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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第15章 王都出発
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王都出発 その27 奇妙なお願いと風力車


 奇妙なお願いとは、旅の行程の一番最初、王都からエゾラまでの途中で、ソマレルクク大山脈のすそ野にある古代遺跡に立ち寄ってほしいというものだった。

 なんでも、ガリンが子供の頃に保護された遺跡だという。どうしても回収したいものがあるというのだ。

 まだガリンにも話をしていないらしく、サラは返答に困っていた。ただ、その場所に行けば、自身がレイレイにぶつけた質問の一部が分かるとも、レイレイは説明していた。

 そして、その遺跡に立ち寄ることは、旅の安全性を飛躍的にあげることが可能だとも太鼓判を押していたのだ。


 どちらにしても、出発まではもう30日を切っていた。防具に慣れる訓練を始めなければならなかった。

 防具は動きやすいように作ってはあるが、やはり着ていると着ていないではまったく違うからだ。


 サラはまず20日ほど訓練に費やし、そして最後の10日で物資の購入にあてた。同時に、街道を進む間しばらくお世話になる風力車の納品がされる。

 これはガリンが設計し、学院の研究機関で作ったものらしい。それも目で見て、運用を考えなければならない。

 荷物はガリンがいれば軽減の文様術でなんとかなる。ただし実際には、そのガリンとルルテが旅の間、この風力車のお世話になるに決まっているのだ。なにせ、この2人は体力もない。


 サラの苦労は、まだまだ続くのであった。


 サラがまず風力車を確認しようとしたのには理由がある。

 もちろんガリンやルルテの体力的な問題もそうなのだが、もう1つは隊列を決めるためであった。


 隊列を決めるということは、役割を決めるということでもある。これは旅において極めて重要だ。


 今回の旅の面子は、傭兵団として『団』と言っているが、あくまでもガリン、ルルテ、レイレイ、ジレ、ストレバウスにサラを加えた6人である。

 『団』というよりは1パーティと呼んだ方が良いだろう。

 サラはこの6人に加えて、風力車を移動ユニットとして捉えており、合計6人+1台のパーティーで隊列を組もうと考えていた。


 今回の風力車は、ガリンの説明によると、あくまでも荷を運ぶための荷車であると聞いていたからだ。

 馬車のように乗ることもできるが、あくまでも旅の物資や、疲れた時に少しだけ利用する。

 あるいは野営のときに幌を張って、サラや女性陣に寝てもらうために利用するものであった。


 大きさとしては通常の幌馬車を少し小さくしたぐらいで、前の操舵部と積載部の2つに分かれた連結馬車タイプだった。


 操舵部とは言っても、どうしてもというときに手動で方向を変えるためのハンドルがついているだけの簡単な構造だった。

 また積載部には、その後部に設置された、風力を発生させる元力石からの風を受ける大きな帆がついていた。

 この帆は折り畳み式で、風を受ける機能以外にも、折りたたんで幌にして雨を避けることも可能としていた。


 風力車は、そもそも先史時代には存在しなかった技術によって動く移動手段であった。

 これは、いくら元力石で発生させた風を帆にあてても、車自体を動かすことが物理的に不可能であるからだ。


 確かに、元力石と文様術を使った送風機から出た風が帆にぶつかり、風を受け止める際に帆には前向きの力が発生する。

 しかし同時に、風を前方の帆に送り出す際に、送風機自体には後ろ向きの反作用の力が発生してしまう。

送風機で発生する『後ろ向きの力』と、帆が受ける『前向きの力』がほぼ同じ大きさになるため、風力車全体(車体+送風機+帆)では力が相殺されてしまい、動かないのだ。


 しかし、このマレーン文明における風力車は、この問題を文様術で解決している。

 まず文様術により、車輪が回るための摩擦力を限りなく小さいものにしている。

 そして送風機から送られる風は微風となっており、反作用の力がほとんどないのだ。


 しかし、その微風が帆に届いた時、今度は帆全体を覆う文様術の効果で、最大700倍まで風を受けた帆の受け止める力を増幅することができる。

 そして、それを『前向きの力』として推進するのだ。結果、風力車は前に進んでいくのである。


 逆に止まる時には、帆が受ける力と送風機自体が生み出す反作用の力を拮抗させて停止させる形となっていた。

 元力石への意思力の補充と修理が難しいため、平民の中では昆虫や動物を利用した移動手段、荷運び手段が中心となるのもしょうがない話だった。


 また、このガリンが設計した特注の風力車がなによりも特徴的なのは、前の操舵部分には人が座る部分がないところであろう。

 一応、後部の積載部の頭の部分に座れるようにはなっており、足元にはフットレストもついているが、基本人が操舵をする前提となっていない。


 これは操舵部の前面に元力石が設置されており、対となる元力石を持っている人物についていくように自動的に操舵をしてくれるからだ。


 また風力車は、常に風を送る元力石に意思力を補充しなければならず、継続した充填作業が必要になってしまうのが欠点だった。

 しかしこの風力車は、帆の支柱の中心に設置された羽根車を2基回すことによって、風という流体が持つエネルギーを羽根車を介して回転運動に変換してくれるのだ。

 その回転運動により生み出されたエネルギーを意思力として、風力を発生させている元力石に補充することが可能だった。

 以前ガリンがレンに提案して驚かせた街灯の理論と同じ、自家発電のような機構だ。


 ガリンはこれを『タービン』と呼称していた。

 また同時に、大気中に漂っている形のない意思エネルギーを収集する仕組みも兼ね備えており、ほとんど無限に走ることができる代物だった。


 さらにサラに指摘された部分を踏まえ、組み立て式にしており、多少かさばるが、持ち運びができるようにもしたのだった。

 操舵部、積載部、帆の部分と3つに分解でき、持ち運ぶことが可能だった。

 これであれば、軽量化の元力石を上手く利用すれば、一番重い積載部をストレバウス、他の2つをガリン、サラが分担して担げば、容易に持ち運べるようにもなったのだ。


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