの研究室に足を運ぶことにあまり賛成をしていたわけでは無かったので、ルルテのその問いかけには、珍しく笑顔で、


「もちろんですよ。ルルテ。一番に声をお掛けします。」


そう請けあって見せた。


ルルテも、こういう時に滅多に笑顔を見せないガリンの笑顔に、多少の胡散臭さを感じたものの、自分が意地でもことの経過をすべて見守ると宣言をしていた手前、今回の心変わりはそもそもあまり触れたくない話題でもあった。また、研究室での培養は思ったより時間がかかりそうで、ただ見守るには退屈すぎたという2つの理由から、ルルテも、愛想笑いを浮かべて、研究室に赴くのを止めたのだった。


ガリンの笑顔もルルテの愛想笑いも、ぶっちゃけマイナス方向とも言えるものであったが、この時はピッタリとはまったので、お互いに良しとしたのだ。


一方のガリンは、一向に飽きる様子もなく、毎日同じ時間に研究室に顔をだしていた。

逆に、毎日毎日ガリンに押しかけられているエバは、ガリンの執拗なまでの質問と向学心にうんざりとしていた。

しかし、これもまた思わぬところに恩恵を生み出していた。

普段エバに従事している学生や他の研究員は、口汚くうるさいエバが、ガリンの質問への返答に時間の大半を奪われていたため、のびのびとした毎日を送ることができていたのだ。


「いいかげんにしろ、おまえ!俺になにか恨みでもあるのか?その事に関しては昨日じっくり教えただろうに・・。」


エバの怒声が研究室に響き渡る。


「エバ殿、昨日お見せした文様とは違う文様を提案しているのです。媒体の培養の安定化には、昨日お話した、温度、湿度の環境指数に加えて、圧力などの重力的な要素を組み込んだ方が・・・。」


それに対してガリンの声は、至って平静で、静かで、ゆっくりで、更にはうんちくに溢れていた。

それが余計にエバの感情を逆撫でするのだ。


「あー。しつこいな。いいか、確かに重力は必要だ。そもそも竜族は高地で生活していると言われているし、空も飛ぶ。当然、我々人間よりも高圧力がかかった状態で生活をしていだろうさ。」


「では・・。」


「ではじゃない!いいか、よーく考えろ。お前が培養するのは竜なのか?それとも人間なのか?人間なら、そんな高圧力に順応させて培養してどうするんだ。ええ?」


学生時代には、延々とこのやり取りに付き合わされていたのはレンであったのだ。

立場は変わっても、良い意味でも悪い意味でもガリンは変わらない。

エバは、ガリンが研究室に通い始めた頃、真っ先にレンに、『なんとかしろっ!』と詰めよったのであったが、レンは、


『導くのも我々の仕事じゃからな。まあ頑張ってくれ。』


と、繰り返し生暖かい笑顔を向けるだけだった。

まあ、エバもガリンの質問へは、1つ1つ丁寧に返答はしている。

外見と口調に依らず、真面目で優しいのだ。


問答は続く。


「しかし、エバ殿。細胞の半分が、竜族であるのであれば、安定化には、重力は必要な要因になるのではと・・・。」


「しつこいな。じゃあ聞くが、深海に生息する水生生物と、陸生生物でキメラをつくるときに、水生生物の生息域に合わせた水圧で培養槽をつくるのか?

生まれてきた、キメラは、地上の空気を吸った瞬間に、外部からの圧力不足で、ボンッ!だ!」


「・・・。」


「それは極端な話でしょう。竜族は高地とはいっても、生活圏はほぼ同じではありませんか?」


「あああああああ。もういい。好きにしろ。いいか、気圧は、通常の1.2倍までだ。いいな?それ以上は、どうなっても保証できんぞ。」


「わかりました。」


2人の会話が一段落するのを見計らっていたように、声が割り込む。


「話は済んだかの?」


ガリンとエバが声の主の方角に振りかえる。


「先生。」

「レンか・・。」


「どうしたのじゃ。2人とも疲れ果てた顔をしておるぞ。」


「こいつのせいだ!」

「そんなことはありません。」


エバはガリンを指差し、ガリンは一瞬眉を寄せたが、すぐに涼しげにそう答えた。


「それより先生、何かありましたか?」

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