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マレーン・サーガ 祝1.6万PV達成  作者: いのそらん
第15章 王都出発
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王都出発 その21 叱責の理由

セルも、はっとして息をのんだが、そのままその場で2人を見つめていた。

セルは、ルルテのこの叱責の理由を知っていたからだ。

だからこそ、着替えるように勧めたのだが・・・、遅かったのだ。


「な、なにを・・・」


ガリンがうめくように声を漏らした。


「なにを?ではないわ!たわけ者が。」

「・・・。」


ガリンは無言でルルテを見つめる。


「そなたは、我が婚約者であるな?」

「内々では、そのような話になっていますね。」


「内々ではない。王が仮にだとしても認めているのだ。口外できぬだけで、正式なものだ。」


ガリンが、助けを求めるようにセルに視線を送ると、彼女は必死に頷いていた。


「は、はい。そうですね。」


ガリンもそう答えるしかない。


「その婚約者がいる貴族の男性が、他の女に服を選ばせるとは何事だ。婚儀を交わす前から、別の女に懸想しておるのか?」

「はぁ?」


ルルテの語気が、一層強くなる。


「はぁ?ではない!」

「はい。」


ルルテが、頷く。


「うむ。どうせそなたの事だ。貴族の婚姻関係など興味はないのだろうが、貴族の男性が、衆目のある中で女性に服を選ばせるのは、そういう関係であることを公的に認めるときだけなのだ。」

「!?」


ガリンが、驚いたように動きを止めた。


「うむ。ようやくわかったようだな。そなたは、サラという女を側室として認めたということだ。」

「ま、まさか。そんな横暴な。」


ガリンが、否定をする。


「そういうことなのだ。まあ、サラも知らなかっただろうが、我は知っておるのだ。以後、サラの扱いについては、考えることとしよう。」

「いえ。それは・・・。」


「姫様。」


セルが、横から口を挟む。


「なんだ。セル。何かを言う許しを与えたつもりはないぞ。」


ルルテがぎろりとセルを睨みつける。

セルは、申し訳なさそうに頭を下げる。


「しかし、姫様。貴族の男性が、一人の女官も付けずに城下に降りること自体が問題なのです。私が同行すればこようなことは・・・。」

「セル。おぬしは私付きの女官ではないか。なぜおぬしがガリンに付き添うのだ。」


再び、威嚇するようにルルテがセルに言葉を投げる。


「いえ。そもそもイクスレンザ(レンの正式な名前)様からは、ガリン殿にも女官を付けるべきであると助言をいただいていたではありませんか?」

「そ、それはそうだが・・。」


ルルテが、素直に頷く。


「それを、女官などいらぬと言って無下にしたのは姫様でございますよ。しかも、ジレと私で間に合っていると。お忘れですか?」


「覚えておるわ。だからなんだ?」

「その結果起きた、事故なのです。」


「事故と・・・。」

「事故です。」


セルがきっぱりと断言した。


「わかった。そのことは責めぬこととしよう。また、今ではないが、旅を通じてサラという傭兵を見定め、側室として認めるかどうかは別の話だ。このたわけは、外で服を選ばせたのだ。貴族は、たとえ知らなかったとしても、貴族としての責任を放棄してはならぬのだ。良いな。」


「それは、姫様のご随意に。ただし、あの傭兵にも、時間をかけて説明をしなければならないでしょう。」


「ふむ。そうとしよう。あの傭兵が断るやもしれぬしな。」


話が一段落したとみたガリンがようやく会話に混ざる。


「一体、何の話をしているのですか?サラが何か問題でも?」

「サラ・・・?」


ルルテがガリンに厳しい目つきで問いただす。


「え、いや、サラという傭兵の件ですが・・・。」

「分かっておるわ。そなたのうかつな行動のせいで、我がいたく傷ついておるのだ。」


ガリンは、訳が分からないと言った顔で、問い返す。


「は?何に傷つ・・・。」

「それ以上、一言でも寝言をいうのであれば、もう1発、今度は反対の頬に平手打ちが必要となるが?」


「・・・。」

「良い。ガリン。我にも問題があったのだ。今回は大目に見よう。」


「だから、何を大目に?」

「・・・。」


今度は、ルルテが黙ってしまう。


「とにかく、その服を脱ぎ、いつもの服か我が選んだ服に着替えるがよいぞ。」

「はい・・。」


ルルテがセルに相槌を送る。


「セル。」

「はい。」


セルは返事をすると、ガリンが手に持っている紙袋を手に取り、中に丁寧に畳んであるローブを目にする。


『しまった・・・。』


セルが、ローブを紙袋に急いで戻した時には既に遅かった。

ルルテは、見逃さない。


「ガリンよ。随分と丁寧に畳んでおるではないか?」

「い、いえ・・・。」


「これからも、自分の衣服は同じように綺麗に片すことができるのであろうな?」

「・・・。」


ルルテが、もう我慢の限界を迎えていた。

ルルテは、怒りの熱が一瞬で冷え、代わりに胸の奥から不安がせり上がってきたように、ルルテの瞳に涙が滲んだ。そのまま、その瞳の大粒の涙を浮かべて、屋敷の中に走り去ってしまった。

そして、その場には、呆けた顔のガリンが、ぽつんと一人残されるのだった。


「護士殿、追いかけて、とにかく慰めるのです。髪の毛を手櫛で整えてあげるなどが効果的です!」


セルが叫び、ローブをガリンに投げる。

ガリンは、わけがわからないといった風に、急いでローブに着替えると、ルルテを追っていくのだった。


その後、ガリンはドアの前で言葉を小一時間重ねることにより、さんざん拗ねていたルルテの部屋にようやく入れてもらえたのだ。

また、セルに言われた手櫛は絶大な効果を発揮し、じきにルルテの機嫌は直っていくのではあったが・・・。結局、夕食までの間、ひたすらねちねちと嫌味を言われ続けることになってしまった。

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