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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第7章 幽霊騒動
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幽霊騒動 その11



ルルテの素直な質問に、少しだけ微笑みを浮かべながら、ガリンは返答を続ける。


「なんでも良いというわけではありません。その受け皿となる体には、意識体を定着させるための核となるものが必要です。」

「よくわからぬな。核とはなんだ?」


平素、文様術を扱っている術士でも、ホムンクルスなどの分野を専攻していない限り、話題にすることはない話だけに、いくら噛み砕いて話をしているとはいっても難しい。


「人間で言えば魂がそれに似ていますね。」

「ますますわからぬぞ。魂は存在するのか?あるとして、それじゃあ、命ある生き物に定着をするというのか?」


現代の文様術でも魂の存在は確定されていない。しかしながら、人が意思ある存在としてあることは、文様術が人の意思の力をその魔法原理の根底としていることからも、明らかとされている。そして、意思とは質量をもったエネルギーであり、それが水晶に刻まれた文様を通して、現象を発現させる。

そのため、副次的にではあるが、ガリンが『魂』と呼んだ意識体が人の中に存在していることは、ある意味確立されている理論でもあった。ただ、意識体と魂がイコールであるかどうかは、確定されていなかった。

ルルテにとっては、魂は証明されていないおぼろげなものであり、これに命が絡んでくると、なおさらわからない部分だらけになってしまう。ガリンは、一瞬、人の内にある意識体と魂の同一視理論の説明を頭に思い浮かべたが、ルルテの顔を見て、それを飲み込むと結論だけを答えた。


「それも1つの方法でしょうね。」


しかし、結果的にではあるが、ルルテも魂と命を連結させた。


「幽霊を定着させた体の命はどうなるのだ?」


こうなっては、証明されていない理論であっても、ガリンは素直に、子供に聞かせる話でもないが、生死という言葉だけ避けて出来るだけ淡々と答えることで、正解とした。


「試したことがありませんので、はっきりとしたことはわかりません。また意識体をもともとその体が有していた魂と呼ばれるものに定着することにより、端的に言えば、もともとあった意識体は消滅するのだと思います。」


「それは死ぬという事ではないのか?」


ルルテは、馬鹿ではない。やはりここに帰着する。ガリンは、


「別の言い方をすればそうなりますね。」


と、努めて淡々と肯定した。


「・・・。」


ルルテが、幽霊の探索を始めてから、始めて悲しそうに顔をしかめた。


「他に方法はないのか?」


続けてルルテが問う。

ガリンは、ルルテのこういった優しさを知っていたし、好ましくも思っていた。

あらかじめ用意していた、ルルテの心配を解決する方法説明を始めた。


「抜け殻の有機生命体である『ホムンクルス』に意識体を定着させたり、あるいは木や土を使用した『ゴーレム』に定着させる方法もありますね。キメラなどの魔法生命体に定着させる方法もありますが、この方法の場合は、やはりキメラが有している命は損なわれることになると言えるでしょう。」


しかし、ゴーレムはともかくホムンクルスは、現在の文様術でも研究はされているが、倫理的な規定も含め禁止されている。それを踏まえての回答であったが、ルルテの表情は幾分晴れたように見えた。そして同時に、


「どちらにしても簡単ではないのだな?」


と問い、溜め息をついた。

ルルテにも、目の前の幽霊に身体を与えることの難しさが理解できたのだ。否定しても事実は変わらないと判断したガリンは、


「簡単に言えば、そういうことになります。」


と、素直に肯定した。


「そうか・・・。」


ルルテも、ただそう言って頷いた。

しかし、ガリンがルルテからその視線を机の元力石に戻したとき、ある考えがガリンの脳裏に浮かぶ。

そして、ガリンは再び空に目を向けた。


「レイレイ殿、まだいくつかお聞きしたことがあるのですが、よろしいですか?」


石が2回瞬くのを確認するとガリンは質問を続ける。


「あなたは、ずっと以前からこの地下書庫にいたのですか?」


石が2回瞬く。

ルルテは、ガリンが何で急にこんなことを幽霊に尋ね始めたのか真意は分からなかったが、静かにガリンの質問へのレイレイと呼ばれた幽霊の返答を注視した。


「私は、何度もこの地下書庫に足を運んでいましたが、いつでも出てくることは可能だったのですか?」


石は1回だけ輝く。

ガリンが唸り声をあげる。


「うーん。・・・では、やはり、この探索の元力石があるから今回、接触が可能だったのですか?」


考えた末、次の質問をぶつけた。

石は1回しか光らない。


「石は関係ないのですか?」


石は、2回輝く。

ガリンは、再び唸り声をあげてうつむくと、思案を始める。

そんなガリンを見て、


「腹が減っていると言っていたではないか?」


ルルテが口をはさむ。

ガリンが目を細めてルルテに視線を向けた。

それでも、ルルテのこういうときの鋭さは馬鹿に出来ないと知っているガリンは、自分の常識に蓋をして問う。


「まさか・・・。レイレイ殿、空腹を感じたから出てきたのですか?」


恐る恐るした質問に、石は、強く2回輝く。

今度はガリンが分からなくなる。


「よくわかりませんね。意識体であるあなたが空腹を感じるのですか?」


石は1回輝く。それと同時に、頭の中にレイレイの声が聞こえる。


『クッキー・・・。なつかし・・・・。思い出す。ミア・・・。』


ガリンがレイレイの言葉を頭のなかで咀嚼して、問いただす。


「ミア・・・。それがあなたを使役していた文様術士の名前ですね。」


石が2回瞬く。


「・・・、ミア・・・。ミアン!?」


ガリンが、突然大声をあげ、立ちあがった。

書きながらアップしています。誤字などあったら申し訳ないです(;´д`)

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