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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第二部 巡察編 第16章 旅の始まり
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旅のはじまり その8 ガリンとサラ


 話が終わると、サラの指示で、今日の夜の番の順番は、ジレ、 ガリン、 サラ、 ストレバウスとなった。


 ジレは危なげなく2時間をこなした。

 女官として夜にルルテを見守っていた経験があるため、夜は強いらしい。


 次にガリンが番につく。

 ガリンは夜更かしに慣れているため、特に問題はなかった。


 ただ、ガリンには別の問題があった。


 実は、ルルテと同じテントで寝るのが、非常に難しかったのだ。狭いテントではないが、ルルテがガリンを意識しすぎて緊張し、結果としてガリンが寝づらいのだ。そのくせ、ルルテ本人は昨日も今日も、あっけなく寝てしまう。結果、ガリンだけが取り残される形になるのだ。


 ガリンは、ルルテと寝るのが恥ずかしかったわけではないが、あれだけ凝視されると、正直寝にくかったのだ。そして、寝ている間にガリンが離れると、それはそれで不機嫌になるのだ。サラに訴えたが、取り合ってはもらえなかった。


『慣れろ』


 の一言だった。

 結局、ガリンは少しだけ眠った後、ジレと交代して夜番についた。

 ジレは多少退屈しているようであったが、ガリンにとってこの時間は、本当に大した時間ではなかった。

 火の明かりで木片に文様を刻んでいると、あっという間に時間が過ぎてしまうからだ。

 そして、そんなガリンが元力石を前に集中していると、ガリンの背後から、次の担当のサラが声をかけたのだ。


「こんな真夜中まで研究さね? 何が楽しいのやら……。」

「ああ、サラさん。いつもこんなものですよ。」


 サラがむっとした顔で言う。


「サラでいいって言ったさね。」

「ああ、そうでしたね。どうも、旅に出る前からですが、サラの知識には驚かされてばかりで・・・。自然と、師と話しているような気分になるんですよ。」


 ガリンが頭を掻く。


 焚き火の灯りのせいでガリンには見えなかったが、サラの頬がわずかに紅く染まった。


「そういえば、寝てる連中には、うちの正体は言ってないんだね。」

「もちろんですよ。私は、人の大切な秘密を勝手に話したりはしません。」


「ああ、助かるさね。ちょっと心苦しいところもあるけどね。」


 ガリンは曖昧に頷いた。

 そもそもガリンは他人の秘密や噂話に興味がない。

 だからこそ、当然のように口を閉ざしている。


 サラは少しだけ視線を逸らし、ためらいがちに尋ねた。


「と、ところで・・・。うちが変化(へんげ)した姿、今も覚えているのかい?」


「ええ、覚えていますよ。ラミア族に会ったことはありませんでしたが、非常に美しいと感じましたので印象がとても強く残っています。」


 サラの身体がびくりと震える。


「あ、あぁ・・・。は、初めて見たさね・・・。あの姿がそんなに強く印象に残ったのかい・・・?」


 ガリンは続ける。


「あんなに美しい女性に会ったのは初めてでした。」


 ・・・とどめの一撃だった。


「ば、馬鹿・・・お嬢ちゃんに聞かれたらどうするさね・・・。」


「ルルテに?いえ、聞かれても問題ありませんよ。実際にそう思っているのですから。聞かれたら、ルルテにも同じようにあなたの評価をします。」


「・・・。」


 ここまで言われると、さすがのサラも違和感を覚える。

 だが、褒め言葉の破壊力が強すぎて、思考が追いつかない。


 サラは珍しく、恥ずかしそうに顔を背けた。


「人前では言わないで欲しいさね・・・。」


 そう言って、手でガリンに、


 『あっちへ行け』


 と追い払うようにジェスチャーし、焚き火の前に座り込むのだった。

 ガリンは、サラが何に狼狽しているのか理解できなかったが、とりあえずルルテの待つテントへ向かった。


 焚き火の火は静かに揺れ、夜は深まっていく。

 サラは火の前で腕を組み、まだ熱の残る頬を冷ましながら、夜の気配に耳を澄ませた。


 旅の2日目の夜は、こうして静かに過ぎていった。


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