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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第二部 巡察編 第16章 旅の始まり
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旅のはじまり その6 見えない脅威


 まだ、朝の冷たい空気の中、一行は『旅の2日目』に向けて、準備を進めていくのだった。

 昨日と違うのは、


『誰かが自分たちを狙っているかもしれない』


 という事実が、昨日よりもずっと現実味を帯びてきたことを実感していたことだった。


 サラは、仲間たちがテントを畳み、風力車へ荷を積み込むのを確認すると、外套の襟を正し、静かに野営地の周囲へ歩み出た。

 同じ場所で夜を明かした商隊へ挨拶を行い、ついでに『護国の騎士団』という自分たちの傭兵団の名を控えめに告げる。

 旅の途上で出会う者たちに、


『自分たちは傭兵団として行動している。』

『装備などを見てもらい、そこそこの傭兵団であると予防線を張る。』


 といった印象を残すためだ。

 彼女なりの周到な布石であった。


 その頃、ガリンは風力車の陰に立ち、意伝石を掌に載せて意思力を注ぎ込んでいた。石の表面に淡い光が走り、遠く離れたレンへと繋がった。


『レン、聞こえますか。』

『おお、我が弟子か。無事に一日目を終えたようじゃな。』


『はい。王都から一日目の野営地で夜を過ごしました。傭兵であるサラの指示は的確でした。ルルテは少し疲れたようですが、問題なく乗り切れました。』

『ふむ。あの傭兵か。儂も直接話をしてみたが、かなり旅慣れておるようじゃからのう。お嬢ちゃんに関しては、少しきついくらいの方が大人しくなるじゃろうて。』


 意伝石の向こうで、レンの笑う顔が見えるようであった。

 ガリンは軽く息を整え、昨日発見した元力石について報告を始めた。


『それと・・・。風力車に、不審な元力石が仕込まれていました。意伝石の文様に似ており、会話を盗み聞くためのものと思われます。』

『ほう・・・。早いのう。やれやれ、厄介なことじゃな。』


 レンの声は落ち着いていたが、その奥に潜む緊張は隠しきれていなかった。


『狙いは2つじゃろう。まずはルルテ姫。王女としての価値は計り知れん。そしてもう1つは、おぬしじゃろうな、ガリン。』

『私、ですか。』


『運用が始まっている通行手形の技術体系。その『要』は、おぬしの開発した定着液じゃからな。

 それを欲さない文化圏はないじゃろうて・・・。油断は禁物じゃぞ。ハサルの話によれば、やはり、晶角士であるおぬしを護士としてあてるのは異例じゃからな。おぬしが目を付けられておるということじゃな。』


 ガリンは静かに頷いた。


『・・・承知しました。肝に銘じます。』


 急速に、レンの意思が遠のく。

 ガリンは意伝石をしまい、仲間たちのもとへ戻るのだった。


 準備が整うと、一行は昨日と同じ隊列で街道を進み始めた。次の町セルナまでは、まだ2日の行程である。


 まだ人目の多い地域であるため、風力車が自動で追尾することは出来るだけ伏せている。今日も荷台には人を乗せることにしていた。

 昨日はサラが乗ったが、今日はルルテが腰を下ろした。

 出発前の訓練で体力を鍛えたとはいえ、やはり彼女が最も疲労を見せていたからである。


 サラは歩きながら、ジレへ短く告げた。


「ジレ、周囲の警戒を怠らないように。昨日の件もある。気を張っておくさね。」

「はい、承知しました。」


 次にガリンへ向き直る。


「ガリン、防護結界は張ったまま進むさね。少し目立つが、今日は必要さね。」

「了解しました。」


 その日は特に問題もなく過ぎ、夕刻には次の野営地へ到着した。


 サラは荷を降ろしながら、簡潔に指示を出す。


「昨日と同じように。」


 それだけで、皆は自らの役割を理解し、動き始めた。

 レイレイは地ならし、ジレとストレバウスはテントと火の準備、ガリンは結界の設置だ。

 皆、なんとなく疲れが顔に見えていたが、レイレイだけは違った。

 慣れない野営をし、一日中歩き、そして一番体力を使う地ならしをしているにも関わらず元気いっぱいだった。

 やはり、半分とはいえ竜の遺伝子はかなり力があるようだ。


 そんな中、ルルテは荷台に座りながら、少しだけ頬を染めてサラに尋ねた。


「今日も・・・ガリンと同じテントなのか。」


 サラは振り返りもせず、淡々と答える。


「当然さね。婚約者なんだろう。諦めて一緒に寝るさね。」

「そ、そなた・・・!そ、それは設定であって・・・。いや、設定ではなくて・・・。」


 言葉とは裏腹に、ルルテの耳は赤く染まっていた。

 実際には、政治的配慮のもと、内々で婚約関係にある。だが王の許可も曖昧で、公表はできない。その曖昧さが、彼女の心を余計に揺らしていたのだ。

 そしてもう1つ。昨晩は小さなテントの中で、一晩中一緒にいて緊張して寝られなかった。それなのに、ガリンはすぐに寝てしまった。これもかなり悔しかった。

 こんな情緒がない状態で手を出してほしい訳ではなかったが、無視されるのも嫌だったのだ。


 野営の準備が整い始めると、サラは外套の裾を払って立ち上がり、周囲の野営者へ挨拶に向かった。

 今日は、若旦那としての立ち居振る舞いを学ばせるため、ガリンを伴う。


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