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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第8章 新年
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新年 その3


レンが話題として尋ねたのは、


「それより、キメラなどの方法は検討はしてみたのかの?」


という、人の因子を介さないものであった。


「はい。こちらも、人間とのキメラが不可能な以上、あの意識体に見合う、高度な知的生命体は見当たらないという結論にいたっております。」


ガリンも、法に触れない方法は当然、あらゆる方向性で検討していたため返答は速い。


「まあ、人間をつかわずに、人間としての知的水準と、その運動機能を与えようとしているのじゃからな・・・。難しいか。」


「はい先生。考え得る生命体で、人間と同じ知的水準を持つものといえば、竜族ぐらいしか・・・。」


「竜族か・・・。」


さすがにレンもガリンの『竜族』という言葉に口ごもる。


「そっ・・・。」

「・・・。」


2人の会話が止まる。

しばらく会話がないまま時は流れたが、ガリンがその静寂を破った。


「先生、実は1つだけ私に考えがあるのですが・・・。」


ガリン顔には、恐る恐るといった表情ではあったが、覚悟とも取れるものも浮かんでいた。

そもそも、何でも気にせず直球で言葉を発するガリンが口ごもりながら、声を発したのだ。

レンもその雰囲気を感じてか、幾分声を硬くして、


「なんじゃ?」


とだけ尋ねた。


「遺伝子操作はどうでしょうか?」

「遺伝子操作?」


レンが思わず聞き返す。


「はい。」

「そんなことが可能なのか?」


ガリンは淀みなく即答したが、レンは信じられないといったように額に手をやり、再び尋ねた。


「いえ。当然のことながら試したことはございません。しかし、キメラの技術を応用して、細胞単位での合成を行なえば、純粋に遺伝子配列そのものだけの融合が可能ではないかと考えております。」


確かに技術的には難しくとも可能なのだろう。しかし、それでは難易度が上がっただけで、今回の問題の根本的な解決にはなり得ない。

しかし、ガリンがそんな基本的なことを見逃して、『遺伝子操作』などといった話を口にするとは思えない。故にレンは一層困惑した。


「ふむ。ガリンよ。しかし、細胞単位であろうと、なかろうと対象の有機体に問題、必要な身体的な能力を持っていなければ、意味がないのではないか?」


レンの最もな質問に、


「たしかにそうです。ですから、提供する遺伝子を人間のものをつかえばと・・・。」


ガリンは、頷き、そして話の中核を告げた。


「・・・。」


一気に話がきな臭くなり、レンは無言でガリンに続きを促した。


「先生、現在、禁じられているのは、胎児を利用したホムンクルスの製造や、成体として完成している人間と他の生物とのキメラの製造、この2点で間違いありませんよね?」


ガリンが慎重に、言葉を選んで師に確認する。


「そうじゃが・・。」い


レンの顔はますます無表情になる。

ガリンは、師の無言を、話を続けて良いという意として受け取り、説明を続ける。


「私は、細胞レベルでの遺伝子操作を施し、その細胞を用いたクローニングを行なうなら、我々の条件を満たす器を造ることができるのではと考えたのです。」


「しかしじゃな、人細胞をつかった、クローニングも禁止されていおるのじゃぞ?」


レンもため息混じりではあるが、ガリンの方法論の穴を付く。確かに胎児利用も融合もしてないが、人のクローニングも法に抵触するのだ。


「ですから、キメラ、つまり他の生物と融合させた細胞を培養して器を造ればと・・・。」


ガリンが、若干弱々しく告げる。

確かに、キメラであれば人ではない。

胎児の利用がなく、人との融合でもなく、人のクローンでもない。そもそも動物を使った品種改良は日々行われているし、優位個体を産み出した場合は、そのクローンを作って運用もしているのだ。動物やキメラであれば、クローニングも法律の範囲内であろう。しかし・・・。


「それは、詭弁じゃ。人の遺伝子を組み込んでいれば、それは人ではないか。」


レンの言うことも最もである。


「いえ。先生、他の生物の遺伝子を持っている以上、それは人ではございません。」


「・・・。しかし、そもそもなんの生物との遺伝子融合を行なうのじゃ?動物と掛け合わせても、お主のいう知的生物になるとはいえないではないか・・・。」


レンは更に沸いてきた疑問を口にする。


「実は、それで悩んでおりました。人の遺伝子を組み込んでいても、培養された結果が人型でなければ意味がありません。」


ガリンは『悩んでいた』と、過去形で話をしている。ガリンはある程度の結論を持って話をしているのだ。レンは人型という部分に焦点をあてて、さらに絞りこんで話を進める。


「人型の生命体は、現在は禁じられたキメラとして存在をしている亜人を除けばいないのではないか?いくら人の遺伝子を組み込んでも、猫が人型に培養されるとは思えん。」


「ええ。確かに先生のおっしゃるとおりです。ですが、先ほど、私の発言の中で、答えはお伝えしているはずです。」


「なんのことじゃ。」


レンの視線が宙を舞う。

ガリンがニヤリとして告げる。


「先ほど、私は、


『考え得る生命体で、人間と同じ知的水準を持つものといえば、竜族ぐらいしか・・・。』


と・・・。」


レンが立ち上がり、机を手においてガリンに叫ぶように詰問した。


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