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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第15章 王都出発
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王都出発 その21 レイレイの変化


ガリンは、後日、セルから衣服を選ぶ行為について教えてもらって、ようやくルルテの叱責の意味を完全に理解したのだった。この事件により、ガリンは、貴族の婚約や夫婦間の取り決めについても、早目に勉強をしなければと、決意を固めるのであった。


その後、それとなくルルテに、サラのことは誤解で、『側室などあり得ない』と、言うことを伝えた。しかし、決めるのは自分だとにべもなく切り捨てられてしまい、途方に暮れたのであった。


色々なことがありながらも、旅程が決まり、傭兵団への登録も終わった。


ここ最近は、ストレバウスの訓練だけではなく、時々サラが訓練に混じるようになっていた。

サラは、さすがに長年傭兵していただけあって、対人戦を基本とする衛士では教えられないようなことも、ルルテやジレ、そしてレイレイに教えることが出来たのだ。


普段の傭兵団の仕事は、基本、商人たちを中心とした商団の護衛、要人の護衛、それから野良の魔獣などの討伐である。場合によっては、都市の周辺にある畑を荒らす野生動物、猪や狼、鹿などの駆除も行う。護衛任務であれば、当然、盗賊などと戦うこともあり、これは対人戦となる。それ以外は、基本、魔獣や動物との戦いがほとんどであるのだ。その一部は、未開の地から漏れ出てきたキメラや亜人も含まれていた。サラは人だけではなく、魔獣や動物との戦い方にも熟知していたのだ。


それ以外にも、サラが教えることができることはたくさんあった。

野営の仕方や、荷造りの仕方である。これも、軍隊で行う野営や荷造りとはまったく違った。


軍隊は、補給隊がおり、それらの部隊が物資を輸送する。しかし、今回の巡察の旅は違う。

荷物も自分で持たなければならないのだ。常に荷車があるわけでもない。できるだけ現地調達を旨とし、手荷物は最低限にしなければならない。

また、単に荷物を鞄に詰めればいいという訳でもない。

必要なものは、出しやすく。使う頻度少ないものは、それに合わせて梱包するのだ。

衣服も最低限しか持って行くことは出来ないだろう。


ガリンは、衣服も含めて、簡易的な光浴結界で洗浄すればよいと言っているが、普通の旅には、そんな便利なものはないのだ。サラは、ガリンが提案してくる、一般的ではない方法はすべて排除したうえで、旅の現実を皆に教えていったのだ。


もちろん、実際の旅ではガリンの力を大いに使う予定ではいたが、それでは、万が一ガリンと引き離されたときに、どうにもならなくなってしまうのである。

サラは、常に最悪の状態を想定して、計画を立てていたのだ。


ある意味で、サラ以外の温室育ちの面々は、戦闘訓練より、サラが教えてくれる旅そのものの訓練に苦労していたのだ。

それでも、冬の寒さが一番きつい時期の終わりが見えてくるころには、それぞれは、かなり旅の知識を吸収していた。


また、レイレイに言われたように、完全に機能するようになった頭冠を使って、レイレイの本来の意識を呼び覚ます訓練も重ねていた。

こちらは、なかなか上手くいっていなかったが、それでも、3度ほどレイレイを覚醒させることができていた。レイレイは、覚醒するとすぐに自身の身体の調整についてガリンに詳細を告げてくれていた。

