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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第二部 巡察編 第16章 旅の始まり
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旅のはじまり その12 可能性

 サラは、風力車の確認に向かうガリンの後ろ姿を眺めながら、王都を出発してからの2日間を思い出すように、思案を巡らせた。


『たった、2日でこれかい・・・。』


 正直、サラもここまでとは思っていなかった。


 王都を出て1日目には、風力車にどこかの文化圏の間者が盗聴の元力石を仕込んでいた。

 そして2日目には、おそらく商隊を装った盗賊団の獲物にされかかっているのだ。


 確かに、6人の小さな一隊で、そのうち3人は明らかに戦力外に見える。残り3人も、軽戦士が2人に盾役が1人。

 襲いやすい一団に見えるのは当然といえた。少人数でも傭兵団として名が通っていれば襲撃対象にはされにくいが、現時点ではそれもない。


 おそらく、ウクバルという商人は、傭兵団に扮した盗賊団のまとめ役か何かだろう。


 マレーン文化圏では、物語に出てくるような、汚れた身なりの荒くれ盗賊団など、実際にはほとんど存在しない。

 食べるだけなら獲物を狩り、畑を耕せばよい。

 特に、マレーン王国には税金がなく、都市や町では街灯や光浴施設で意思力を差し出せば生活できる。また、村には空き家も多く、働き手は常に求められている。

 やさぐれただけで、盗賊に身をやつす必要があるような環境ではなかった。


 だからこそ、この文化圏の盗賊は、ある意味で『職業選択の結果』としての盗賊である。

 小綺麗な衣服をまとい、都市や町で生活し、傭兵団や商隊に扮して相手を襲撃する。しかも足がつかないように。襲って、何食わぬ顔で全員を貨車に詰め込み、護衛しながら適当な場所で処分し、ねぐらに戻ればよい。


 これは、人は資産になり難いからだ。マレーン文明全体に言えることだが、個人は生力石で管理されている。いくら人を攫っても売買は難しいのだ。

 女性なら慰め物にした後処分すればよいが、男性はほとんど使い道がない。

 結果、どちらにせよ、人は処分される。だからこそ、証拠も残らない。

 全員処分してしまえば、当然、恨みも買うことはない。なにせ、家族がいても、犯人がわからなければ仇討ちさえできないからだ。


 だから、あの商人はじろじろと私を見ていたのだ。

 あの視線は、戦力としての評価だけでなく、女としての値踏みすら含んでいた。正直、寒気がする。


 間違いなく、あの商人の一団は襲撃してくるだろう。あちらは、こちらの情報を持ち、人数も把握している。

 対して、こちらは相手の規模を知らない。遠目に見た限りでは10人はいない傭兵団だろうが、戦力は不明だ。


 負けることはないだろうが、面倒な戦いになる。

 無理に避けようと思えば避けられるが、ここで避けて、あいつらがあちこちに情報を売れば、さらに面倒な事態となる。


 実戦訓練も兼ねて、やるべきだろう。

 サラはため息をつきながら、楽しそうに出発の準備をするレイレイとルルテを見つめた。


 サラは皆の準備が終わったのを確認すると、ルルテとレイレイに風力車の荷台へ乗るよう指示を出した。

 せっかくルルテとレイレイの身分を明かし、戦力外だとウクバルに思わせたのだから、その誤解はそのまま維持しておきたかったのだ。

 まあ、ガリンは防具すらつけていないので、風力車に乗っていようと歩いていようと、どう見ても戦力外にしか見えないだろう。


 それとなく


『2人の子供は街道を徒歩で進むことすら難しい。』


 と印象づけながら、2日目の野営地を後にするのだった。

 

 本来、商人は利に聡い。陽が上がれば準備を整え、早々に出発することが多い。逆に傭兵団は時間に適当なことが多い。あくまで印象ではあるが、だいたいそんなものだ。

 だが、ウクバルの商隊は今も動いていない。準備すらしていないように見える。この時点で、すでにおかしいのだ。

 おそらく、こちらが次の町セルナの方角へ向かったのを確認してから、後を追うつもりなのだろう。


 よほどの馬鹿でなければ、日中に後方から襲いかかる可能性もあるが、普通に考えれば夜襲が妥当だ。


 王都を出てからセルナの町までは、小さな村しかない。それも、小麦の刈り取りの繁忙期にだけセルナから人が来て住む出作り集落があるだけだ。

 今の時期は閑散期で村には人がいない。そのため、セルナまでは泊まれる村がない。つまり、セルナへ向かうなら途中の野営地を必ず使うことになる。

 騎乗して移動すれば野営なしでも街に着ける距離だが、ガリンたちは人数分の騎乗動物を連れていないことは、ウクバルも理解しているはずだ。


 だからこそ、夜襲の可能性がもっとも高いのだ。


 今、ガリンたちはジレを先頭に、その後ろにストレバウス、ガリン、風力車に乗ったルルテとレイレイ、殿にサラという、訓練とは異なる隊列で進んでいた。

 サラは隊列を組む前に、前方の注意をジレにしっかり伝え、自分は後方の警戒に回ったのだ。


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