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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第7章 幽霊騒動
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幽霊騒動 その8


空気を詠まない問いかけに、ルルテは、キッっとした顔で振り返り、


「幽霊を探しておるのだ。」


と、言って立ち止まった。

ガリンは、とりあえず、目的なく彷徨うのをやめさせるため、提案を行った。


「闇雲に探しても見つかりませんよ。一番端から順序良く探していきましょう。」


と・・・。

ルルテは、目を見開いて一層顔を暗くした。


ルルテは、ひどく気落ちしている自分に対して、慰めの言葉もなく、冷静に『端から』などと言っているガリンに対してひどく憤りを感じていた訳だが、しばらく考えているうちに、


『こやつが繊細な我の、そう、我の純粋な未知へ憧憬と探求心を理解しろ、というのが土台無理であったな・・・。』


勝手に、自分自身で結論をだし、気を少しだけ取り戻したのだが・・・。そう思いながら、ルルテがチラリとガリンを横目でみると、ガリンは先程ほどレンからから預けられた『探知の元力石』をいそいそと用意をしてるのが目に入る。


ルルテは、ガリンがこの種の問題に関しては、想像を絶するぐらいに鈍いと良く知っていたが、改めて体験するとやはり腹立たしいものでる。

ガリンが自分を傷つけた発言を、自分で納得し解決したのに、本人の興味は既に自分ではなく、新しく手に入れたおもちゃに夢中なのである。これは、我慢できない。


ルルテは、ガリンの足を思いきり踏みつけ、


「何をしておるのだ。いくぞ。」


そう言って再び歩き始める・

ガリンは、踏まれたばかりの足を引きずるように、そしてなぜ自分が足を踏まれたのかを考えながら、もそもそと、それに従ったのだった。


2人は、まずガリンの提案通りに一番端の列まで行くと、そこから丁寧に1列づつ、先ほどレンか預けられた元力石を前にかざしながら歩いていった。

本棚は、ガリンの背の高さの倍ほどの高さで統一されており、まるで本棚の迷宮を歩いているようであった。棚には、紙で綴られた書物だけではなく、色とりどりの記録石が保存用の台座に置かれた状態で保存されており、まるで宝石をちりばめたように煌めいていた。

歩き始めた時はかなり不機嫌であったルルテも、その光景と好奇心に負けたのか、次第に顔に期待を浮かべ、辺りを見まわしていた。


2人は、気になる目録を見つけては中身を確認したり、意見を交換したりしがらゆっくりと進んでいた。

また、ガリンもルルテが興味を持ったことには、出来るだけ丁寧に説明をしていたため、調査は一向に進んでいなかのだが、それでも2人は和やかな雰囲気で幽霊探索を続けていた。


ガリンは、あまりにも一か所で時間がかかった場合は、興味があるものはまた機会をみてここを再び訪れるように、と話をしながら、1列、また1列と調査を進めていったのだった。


そうやって残り半分かというところまでく来たところで、、ルルテの我慢が限界に達する。

探索自体が面白くないわけではなかったが、一向に手掛かりはない。

そうなると、ルルテが疑うのはあれだ。ガリンが大切そうに手のひらに乗せて歩いている元力石、それを覗きこんで、


「ガリン。その探知の元力石は、確かに機能するのであろうな?」


と、怪訝そうな表情で言った。


「それは、私も試したことがないものですので、絶対とは・・・。」


確かにその通りである。ガリンは、少し肩を竦めるしかなかった。

ただ、ルルテが求めているのはそんな言葉ではない。


「わからない、絶対ではない、我が期待しない答えばかりではないか、すでに半分は調べたのではないか?」


ルルテは図書館をぐるりと見渡しながら、指差した。


「ええ。もうかなり歩いていますよ。ただ、この書庫にかならず幽霊がいるわけではないのですから・・・・。」

「それはそうだが・・・。」


最初から、確実に幽霊が書庫にいると決まっていたわけではないが、言い方や、ガッカリしない何かがあっても良いのではないかと、ルルテはため息をついた。

ガリンもさすがにここまで来ると、ルルテが、


『幽霊がいない』


と言うことに落胆していると気付く。


「疲れましたか?でも、ルルテ、幽霊がいなかったとしても、ここに来たのは間違いではなかったですね。」


そう、微笑みかけた。

少なくとも、ここまでの調査では幽霊に会うことはできていないが、ガリン自身も、地下書庫に来たことそのものが退屈だったわけではなかった。それはルルテも同じだった。

だから、ルルテもガリンの不器用な微笑みに幾分苦笑を浮かべたものの、ながらも、


「そうだな。」


と、素直に頷くのだった。

そして、続けて、


「思った以上に楽しい場所ではあった。しかし、ガリンが古代の記録石だと見せてくれた、紙の『本』だったか?あれだけ厚いもので、しかも文字がびっしりと書きこまれておる。あれだけの量をどうやって複製を作っているのだ?」


