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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第6章 それぞれの出発点
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それぞれの出発点 その3


王が話題を変えたのを機に、ハサルは、大きく深呼吸をして、再び報告を始めた。


「各文化圏からも、徐々に返答が戻ってきております。

ノール、レタン文化圏からは、弔辞と賛同の意が既に届いておりますが、イケルス、ウェンザからは事態の詳細について聞きたいとの意だけが届いております。

クエルスからも、返答そのものは戻ってきているのですが・・・。」


そういうと、ハサルは口を濁しレンの方を見やる。

レンがそれに相槌を打つと、再びハサルが口を開く。


「クエルスは、ジャラザン卿を通じて、各文化圏の大使を危険に晒したことへの糾弾と、そのことに対しての国家としての正式な謝罪が先であるとの書状が届いております。」


そう言い終わると、ハサルは、額の汗をぬぐった。


「更に、付け加えて、例年通りに7大文化圏会議を開催するのであれば、危険な我が国ではなく、クエルスの首都カーリスでの開催を希望すると・・・。」


再び、汗をぬぐってハサルは、一同を見渡した。

さすがに、諸侯もどよめいている。


「ふん。ジャラザンの言いそうなことだ。かのクエルスの大統領は本当にそう思ってるのかもわからないではないか。」


そう、エランが吐き捨てた。

レンが口をはさむ。


「イケルス文化圏はどうなのじゃ?」

「イケルスは、いまだ何の返答もございません。」


と、ハサル。

エランは、それを聞くと、


「わかりきっておるではないか、イケルスなぞ、クエルスの隷属文化圏に過ぎぬわ。」


再び、叫ぶ。


「まあ、エラン。お主がそこで叫んでもジャラザンの耳には届かまいて。我らは、このような事態に対応する事を目的として、ここに集まっておるのじゃぞ?」


レンがたしなめる。

エランは、鼻を鳴らしがらも幾分、落ち着きを取り戻すと、


「王よ。あのジャラザンという男・・・、先日の事件の折にも、他の大使を扇動するがごとく不安をあおり、各大使が自分の状況を把握できぬ前に帰路に立たせてしまうという狡猾振り・・・。そして、今回はこのような世迷言を・・・。

王よ・・・。どうなされるおつもりですか。」


王に問いただす。

他の諸侯がこんな言葉を王にかけようものなら、それだけで退席を命じられてもおかしくはない、そんな物言いである。

王は、ゆっくり瞳を閉じ、小さくうなると、


「ハサル、各文化圏に密偵を放ってくれ。」


そう命を下した。


「それは、クエルスも含めてということでありましょうか?」


「当然だ。ジャラザンの言いよう・・・。国家として我が国が軽んじられたのは許すことは出来ぬが、正しい側面もある。確かに事件の解決、いや、せめてある程度の全容の究明を進めぬまま、もう一度他国の大使たちをここに集めるわけにもいくまい。まずは、敵を正確に見定めるのだ。

それと、今回も7大文化圏会議は、当然マレーン王都にて開催する。再度、その旨を各国に送るのだ。多少強気でも構わない。」


そして、レン、エラン、ハサルのそれぞれ1人ずるに顔をむけると、


「レン、エランもハサルに助力を。

また、ここに集まっているすべての卿らは、おのが所領の安全に留意をしてくれ。」


そういって、席を立った。

立ちあがった王が手を胸に当てると、諸侯も一斉に席から立ちあがり、同じく胸に手を当てた。


王が再び席につくと、1人1人、王に頭を下げ、会議室から退席をしていった。

最後にエランが、頭を下げ会議室を後にした。


残ったのは、王、レン、ガリンの3人だけとなった。

王は、3人だけが残っているのを確認すると、緊張した顔をほぐした。


「レン、困ったことになったものだな。」


「確かに・・・。すんなりと事が運ぶとは思いませなんだが、ジャラザン卿はやはり喰えない男でございますな・・・。」


「うむ。その件は、まずはハサルの手腕に任せるしかあるまい。

さて、エルが待っておる。執務室に移動するとしよう。娘の報告も聞きたいものだ。」


そういって、王はガリンに視線を移した。

ガリンは、あからさまに眉を寄せながら、頭を下げた。


「レン、私たちが家族であるということ、まだ若き晶角士にはわかってもらっていないようだな。」


王は、微笑んだ。

レンは一瞬、ガリンに薄目を向け、


「さて、参りましょうぞ。」


そう言いながら席を立つと、王と共に歩き始めた。

会議室の入口で警備をしていた衛士が2人の横に付き会議室から遠ざかると、ガリンも諦めたように席を立ち、2人の後を追うように会議室を後にした。


後で改変した、7大文化圏会議のありようを踏まえて、文章を加筆修正。2025.11.10

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