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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第7章 幽霊騒動
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幽霊騒動 その14

----*----*-----


ガリンは、意識を取り戻した時に、自分が屋敷の自室のベットに横たえられていることにすぐに気づいた。

近くから、レンとセルが話をしている声が聞こえてくる。

自分自身が、あのまま地下書庫で意識を失ってしまったことは、すぐに察しがついた。


ガレンは、ゆっくりとまぶたを開けると、首だけをまわして、レンの方を向いた。

少し疲れたような、若干気だるそうに、


「先生、ご迷惑をおかけしました。ここには先生が?」


と、自身の状態、それから倒れた後、どうなったかのかをそれとなく尋ねた。

レンは頷くと、部屋にはいない誰かに視線を泳がせるようにして、

あか

「礼なら、お嬢ちゃんに言ったほうがよかろう。あの子が、わしの研究室に駆けこんできての、お主が、倒れたことを伝えたのじゃ。」


一番の功労者であるルルテの事を伝えた。


「そうですか・・・。で、ルルテは?」


実際、あの場には2人しか居なかったのだから、ルルテが助けを呼んでくれたことは想像に硬くない。

レンに尋ねながら部屋を見回すガリンに、


「ついさっきまで、『ここで起きるまで待っている』と言い張っておったのじゃが・・・。

当分起きる様子がないことと、起きたら呼びにやるとの約束を聞いたら、よほど疲れておったのか、そのまま椅子に座ったまま寝てしまったのじゃ。

 その後、若い女官が、部屋に連れていったようじゃぞ。」


レンはそう言いながら、もう1人の女官であるジレに視線を向けた、ジレは、レン、ガリンと続けて頷いて、レンの話を肯定した。

ガリンは、額に眉を寄せて、左手で頭を掻くと、


「そうでしたか・・・。」


と、独り言のように口のなかでモゴモゴ言いながら、半身を起こすし、ベットの縁に腰かけた。


ガリンは、その時初めて自分が外出時に着ていた服ではなく、白い部屋着に着替えさせられていることに気づいた。

ガリンは、自分のつま先から文字通り目を凝らすように眺めてから、顔をあげると、いつもの笑顔で微笑みかけているセルと目があった。

心なしか、いつもの笑顔より口角が上がっているように見えた。


ガリンは、慌てて視線を反らした。

セルは、そのまま、


「では、イクスレンザ殿、私はお茶の用意でもいたしますわ。」


そういって、一礼すると部屋を出ていった。

レンは、ガリンのそんな様子を眺めながら、


「お主も、まだまだ子供じゃな・・・。」


嘆息をついた。


ガリンは、より一層眉をしかめながら、レンに抗議の眼差しを送ったが、結局、何も言わなかった。


ガリンの問題なさそうな様子を確認したレンは、視線を、ガリンが自室にこしらえていた、炉や通風坑に向けた。無銀で見守るガリンに構わず、ガリンの自室内の設備を一通り調べ終わると、肩をすくめると、再び口を開いた。


「おおまかな話は、お嬢ちゃんから聞いたのだが、今一度いくつか質問をさせてくれぬか?」


自身が倒れた話を蒸し返されるのは気持ちの良いものではないだろうと、レンとて気を遣っていたのだが、やはり事が事だけに確認をせざるを得ない。もちろんレン自身の興味もある。

