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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第15章 王都出発
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王都出発 その29 訓練開始!

 王が、ゆっくりと頷くと、ナタルとリアが、急襲のための姿勢をとった。


 先頭には斥候のジレ、軽やかな足取りで短剣を腰に揺らしながら周囲を警戒しているようだった。

 女官としてのジレしかしらない王たちは、これにも感嘆の声をあげるのだった。


 中衛には、軽戦士サラと重戦士の男が並ぶんでいた。

 サラはショートソードを肩に担ぎ、ストレバウスはロングソードを背に、無言で歩調を合わせていた。


 後衛にはガリンとルルテ。二人の周囲には淡い光の膜が揺らめき、魔法障壁が静かに展開されている。

 そして最後尾、しんがりを務めるのは剣士レイレイ。彼女のすぐ後ろには貨車が少しだけ軋む音を立てながらついてきていた。


 その瞬間だった。


「敵!」


 レイレイが振り返りざまに叫んだ。

 サラが教えた通りである。


 訓練場の端から、野盗に扮した2人の剣士、ナタルとリアが疾走してくる。2人ともかなりの技量を持つ軍角士であり、訓練とはいえ手加減をする様子はないようである。顔は、真剣そのものだった。


 レイレイは即座に剣を抜き、風力車を盾にした。

 これも、サラが教えた通りで、レイレイの動きはここまでは順調だった。


 ここで、中衛として配置されている、サラが後方に応援に駆け付ける。

 ストレバウスもロングソードを引き抜き、盾を構え、ルルテとガリンの前に陣取る。


 ナタルがレイレイに斬りかかる。

 剣と剣とぶつかる音が訓練場に響き、レイレイは持ち前の力を発揮して、ナタルの剣をはじき返す。

 ナタルがレイレイと剣を交えるのはこれが初めてであった。

 人をはるかに凌駕した力で剣をはじかれ、驚いた表情を浮かべた。

 リアは、ナタルがレイレイを押し込めないとみると、すぐに後方へ回り込もうとするが・・・。


「させないさね!」


 サラが横から割り込み、リアの剣を弾いた。

 軽戦士らしい素早い動きで、リアの足運びを乱す。サラも、身軽な方であるが、サラの動きはその1つ上をいった。身体の大きさはサラの方が少しだけ大柄なのにも関わらず、サラの動きは速い。


 一方、レイレイの重い一撃を受け止めたナタルは、狙いを後衛であるガリンとルルテに変えた。

 レイレイの剣を受け流すと、そのまま剣を振り払い、身体の位置を入れ替える。


「盾役、まもってやんな!」


 サラが叫ぶ。

 サラは、この戦闘中の、お互いの声掛けをとても大切だと教えていた。

 決して戦力的には負けていなくても、お互いの動きを把握していないと動きに無駄がでるからだ。

 本来は、アイコンタクトなどでお互いの動きを把握するのだが、この面子では無理だ。

 声を掛けるというのは、相手にもこちらの動きが筒抜けになってしまうからだ。それでも、味方の動きを把握できないのは、もっとも危険だと判断しての声掛けである。


 ナタルは盾役である、ストレバウスの圧に押され、じりじりと後退した。

 後衛のガリンは、とにかく結界の強度を確認してルルテを守ることに専念していた。


「結界はまだ大丈夫ですよ。無理をしないでください。」


 ガリンも情報と報告を口にする。

 緊迫した戦闘中に、極めて安穏な調子の声に、攻めているナタルとリアが苦笑いを浮かべた。


 ルルテは、緊張しながらも頷き、結界の内側で状況を見守っていた。

 特にルルテには何もすることがないのだが、今回の訓練での敗北条件は、ルルテが拉致されることである。自分が敵の目標だと考えると緊張を隠せなかったのだ。


 ナタルは、人外の力を持つレイレイと硬化に特化して元力石に意思を注いでいるストレバウスの守りを破れない。


 リアは焦りはじめ、結界を破ろうと魔法障壁へ斬りつけた。

 事前の打ち合わせでは、今回の結界は、武器を破壊するような類の結界ではなく、単なる防御の結界としていた。防御結界の破り方は単純だ。一定以上のダメージを与えればいいのだ。


 リアは、打撃力の元力石に、意思力を全部振りして、力いっぱい結界を何度も切りつける。

 その度に結界の光の膜が煌めき、攻撃を弾いた。


「それは悪手だよ、リア!」


 サラが素早く踏み込み、リアの剣を跳ね上げた。

 サラは、人に変化しているがラミアである。純粋な人とは基礎的な力が違う。どちらかというとレイレイ寄りだ。

 リアはバランスを崩してしまい、後退するしかなかった。


 それを見たナタルが、レイレイとストレバウスの二枚壁を前にして苦笑する。


「くっ、こりゃ分が悪いな・・・。」


 ナタルが、ぼやく。


「坊や。訓練とはいえ、簡単には通さないさね!」


 リアが下がり、フリーになった、サラがナタルに攻撃を仕掛ける。

 サラは鋭く踏み込み、ナタルの剣を弾く。


「ストレバウス、女剣士が引きました。他の伏兵は見当たりません。男剣士をお願いします。」


 少し離れたところから、全体の状況を観察していた、ジレが声をあげた。

 斥候は、純粋な戦闘職ではない。隊列としての一番前に位置している。後方から急襲された場合は、まずは伏兵の索敵と、戦闘状況の把握に努めることになる。

 サラがリアに切り込み、戦線が下がったことを把握したジレは、ここで一気に畳みかけるべきだとはんだんをして声をあげたのだ。


 それを聞いてストレバウスが、一歩踏み込み、ロングソードの切っ先をナタルの喉元へ向けた。


「参った・・・。」


 ナタルが飛び退く。リアもナタルを押さえられて、身動きが取れない。

 ナタルとリアは、2人は目配せを交わすと、


「撤退する! 今日のところはここまでだ!」

「了解したわ!」


 2人は訓練場の出口へ駆け出し、砂埃を上げながら退いていった。

 ストレバウスが剣を下ろし、深く息を吐く。


「ふぅ・・・。こういう想定での訓練は初めてでした。後方からの急襲というのは厄介ですね。」


 サラが笑いながら肩をすくめる。


「うむ。見事である。ガリンも我も無事あるぞ。」


 ルルテが、結界を解くガリンが横目に、鷹揚に頷く。

 サラは、


「連携は悪くなかったさね。声掛けもできていた。次はもっと早く反応できるようにしたいさね」


 と、批評を加えた。

 この言葉で、パーティの全員が胸を撫で下ろし、ほっとした表情を浮かべた。


 隊列を組みなおすところまでが、訓練である。

 6人は、再び隊列を組みなおし、訓練は終了となった。

 訓練としては、現時点では、まずますの結果であっただろう。


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