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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第二部 巡察編 第16章 旅の始まり
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旅のはじまり その10 ストレバウス

 この後は、サラ、ストレバウスと夜の番を担当し、朝を迎えるのだった。


 実は、なんでもそつなくこなしているように見えるストレバウスだが、もともとはそんなに器用な男ではなかった。


 ストレバウスは商家の生まれだった。早くに父を亡くし、家業で扱っていた絹製品が貴族の御用達となっていた縁で、母が商品を届けていた貴族の一人が母を妾として迎え入れた。

 その結果、ストレバウスは貴族の家名に連なることになったのだ。


 この貴族は、次元接合門と次元間の商業公益を管理する商角士であり、商爵を与えられていた人物だ。勤めを終えて退位したことで准男爵となった法衣貴族である。

 もともと商業交易の管理に長けていたため、退位後はウアラ領の一文化圏にある小都市の代官として再登用された。


 もちろん、准男爵の養子であるストレバウスに爵位継承権はない。准男爵は一代限りの爵位である。


 だが、この准男爵は人格者であり、亡き父と同じく実直な人物だった。

 実の父と義理の父、2人のその背中を見て育ったストレバウスも、誠実で実直な性格となったのであった。


 准男爵は、妾の連れ子であるストレバウスの将来を案じ、他の実子と同じように学院で学ばせ、軍角士の資格を取るまで支援してくれたのだ。


 それに応えるかのように、ストレバウスはそこそこの剣の才能を見せた。

 そして、義父を代官として登用した子爵、その寄親である現宰相にして公爵のキムエラ・エラン・ウアラ・キジシの推薦を受け、1軍角士として兵士の務めに就くことが出来たのだ。


 これは、剣の実力で司となったリアやナタルとは、まったく違う道といえた。

 司まで昇進した2人は士爵位を得ており、退位すれば准男爵となる。将来の貴族位が約束されている。

 一方、ストレバウスは軍角士として階級を上げる道を選ばず、衛士となったからだ。


 衛士には階級がない。王族の衛士となれば、最終的には近衛となり、近衛隊長に至る。

 近衛隊長は高い地位だが、爵位は伴わない。名誉職に近いのだ。


 それでも、ストレバウスはその実直さと粘り強い戦闘センスを買われ、衛士になって数年で王族の衛士に抜擢された。

 最初は王の間の警備や、公務時の護衛団として実績を積み、ガリンが護士になるのと同じ時期に、ルルテの衛士を命じられた。


 ルルテの衛士となった時点で、国から士爵として、本来は貰えない役職位を授かっている。

これは国からの信頼の証であった。


 今は、ルルテとガリン、王族とその婚約者である男爵の護衛として旅に同行している。

 このまま旅を終えてララス領に入れば、そのまま領主の衛士となる。

 衛士は簡単に仕える相手が変わる立場ではない。

 つまり、最終的には女王と宰相の近衛となる。

 個人につく近衛であり、位としては近衛隊長と同格、あるいは兼務する可能性すらある。

 近衛隊長は基本的に子爵以上に叙爵される。

 リアたちとは違うが、ストレバウスも十分に『成功者』と呼べる道を歩んでいた。


 集団戦で功を立てることはできないが、要人を守ることで功績を積むことができるのだ。


 ストレバウスは現在43歳。衛士としては80歳ほどまで務めることができるだろう。先は長い。


 また、彼には妻と子がいる。

 妻は、亡き父が営んでいた商家で働いていた絹織職人の娘で、今も職人として働いている。

 その商家は、今はストレバウスの実母と弟が経営を続けており、扱う商材も絹製品のままだ。

 ララス領は養蚕が盛んであり、ストレバウスが王女たちに仕え続ければ、実家にも利があるだろう。


 妻は姉さん女房で、気が利き、職人気質の父の血を受け継いだ女性だ。担当は染織である。

 子はまだ幼いが、義父の家で貴族としての所作を学んでいる。


 レンを除けば根なし草のガリンとは違い、ストレバウスには守るべき家族が多くいた。そして、家族を愛し、愛されていた。

 これだけでも、彼の性格がよくわかるというものだ。


 ストレバウスは、サラに教わった夜の番の心得をしっかり守り、朝を迎えた。

 そして、1人、また1人と目覚めて焚き火のもとに集まってくる仲間たちに、丁寧に朝の挨拶をするのだった。


「おはようございます。今日は良い天気ですね。」


 ストレバウスが、そう言って空を見上げると、空は雲ひとつなく澄み渡り、朝の光が静かに大地を照らしていた。

 街道沿いの草木は、夜露をまとったまま朝日を受け、細かな雫が宝石のようにきらめいている。

 遠くでは、まだ冷たい空気を震わせるように小鳥の声が響き、風が通るたび、若葉が柔らかく揺れた。

 旅の疲れをほんのひととき忘れさせるような、清らかな朝だった。


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