表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第6章 それぞれの出発点
39/144

それぞれの出発点 その4


3人は、右翼へと続く石廊を進んでいた。

王と現宮廷晶角士であり先の大戦時にも王の護士を努めたレンは、闘技大会での事件の後、これに付随して発生している諸問題にかなりの時間を割いていた。


事実、こうやって移動している間も、2人は多くの言葉を交わしながら歩を進めている。


ガリンは、2人の後でその会話に耳を傾けつつ、先ほどの会議の様子を思い出していた。


会議そのものは、ガリンにとってはほとんど興味を引かれるものではなかったが、イタバンサ卿が会議にて証拠物として示し、今は自分の手元にある元力石は大いに興味を惹くものであった。

ガリンがこの元力石にこれほど興味を惹かれていたのは、元力石彫られている文様がガリンが扱っているものとはいささか異なる理論体系に基づいているものであり、他国の文様術を研究できる数少ない機会であったからである。特に次元空間に関連した文様な目に触れる機会が少ないのだ。

会議への出席は本意ではなかったがガリンなりの成果があったというところである。


ガリンは、あの場で目にした文様を脳裏に思い浮かべ、その精巧な幾何学模様に頭の中で指を這わせた。

ガリンにとっては、楽しく、ある意味甘美な瞬間であった。

そんなことを考えながら歩いていたためか、ガリンは執務室横の士官用の闘技場の横を通りすぎる時にも、軍角士達が打剣を打ちあわす激しい剣戟音にも少し視線を泳がせただけで、そのまま2人の後について執務室に入っていったのだった。


ガリンが執務室に入ったのは、これが2回目となる。

1回目は、生誕祭の前にルルテへの面通しとして訪れた時である。

それからまだわずかな期間しか経ってはいなかったが、ガリンはもうそれがかなり前のことのように感じていた。


執務室は、王が日常様々な公務を実際に行なう場であり、ガリンがまだ学院で生活を送っていた時分から、レンはよくこの執務室を訪れるために学院を留守にしていた。

造りは、城内の他の部屋と変わらず石造りの平屋となっていた。

また、王が長い時間を過ごすということもあり、部屋にはかなり複雑な防護結界が張られていた。

おそらくは師の手によるものと思われるその結界は、決して強力とはいえないものの、半永続的に効力が続くように高度な文様が刻まれていたのだ。また、その周囲には形をとどめない人の意思を蓄積する、つまり街頭などと同じ意思蓄積のための文様も施されており、その結界をより強固なものへとしているようでもあった。

他にもまだいくつかの工夫が施されているようではあったが、さすがガリンでも王の執務室に施された結界用の文様をつぶさに調べるわけにもいかないため、それ以上のことは、ガリンも詮索はできてはいなかった。前回もだが、ガリンは調べたくてうずうずしているのだが、我慢せざるを得ないのが残念なところだ。


部屋の一番奥には岩盤から削りだされたと思われる王個人の執務用の石卓が置かれ、その背面の壁にはマレーン王国の国旗が掛けられていた。

石卓の前には4、5人用の会議用の円卓が入口に向かって置かれており、万が一の場合には、この円卓に座っている者が、敵そのものの進入を食い止め、王の退路を確保することを可能としていた。


石卓の下には隠し通路があり、入口に座している物達がある程度の時間さえ稼ぐことができれば、王は十分に逃げることが叶うはずである。

ガリンは、その隠し通路が城内でもっとも攻め難いとされる右翼最上部にある王宮に繋がっているのだろうと考えていた。

どのくらいの者がその隠し通路のことをを知っているのかをガリンは知らなかったが、ガリン自身は初めてこの執務室に入ったときに、石卓の下に埋め込まれている開門の元力石からのわずかな力を感じ取り、すぐにそこに隠し通路があることに気づいた。本来秘密であろう通路のため、話題にあげるわけにもいかず、この通路に関してもあくまでも予測するしかなかった。


実際、誰でも使えるわけではなく、開門に必要な呪が必要なため、知っていたからどうだという類のものではないだろうが。

それでも、ガリンは最初に隠し通路に気が付いたときに、呪がなくても開けることができないだろうかと、試してみたい衝動にかられていた。

もちろん、実際にはそんなことを試そうものなら大騒ぎにはなるのではあろうが、いつか試すことのできる機会もあるだろうと、勝手に楽しみにしていたのだ。


ガリンが執務室のドアをくぐると、既にルルテの母親であり、現マレーン王妃のエレルメイサ王妃が円卓についていた。


ガリンは、軽く頭を下げると、既に席についていた師の隣に座った。

レンは、遅いといわんばかりの非難の眼差しをガリンに送った。


「では、不肖の弟子よ。闘技大会での事件についての詳細を報告するのじゃ。」


ガリンは、席についていきなりのことであったことと、レンにはすべて報告したつもりであったので、不満を表情を浮かべレンを見かえした。

たが、レンが横目でガリンを捉え咳払いをすると、ガリンはこれも責務の1つと諦めて、報告を始めた。


ガリンは、闘技場の観客席で一番後列の席を選んだことから話を始め、途中でのリアのことや最終的にはルルテの意識を奪って部屋に運んだこと、そしてその後、簡易結界で周囲を防護したことなどを時間の流れにそって報告を行なっていった。


王自身はレンから事前にある程度の報告を受けてはいたものの、ガリンの口から報告されるそのときの様子を実際に耳にすると、途中何度も嘆息をもらした。

又聞きしたレンから聞いた話と、実際にその場に立っていたガリンの話では伝わる印象はまるでちがったのだろう。特にガリンは、何かを説明するときには感情が抜けたようになることも多いからなおさらなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