新年 その1
▼登場人物
晶角士(男 24歳) ガリエタローング・ガリン・エンジジ
王女(女 12歳) ルルシャメルテーゼ・ルルテ・マレーン・ソノゥ
宮廷晶角士(男 111歳) イクスレンザ・レン・エンジシ
晶角士(男 89歳) エンバサーラ・エバ・エンジシ
女官A(女 32歳) ジレルンマーナ・ジレ
女官B(女 67歳) セラミナーニャ・セル
衛士 ストレバウス・オウジシ
軍角士・司(男 27歳) レパッタナーグ・ナタル・オウジシ
軍角士・司(女 29歳) ササレリアシータ・リア・オウジシ
第4力期も、あと数日を残すのみとなり、各家庭でも新年の準備を始めていた。ガリンとルルテが生活をしている屋敷でも、セルとジレが、年末の大掃除を行なっていた。
ガリンとルルテは、この手の事に関しては2人とも疎く、むしろ邪魔をしているといっても良いほどであったが、それでも年末の慌ただしい雰囲気は感じていた。
それもあり、ルルテはストレバウスに護衛をしてもらい、右翼の王宮へと、やや距離は近いが里帰りをしていたのだった。本人が里帰りと感じていたかどうかはわからないが、王と王妃は大いに喜んでいた。
一方、ガリンはレイレイの体についての相談事もあって、ここしばらくは、レンの研究室に通いつめていた。
ガリンは、自身の研究に没頭したいという考えもあったため、ルルテには新年を迎えてしばらくの間は王宮でゆっくりと過ごしてはどうか、と薦めていた。しかし、ガリンの『邪魔』という雰囲気を敏感に感じとったのか、ルルテは、頑として屋敷で新年を迎えると言い張っていた。そのため、年末の大掃除が終わるころには戻ってくる予定であったのだ。
そもそもガリンは、先だっての幽霊騒動で、意識体であるレイレイを元力石に定着させる際に、かなりの意思力を消耗していたこともあり、自分自身の護士としての力にも不安もあった。そんな理由もあって護衛をストレバウスに頼んでいたのだが、ルルテは自分が居ないところで面白いことをするのではないかと疑っていたのだ。
王宮に戻る前にも、
「我がおらぬうちに、勝手にレイレイの件進めるでないぞ。」
と、しつこい程にガリンに念押しをしていた。
ストレバウスと屋敷を出る時も、門をくぐる直前に小走りにガリンの元に戻って来て、何度目かわからない念押しの更に念押しをしたほどだった。
もともと、徐々に意思力は回復してきてはいたが、年内には完全に力を取り戻すことは難しく、今は大きな術を行使することが出来ないのだ。ガリンが事を進めたくても出来ないことは、ルルテには説明を行なっていたのだが・・・。
それでも、ルルテは、なんとしても屋敷で新年を過ごすと言い張るのであるから、どうしようもなかった。
もともと、特に宗教色のないマレーン王国では、年末や年明けに特にさしたる行事があるわけではなかった。あるといえば、皆が、王国の発展と、自らの安寧を願って、各地から、多くの国民が王都巡りに馳せ参じるといった程度である。
王都の商店にとっては、かきいれ時であることは間違いないが、それとて国民の休日を利用した単なる旅行である側面も強い。
ガリンやルルテに、多少関係があるとすれば、新年が開けてから7日間、マレーン城の本翼2Fの王座の間が一般に開放されるため、その期間中は警備が厳しく、自由に城内を歩けないといった程度であろうか。
期間中は王座の間では、国旗と先の対戦で現マレーン国王が、戦場で帯剣していた宝剣が公開されており、そこそこ多くの国民が訪れる。
剣は、実用的な剣ではないが、希少金属の鉄で出来ており、歴史的にも価値があるため、人気の観光スポットであるのだ。
この時代は、石、木、粘土などが様々な用途で用いられており、金、銀、銅、鉄などは、鉱山から多少発掘される程度で、産業に利用できるほどの産出量はなかった。
ある意味、樹木を文様術で鉄のように強化できるため、それほど強い需要がなかったのも、金属の流通量が増えない理由でもあった。
今年は、先日の闘技大会の事件のことや、国家間が緊張状態にあることもあり、王座の間の公開自体をやめた方が良いとの声もあった。しかし最終的には、国民の動揺を煽りたくないということと、国の威信に傷がつくといった理由で、例年通りに公開されることとなったのだ。
既に終わった作業ではあったが、ガリンも、レンに王座の間から他のところへいけないような防護結界をつくる作業の手伝いで、何度も呼びだされていた。意思力が完全に回復していないこともあり、あくまでも手伝いではあったが、それでもガリンの手助けもあり、去年までレンが1人で行っていた作業が、半分ほどの時間で終わったのだった。
ガリン自身は、レンに声を掛けられる度に理由をつけて断ろうとするのだが、結局一回も逃れることには成功していない。
そんなこんなで、意識体を封じて以降、なかなかその入れ物、つまり『身体』についての相談事は一向に進んでいなかったのではあったが。
ルルテは、ようやくガリンが、レイレイのことでレンと相談を始めたのを知って、年末、年始を屋敷で過ごしたいと、言ったのかもしれい。
年末まで、後3日というこの日もガリンは、レンの研究室を訪れていた。
新章突入です~
この世界の金属に変わる、素材に関する記述を追加。また、語尾を修正。2025.12.9