レンは、ガリンに詳細の確認をしたい旨を伝えた。


師の真剣な眼差しに、ガリンは相変わらず眉をひそめたままであったが、一度深呼吸をすると、小さく頷いた。


「まず、幽霊、いや今後は意識体と呼ぶことにするが、意識体はおったということじゃな?それはわかったのだが、発見した経緯がよくわかぬのじゃ。」


ガリンは、要点をかいつまんで、地下書庫での事の次第をレンに説明した。


「では、その意識体は、ミアンの使い魔であると名乗ったのは事実なのじゃな?」


さすがに師の視線が懐疑的あることにガリンも気がついたが、


「ええ。確かにそう言いました。」


努めて淡々と返答した。


「信じがたいことじゃな。」

「確認はとれておりませんので、絶対とは言えませんが・・・。」


まあ、この点に関してはガリンも現状確証を得られた訳ではないため、このようにしか返答のし様子がない。

レンも、今確認することが出来ないと同じ結論に至ったのか、


「うむ・・・。まあ、それはおいおいわかることじゃろうからな。それと、わしが探索の元力石であると思っていたものが、意識体捕獲のための元力石であったことは、悔しいが認めざるをえんのじゃな・・・。」


と、話題を変えた。

そう言うと、レンは、横目でガリンをちらりと伺い見る。


ガリンは、その話題が出るや、憂鬱な顔は消えて、目に光りが宿る。

弟子の得意気な顔に、頬をひきつらせながら、

レンは咳払いをして、話を続けた。


「その意識体は、お主の意思力を吸収しながら、石に捕獲されたのか?」


元力石に意識体を定着させた過程、文様術士としては、最も重要とも言える話に、ガリンも一時考えると、慎重に言葉にした。


「いえ、そうではありません。おそらく私の体を経路にして石に自分を移動させたという表現が適切でしょう。その時に、意識体が自分を石に定着させるエネルギー源として私の意思力を根こそぎ持っていったということだと思います。捕獲というよりは、意識体自身が自ら宿ったという感じでしょうか。」


ガリンは、捕獲という言葉を訂正しながら、その時の自身の感覚を言葉にした。

レンは、驚いた顔で、


「うむ・・・。お主の意思力は、並外れて多い。そのお主の意思力をそれだけ必要とする文様術ということだというのか?」


そう聞き返した。


「そうなります。」


ガリンは師の目を見ながら頷いた。

レンは、呆れたように首を振ると、


「常人ならば、命そのものが危なかったところじゃの・・・。

 しかし、過去何名かが、意識体の捕獲に成功しておる。

 そのすべてがお主ほどの力をもっていたとは、にわかには信じがたいところじゃな。」


と、素直に疑問を口にした。

文様術に使用する意思エネルギー量は、当然人により差異がある。

数字で表すことが出来るものではないが、レンの感覚として、平素ガリンが術に使っている意思力をみる限り、常人の数倍、少なくとも3、4倍はあると考えていた。その殆ど、ガリンが意識を失うほどに消費したのであれば、普通の人間であれば、命を落としていたことだろう。だからこその、この疑問である。

当然ガリンも自身の意思力に関して、他の術士と比べてかなり多いことは自覚していた。

しかし、ガリンは師が口にした疑問に関しては、ある程度の仮説を既に立てていた。


「全員が、全員己のみの力を使ったとは限りませんよ。

 たとえば、複数人数で、この作業を行なうことも可能でしょうし、あるいは、事前に、他の元力石にエネルギーを集めておいて、そのエネルギーを代替に使うといった方法もあるでしょう。」


更に得意気にガリンが答える。


「くっ・・・。なるほどな・・・。この歳にしても、学ぶことはまだまだあるといういことじゃの。」


悔しそうであり、また楽しそうに言うレンを見てガリンは、


「そうですね。学ぶことは本当に沢山あるものですね。私も時間さえあれば、こんなに消耗することはなかったと思います。」


そう、術士らしく、少しだけ得意気な様子を反省したのか、自身の性急な行動の結果を、反省するかのように頭を掻きながら、反省を口にした。

それを見て、レンも溜飲を下げたのか、2人ともすっかりいつもの師弟の表情に戻っていた。


「回復には時間がかかりそうかの?」

「しばらくは、ほとんど文様術は使えそうにありませんね。」


レンは頷くと、


「そうか、しばらくは、ルルテんいもわがままは言わず、おとなしくしておるように伝えておくかの。」


ニヤリとしながら締めくくった。

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