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マレーン・サーガ 祝1.8万PV達成  作者: いのそらん
第4章 引っ越し
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引っ越し その2 幼き日のガリン


 レンがガリンを養子にしたのは、ガリンが7歳の時であった。この7歳という年齢すらも、身体の成長の程度からレンが勝手に定めたものであった。レンが王国周辺の先史の遺跡を調査していたとき、いつのまにか調査隊のキャンプをうろついていたのがガリンであったからだ。いろいろ尋ねても、自分の名前すら分からない様子であった。不思議なのは、ある程度の文法や単語がマレーンのものと近く、おおむね言葉が通じていたことであった。


 調査の間、ガリンは調査隊と共に生活を送っていた。調査が終わる時、レンはガリンをそこに捨て置くことが出来なかった。子を得ないまま齢を重ねてしまったレンは、学院に連れ帰ると『ガリエタローング』と名づけ、齢を7歳とした。そして養子に迎えた。


 つまり、純粋な意味での哀れみだけではなかったのも事実であった。マレーン人は基本的に白髪であり、黒い瞳は滅多にいない。しかし遺跡で出会った子供は黒髪で、黒い瞳を持っていた。その点において、レンは強い興味を抱いていた。


 そして今、レンがガリンを養子に迎えてから既に17年の歳月が流れている。あの時の少年は、最年少の晶角士として立派に成人していた。


 ガリンは養子となった後、学院での生活を送っていた。意伝石の助けもあり、すぐに言葉や文字の問題はなくなった。レン自身の公務が忙しかったこともあり、成人するまでのガリンは学院内で自由きままに生活していた。


 ガリンの1日は、学院内にある様々な知識を記録した記録石を覗き込んで過ぎていくのが基本であった。レンが自ら学業を教えたのはずっと後になってからであったが、自分で勉強していたことが功を奏したのか、レンが教育を始めた頃には初等教育の内容について言えば、実際に教えることはあまりなかった。


 文様術についても同様で、初めてガリンがその才を露わにした時の出来事は、レンにとって鮮烈であり、今でもはっきりと思い出すことができるものであった。


 あの時レンが研究室に戻ると、ガリンはいくつかの文様術が記された記録石を床に広げていた。レンが戻ったのを知ったガリンは、目を輝かせながら、


「この文様術は、とてもわかりやすく体系的で、素晴らしいものですね。」


 と急に語り始めた。レンは、初等教育さえ終えていない子が文様術のことなど分かるはずがないと、それを学業に対する軽口と捉え、床に記録石を広げたことをたしなめようとした。


「ガリンよ。これはお主にはまだ早い学問なのだ。さぁ、自分で散らかしたものは自分で片付けねばならんぞ。そら、始めた、始めた。」


 あまりの散らかりように呆れたレンは、多少声に迫力を込めて叱った。しかしガリンは、


「いえ、そんなことはありません。この文様術は私のような子供にでも分かり易い、とてもよく出来たものなのです。」


 と反論した。普段からガリンは嘘を言ったり、不必要なことを口にする子供ではないことをレンはよく知っていた。そのため、反論したガリンの目を見ているうちに、どう理解したのかを尋ねてみたくなった。


「わかった。それでは私も研究者として、お前に1つ一緒に考えて欲しいことがあるのだが、付きあってくれるか?」


 そう語りかけると、ガリンは一層目を輝かせ、


「もちろんです。お父さん・・・。いえ、先生、是非。」


 と真剣な目を向けた。レンは先生と呼ばれたことに多少の気恥ずかしさを感じたが、咳払いを1つしてから、自分の机の上にあったランタンに手をのせた。


「ガリン、これは街頭などに使われている基本的な文様術を用いたランタン、つまり卓上や携帯用の発光装置なのだが・・・。」


 そう言いながら、小さなランタンをガリンの目の前の床に置いた。


「この真中にある石がエネルギーを光に変換する元力石だ。そして、この元力石に光の元となるエネルギーを与えるためには、そのエネルギーを集めるためのもう1つの元力石が必要になる。どんな元力石や文様が必要だと思う?」


 レンは尋ねながらランタンの中の元力石を指差した。


 一般的に元力石のエネルギーは人の意思の放射によって蓄えられる。蓄えられたエネルギーを光に変換する元力石の文様は比較的単純だが、人の意思放射をエネルギーとして蓄積するためには、


・意思放射を受け取るための文様

・意思放射されたエネルギーを蓄積するための文様

・蓄積されたエネルギーを光に変換する元力石に一定量で放射しなおすための文様


 つまり、最低でも3つの文様が必要になる。この3つを複合させた文様は、それぞれは基本的なものであるとはいえ、合わされば既に高等文様に属する。准晶角士が複製に手間をかける、いわゆる『パターンの多い元力石』に属するものである。実際には、初等教育すら満足に受けていない子供に尋ねるような質問ではなかった。


『いささか意地悪な質問であった:・・・。』


 レン自身、内心ではそう思わないわけでもなかった。しかしレンが期待していたのは正しい回答ではなく、たとえ見当はずれであっても、ガリンが独力で導き出した回答そのものであった。少なくとも質問をした時点での期待はその程度であった。もちろん子供に期待するには過度ではあったが、それでも期待したくなるほど賢い子供であると、レンは素直に評価していた。


全体に、プロットをそのまま肉付けしたような拙い部分が多かったため、話自体を加筆修正しました。2025.10.29 誤字脱字、語尾の修正。2026.3.11

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