と、質問を口にしたのだった。

ガリンは、ルルテの機嫌が少しだけ良くなったのにほっとしながら、質問に答える。


「見てきたわけではありませんので、文献からの知識になりますが、印刷という科学技術を使用していたいたようです。」

「印刷?初めて聞く言葉だな。」


ルルテも興味をひく新しい言葉が出てきた所為か、素直に話に喰いつく。


「はい。これは、我々文様術士の学問の分野にございます。」


ルルテは文様術士の(くだり)に、片眉をあげ、


「説明は良いぞ。他にも質問があるのだ。」


と、釘をさす。そして次の質問を即座にぶつようとする。

ガリンは、こういうった議論が大好きであり、特に気にした様子もなく、気の短い生徒に次の質問を促した。


「どうぞ。」

「うむ。我が文明以前、言語は完全に統一されていなかったと言っておったな。」


ルルテも、頷きながら質問をする。


「そうですね。」


ガリンも頷き返し返答する。まさに先生と生徒である。


「では、厚い本など作っても限られたものにしか読めぬではないか?」


ある意味もっともな疑問とも言える。


「ルルテの考察は、基本的な意味では間違っていませんね。」


ルルテは、ガリンの返答に一瞬眉を潜めたが、振り払うように首を左右に振って、更に質問を掘り下げた。


「記録石であれば、記録内容をイメージで直接伝えることができるのし、複製も簡単であろうな。やはり古代の文明は我々の文明より劣っておったのか?」


「一概にそうとは言えません。私たちの魔法技術は、次元接合門を確立することにより、移住可能な惑星を直接発見することに成功しました。それは先史文明でも実現不可能だったはずです。

 しかし、以前の科学技術では、我々のような次元接合門という発想ではなく、実際に空を飛び越えて他の惑星を探していたようです。文献によれば、月に宮殿を造っていたとの記録もありました。」


ルルテは、ガリンの返答に予想もしない件を見つけて、文字通り目を丸くして、


真実(まこと)か?」


勢い良くそう尋ねた。


「文献によればそうなります。」


ガリンは再び頷きながら、ルルテの疑問に答える。


「では、お伽噺にあるような、空に浮かぶ城なども実際にあった可能性があるのだな。」


幽霊とは違う分野であるが、ルルテにとっては、極めて興味を掻き立てられる空想的な話であったようである。それを理解した上で、ガリンも自身の返答に、肯定と説明を付け加えた。


「十分に考えられますね。」

 それに私たちの生活の中で、それらすべての科学技術が失われてしまった訳ではないのですよ。」

「そうなのか?」


空想、お伽噺の世界から、一歩現実に寄った説明に、ルルテの頭の上に疑問符が浮かんだ。


「ええ。広い意味では私たち晶角士が使っている文様術も、先史の遺跡で発見された科学技術を利用している面が多くあるのです。そのため遺跡の調査も文様術士1つの仕事と言えます。」


より一層、ルルテの頭の上の疑問符が大きくなる。


「ガリン、まだこのマレーンにも先史の遺跡は多く残っているのであろう?何を当たり前のことを言っておるのだ?」


「調査済みの遺跡もあれば、まだ調査が行なわれていないものも多く存在します。

私が言っているのは、今この図書室を照らしている照明も、先史文明の電球と呼ばれる発光体の形と発光のための科学原理を応用して実現していると言うことです。文様術に科学技術と原理は欠かせないものなのです。ある意味では、科学は文様術の祖と言えます。」


ルルテが天井で発行している照明の元力石を見上げながら、


「いつか、それらの遺跡をこの目で見てみたいものだな。そこになら幽霊がいるかもしれないしな。それに空を飛べる日もくるやも知れんな。」


そういって、ルルテは満足そうに再び歩を進め始めた。


「遺跡を目にするだけなら、そんなに遠い未来のことではないかもしれませんよ・・・。」


ガリンも、再び歩を進めながら、そうつぶやいた。


「何か言ったか?」

「いえ。もう少しで、やっと半分です。中央部には、研究者のための机と椅子があります。そこで一休みをしましょう。」


ガリンは少し先に見えている中央部の方を指差した。


「そうだな。茶にするとしよう。」


ルルテは、自身の退屈と憤りが、ガリンの説明くさい話によって多少薄れたことに、ちょっとだけ、そう、ほんのちょっとだけ感じた悔しい思いを飲み込んで、素直に従った。

文章のちぐはぐ感と、語尾を少し動的に変更。2025.11.28

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