新年 その6
エバの口調の語尾を多少修正。改行の修正。2025.12.13
ガリンのいきなりの挨拶に、
「ふんっ。おい、そこの若造。いきなりそれが俺への挨拶なのか?いい度胸だぁーな。」
巨体を揺らしながら不快そうに鼻を鳴らした。
「すまん。エバ。こやつが、ガリエタローングじゃ。」
レンがガリンの頭を抑え、エバに軽く頭を下げた。
「ふん。知っているぞ。知っているとも。無礼なやつだな、おい。」
そう言いながらエバは、椅子から飛び上がったかと思うと、ガリンにいっきに近づき顔を覗き込む。
ガリンは、眉をよせると、一歩さがり、呪を唱える。
「ほぉ。こいつ、結界をはったぞ。わしが臭いのか?えぇ?」
エバは、そう言うと、更に体を大きくゆすって、体の埃を払う。
「2人ともいいかげんにせんか。用があってきておるのじゃ。ガリンも無礼を詫びるのじゃ。」
「しかし、先生・・・。」
ガリンは、不快感を隠さず抗議の視線を向ける。
「しかしではない。おぬしは物を乞いにここに着ておるのを忘れたのか。」
「申し訳ありません。あまりの風体にも、そして臭いにも驚いたものですから。」
しかし、レンの言うことももっともである。
ガリンは、エバに向かって軽く頭を下げながら、おおよそ謝罪とは思えない口調で、自身の無礼な態度の説明をした。
「レン、こいつ、変わっているな。それで詫びているのか?いいや詫びてないな。まあ、俺は正直なやつは嫌いじゃないがな。」
「はあ。」
エバの非難とも肯定とも取れる奇妙な言い回しに、ガリンも、生返事で返した。
「で、わざわざ、こんなところまで来たんだ。何を聞きたいんだ。何を知りたいんだ。興味が無いこと以外は答えてやるぞ。」
やはり独特の言い回しではあるが、レンが弟子に、『早く用件を言わんか』という視線で急かす辺り、エバのこの様子はいつもの通りなのであろう。ある意味、この状態で少なくとも話を聞いてもらえるということだ。
レンに促され、ガリンも自身が行なおうとしている有機体の培養の件を話始めるのだった。
ガリンの話が進むほどに、エバの顔に笑みが浮かぶ。
「なるほど。レン、こいつ馬鹿だな。いやとてつもなく常識が無いな。」
エバの酷評ともとれる発言に、ガリンが眉間にいっそう深い皺をつくる。
「おい、ガリエタローング、俺はおまえを誉めているんだぞ。うん、誉めている。」
「・・・。」
ガリンは『何を言っているんだ』という顔でレンに助けを求めた。
レンは肩を竦めて曖昧に頷いた。
そんな2人の様子を一切関係ないとばかりに、エバは勝手に話を続ける。
「細胞でのキメラは、人との合成も禁じられていない。うーん、そうだよなぁ坊主。まあ、出来ればだがな。」
「・・・はい。」
若造、馬鹿ときて、今度は坊主に呼称が変わる。
ガリンも呼称の変化を聞き返したい気持ちを抑えて、エバに返答する。
「んでもって、竜族に人の遺伝子を融合することで、人型に固定!!ときたな?」
「はい・・・。」
自身の相談を確認されているのか、肯定されているのかはっきりしないが、ここも頷くしかない。
返事を聞いたエバは、その場でクルリと回って手を広げた。
「くぅう。発想がいいね。滅多にお目に掛かれないど阿呆理論だ。嫌いじゃないなぁ。まあ保証はまったく無いけどなぁ。」
「はい・・・。」
持ち上げて落とされた。
そして、エバは、ガリンの眉間の皺を指差して、
「結論、そりゃだめだ。」
否定した。ここまで来ると、何が良くて、何に反対されているのかハッキリしない。
ただ、ガリンの提案は否定されたことは間違いない。
「・・・。しかし、先ほど誉めていると。それに、今回の・・・」
ガリンも簡単には引き下がれず、反論しようと口を開く。
エバは、今度はレンの方を向いて、
「誉めたよ。俺より馬鹿だからな。そんな奴は滅多にいない。レン。こいつ、俺にくれ。助手にしてやるぞ。」
そう言った。レンは、大きくため息をついて、
「ふざけておる場合か。」
と、エバにハッキリと文句を言う。
そのレンの声にもうんざりとした様子がはっきりと伺えた。
「ふん。弟子が、弟子なら師匠も師匠だ。気が短いわ。まあ、無理だ。帰った。帰った。」
エバは、レンが弟子を渡す様子がないのを確認すると、もうがレンとガリンには興味を失ったのか、虫でも追い払うかのように手で2人を払い、先ほどの椅子に戻っていった。
ガリンは、まったく意味がわからないといった様子で、
「エンバサーラ殿・・・。」
と、エバの名前を口にした。
エバは、苛立ちのせいか、普通の口調で、
「まだ何かあるのか?」
と、言いながらガリンをギロリと睨めつけた。
頑固、固執?という意味ではガリンも負けてはいない。
ガリンもここが正念場と感じてか、エバの顔を正面から見据える。
エバも、先程よりは、幾分真剣みを帯びた表情で見返す。
2人の間で、まるで時がとまったかのように時間が流れる。
その静寂をやぶるかのように、エバがため息をもらしながら、
「おい。レン。こいつ、いつもこうなのか?」
と、レンに苦笑いを浮かべて尋ねた。
「概ねそうじゃ。」
レンも苦笑いで返す。
「そうかそうか。いつもそうか。なにがなんでもやるってことだな。」
「・・・。」
エバが、嘲笑とも取れる表情を浮かべた。
そのエバの表情が、嘲りか、呆れただけか、ガリンには判別が出来なかったが、無言で返答した。ガリンの無言の返答を
受けて、エバが再び口を開く。
「じゃあな、ガリエタローング。いくつか質問をする。心して答えろよ。」
そう言ったエバの顔には、嘲笑も苦笑も嘲笑も・・・、何もなかった。