逆にそれ以外は、ガリンが何を聞いても、


『禁則事項だ。』


と言って、詳しく教えてはくれなかった。

ただ、たった1つだけ、レイレイがガリンに伝えていたのは、


『旅の途中で、ガリンが子供の頃発見された遺跡に、立ち寄るように。』


というものだけだった。

理由は詳しく教えてくれなかったが、


『今後のガリンにとって、己を取り戻すために必要なのだ。』


との説明を付け加えてくれていた。

むしろ、自身の身体の竜としての力を引き出すことに強い関心を持っており、ガリンにそのための生体調整の細かい情報を伝え、生力石の調整に時間を費やしていたのだ。

実際に、レイレイが覚醒をしても、それはほんの数分であり、生力石の調整は素のレイレイの時に行わなければならず、かなり苦労をしていたのではあるが。


それでも、自身の身体は詳細に分析し、生体情報や竜としてのホルモン活性化などの方向性を伝えてくれていたので、大いに役にはたっていた。

レイレイは、ホルモンを調整することにより、竜としての特定の器官や細胞を刺激することができるとしていた。ホルモンは、この世界でも成長や生殖、代謝などの生理的な機能を調節する重要な役割を果たしており、特に身体を正常に保つために精密に生力石の中で情報として管理をしている。詳しいその化学的根拠までは、現文明では解明されていなかったが、健康体とする基本情報を丸ごと生体情報として生力石に記録し、異常があった場合は、光浴設備を通して元に戻すことを繰り替えているのだ。

それが、いわゆる光浴の大きな効用である。

光浴設備には、衣服などの情報も登録するための元力石が配されており、それに記憶された衣服であれば、ほつれなどは直すことができないが、汚れや汚染された物質などを分解して取り除くことができた。


当然、マレーン文化にも酒精があるため、飲みすぎれば酔う。

酔っている状態とは、アルコールが脳に到達し、神経細胞に作用して麻痺を引き起こすことで生じる。通常であれば、アルコールは胃や小腸で吸収され、肝臓で分解され、最終的に血液中に溶け込み、全身を巡る。肝臓で分解されたアルコールは、アセトアルデヒドに変換され、さらに酢酸に分解され、無害な酢酸が血液中に溶け込み、炭酸ガスや水に変化していくのだ。


光浴設備を使った場合は、この分解作業を、血中にアルコールがない状態の身体の基本情報と、血中にアルコールが一定濃度存在している時を比較し、差異となっている血中アルコールを一気に分解してしまうのだ。分解された後は、通常の場合と同じで、無害なものとして体に吸収され、尿として排出をする。


光浴設備は、小さな傷であれば、生きている細胞のホルモンを刺激することによって細胞分裂の高速化を促し、治してしまうこともできる。もちろん、簡単に再生が不可能な水準での傷は、光浴設備は治すことはできない。

衣服を修復できないのは、衣服の繊維の細胞が既に死んでいるからである。


結果、こうやってレイレイの生体調整を繰り返すことによって、レイレイの身体はこの10日ほどで、10歳程度まで成長を遂げていた。

それに合わせて、身体能力、特に身体の筋繊維が、通常の人の物と比べてかなり発達していった。

細い筋肉繊維であることから、見た目が筋肉質になったわけではないが、ストレバウスによると、7歳の時の力と比べて3倍程度の力を発揮することができるらしい。

また、小さな尻尾と小さな皮膜のついた羽も、どうやってかは、わからないが、身体の中に収納できるようになったとのことだった。

ただ、爪と角は隠すことはできないようである。また、鱗もそのままであった。


むしろ爪は、意思により鋭く尖らせることが出来るようであり、樹液を固めた軽鎧ぐらいであれば、爪だけで貫くこともできるようであった。


レイレイの意識体は、まず自身の保身を優先したようである。

爪は、防具としてのグローブで、角は髪の毛を耳の上でまとめれば隠すことができるが、尻尾と羽は隠しにくい。だからこそ、部分的に収納できるように調整したのだろう。もともと竜族の人化とは、完全に人と同じ容姿になるらしいので、尻尾も羽もないのだろう。


また、自身の戦闘力も底上げをしたかったのだという。

覚醒したときの本人曰く、ガリンを守るためであるとのこと。

これに関しては、レイレイは、


『貴族というものをガリンは知らなすぎる。』


と言っており、これにはルルテも同意をしていた。

ガリンは、多くの貴族にとって邪魔な存在なのだというのだ。


まあ、ルルテの傍におり、内々では生涯の片翼とされている。

それだけでなく、男爵で、比較的大きなララスという所領も得ているのだ。

目の上のたんこぶだとルルテは表現していた。


ガリン自身には、自覚はなかったが、エラン公爵の息子もガリンをよく思っていないらしいとハサルからは忠告を受けていた。


こうやって、着実に、旅の準備を進んでいった。

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