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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第15章 王都出発
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王都出発 その26 防具の脱着と羞恥


 まずは、防具の脱着からだ。

 理想は、1人で装備することが出来ることだが、サラはこれは早々に諦めるのだった。

まず、レイレイは覚醒していないと、まだまだ幼い。

 発語も増え、ある程度の受け答えも出来るようにはなっていたが、それでもまだ精神は肉体相応のものには追いついていなかった。

 また、もともとのレイレイの意識体は、戦闘訓練にはほとんど興味がなく、頭冠を装着してもなかなか出てきてくれないのだ。

 レイレイ曰くは、覚醒していない時のレイレイも同じ人格であり、決して二重人格ではないとのこと。だが、覚醒していない時のレイレイは、やんちゃで、むしろ嬉々として戦闘訓練に参加しているのだ。正直、同じ人格とは思えないありさまだった。

 ガリンは、この現象に年齢退行という理屈で認識をしているようだった。

 確かに、どんなに冷静で落ち着いた人間でも、子供の頃は多少はわがままで活動的であることが多い。しかし、これほど正反対になるだろうか。まあ、今はこれを考えてもしょうがないのだが、サラはレイレイを『竜鱗を持つ者』として捉えているために、実際、どっちのレイレイに尽くすべきなのかが判断できず、常に悩んでいるのだった。

 どちらにせよ、大人のレイレイは戦闘に興味がない。そして、子供のレイレイは幼すぎてすべてを理解するのは難しい状態だ。

 また、ルルテにも問題があった。

 最初のうちは、むしろ『自分でやる』と息巻いていたのに、胸当てを着ける時点で、後ろで背中の紐を結ぶことができず、早々諦めてしまったのだ。

 戦闘時に装備の革ひもが緩むのは致命傷になりかねない。グリーヴ(足鎧)ぐらいは、自分で装備できるようになってほしかった。ただ、履くことは出来ても、しっかりと固定することが出来なかった。

 これもあり、レイレイとルルテに関しては、ジレや自分が手伝うしかないという結論となった。


 ジレは、さすがに器用で、あっという間に、スムーズに脱着ができるようになった。

 ストレバウスは、身体が大柄であることもあり、多少時間は掛かったが、やはり一人で脱着が可能となった。

 整備に関しては、これは鎧の部位ごとに物理的に時間がかかる。そのため、どうしても自分の装備の手入れは自分でしてもらうことを覚えてもらった。全員で油をすり込んだり、(にかわ)で補強したりという作業は、思ったより楽しかったらしく、ルルテもすぐに覚えることができたのだった。

 また、レイレイは、鎧の整備に関しては時々大人のレイレイが出来て補助をしてくれているらしく、なんとかついてこれているようであった。


 この皮鎧の脱着と整備を覚える間に、ガリンがサラに指定された文様を彫った元力石を、それぞれの鎧の目立たない場所に埋め込む作業も同時並行で進めていた。

 ルルテと、ジレ、自分が『軽量化』。ストレバウスの盾に『硬化』である。


 実は、この訓練で、一番サラが苦労したのが、『羞恥心』の問題であった。

 庭で、皆で集まって皮鎧の装着の練習をしようとすると、まず、ジレが嫌がったのだ。確かに、鎧を装着するためには、どうしても今着ているものをほとんど脱がなければならない。鎧の下に着る下着も、鎧に合わせた防具の一部である。特に女の弱点は胸だ。出っ張っている分、邪魔なのだ。特に、ジレの胸は大きい。それに伴い、鎧のその部分も大きく膨らんでいた。鎧を着るためには、胸が動かないように胸帯で固定する必要もある。ジレは、みんなの前で限りなく裸になるのを嫌がったのだ。


 逆にサラはそんな羞恥心は皆無だった。

 男ばかりの傭兵団で、50年も傭兵をやっていたのだ。そんなことを気にしていたら、生活そのものができない。

 今回は、傭兵団として戦闘ばかりをするわけではなく、巡察の旅がその目的となる。しかし、街を出て、外を旅をするということには変わりない。

 野営地で、夜を過ごすときは、周囲には魔獣もいるし、他の商隊や、場合によっては盗賊団が一緒に野営をしている可能性すらあるのだ。裸になる瞬間は、命の危険が最も高い。

 だからこそ、誰かが近くにいてもらわなければならない。緊急の場合はそうではないだろうが、基本は、警戒役が必要なのだ。こんなときに、恥ずかしいなどと言ってれば、それは弱点となる。

 魔獣はそんなことはしないが、相手が知能がある存在なら、そのぐらいは間違いなくやってくる。これはジレには我慢してもらうしかなかった。

 最終的にはジレも覚悟を決め、端の方でこそこそと着替える程度にはなってくれた。


 逆にルルテは、人前で裸になることに忌避感がないため、まったく物おじせず服を脱ぎ練習をはじめる。レイレイなど、裸で走り回っている。


 今度は、ガリンとストレバウスが困ったのだ。

 視線をずらしていれば目に入らないジレと違い、この2人は平気で近づいてくるのだ。


 ストレバウスは妻子があり多少の慣れはあるかもしれないが、ガリンは違う。しかし、サラはガリンは自分が服を脱いだ時に、一切視線をそらさず、『美しい』とまで言った男である。そんな他人の裸など、まったく気にしないのだろうと、最初は思っていたのだ。

 しかし、ルルテが服を脱ぐと、途端に使い物にならないぐらい、情けない状態になる。

 レイレイに対しても同じである。


 それなのに、ルルテやレイレイの使う武器や防具の元力石の調整のときには、本人たちが目の前で服を脱いで渡しても、まったく動じることがない。むしろ、身体の駆動域などを確かめるために、実際にほとんど裸で立っているルルテに触っても、眉一つ動かさないのだ。サラには、それが、実に奇妙に見えた。

 サラは、一度、覚醒したレイレイにガリンの変わったところを尋ねてみたことがあったが、答えはいつも同じで、


『昔からそうだった。』


 であった。


『昔のガリンとは、いつのガリンのことなのだろうか。』


 サラは、これも疑問だった。

 確かに、レイレイは、もともと学院の地下書庫を漂っていた意識体だ。ガリンは、小さい頃から学院のあの、宮廷晶角士の元で育ってきている。特に地下書庫は、ガリンのお気に入りの場所だったと言うことだ。意識体としても、時々覚醒していたレイレイが、ガリンを見知っていてもおかしくはない。


 ただ、それを聞いてみると、


『いずれ分かる』


 とはぐらかされてしまうのだ。

 それに、レイレイからはもう1つ奇妙なお願いをされていたのだった。


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