王都出発 その14 サラの提案
サラは、まずは、夏までの間に一番南の都市であるエゾラまで一気に移動し、その後北上する案を提案した。王都の南の街道は比較的安全で、街道にある街もしっかりと宿が揃っているところが多いとのことだった。同じ道を戻ることにはなるが、そこからゆっくり1年かけて北上して、次の夏に、都市が集まっている北方を回るべきだというのだ。
南の街道は、南下するときは、進行方向に向かって常に右側が内海であり、左側にはソマレルクク大山脈を見ながら街道を進むことになる。途中で山越えをすれば、山脈を越えた先にある外海側にある都市、リリーム、ジバス、マイカナ(王家直轄都市)も回ることができるが、街道に戻るためには、今度は外海側から山脈を越えて内海側に移動しなければならない。これは、かなりキツイ行程であるということだ。
そのため、まずは山脈を越えずに、内海側最南端のエゾラに行こうというわけだ。
そこから北上し、同じ内海側にあって行きには立ち寄らなかった都市クインタを経由して、そのまま山脈を越えて外海側に移動。そこからさらに北上して、リリーム、ジバス、マイカナと進み、ここで夏を迎える。その後、最北端の、マトロ(王家直轄都市)、イスレ、オンカラ、下に降りてハノン、最後にマンレン(王家直轄都市)に辿りつくというものだった。北路は馬車などが使えないため、基本徒歩になるため、マンレンに辿りつくときには、また季節が巡っているということらしい。完全な冬になる前に、北方の都市を抜けようという計画だった。
これなら、確かに最終的には王家直轄都市であるマンレンに辿りつけるし、予定通り、マンレンの次元接合門を利用して、エラン公爵が治めるウエラ領に渡るという計画も変える必要がなかった。
実際に旅をしたことがないガリンには、到底思いつく行程ではなかった。
「なるほど・・・。さすがとしか言いようがないですね。」
サラが立案した計画に、ガリンが感嘆の声をあげた。
「なるほどのぉ。」
なぜか、ルルテも続けて頷くのだった。
「満足してくれたさね?」
「ええ。確かに、私の立てた旅程では1年ほどで、すべての都市を回ることができるものでした。しかし、よく考えてみれば、確かに季節による街道の状態や、旅路の安全性などは考えていませんでした。なにより、自分たちの一団が旅に慣れる時間などは、一切考慮にはいれていませんでしたね。また、野盗の類などは、力により一掃すれば良いと軽く考えておりました。基本は、トラブルを避けるのが旅というものなのですね。」
サラが苦笑いを浮かべた。
「ガリンの立てた計画がダメだということなのか?」
ルルテが少しだけ面白くなさそうに尋ねる。
「いえ。単に時間だけを考えた私の計画では、実現性が低かったのです。それに比べ、サラが立てた計画は、おそらく大きな誤差なく終えることが可能な、実現可能性に主眼を置いているというだけです。」
「2年も旅を続けるのは大変ではないのか?」
ルルテの疑問はもっともである。
「確かに、サラの計画は時間が倍近くも掛かりますが、冬に山を登ったり、夏に赤道直下を歩かなくて済みます。また、途中途中でしっかりと休む時間も考慮にいれてくれていますので、野営の数も極端に減らすことが可能となるでしょう。」
「ふむ。暑さなど、結界を張ればよいではないか?可能なのだろう?」
「可能ですね。」
ガリンが、頷く。
「おいおい、お嬢ちゃん。同じ街道を行く他の旅人たちが、汗を流して歩いている中、汗もかかずに涼しい顔で歩く一団が、どう思われるか分かってるさね?」
「どう思われるのだ?単なる暑さの遮断の結界ではないか?」
「・・・・。」
サラが、言葉を失う。
「ガリンどういうことだ?」
「街道を旅をしている一団には、文様術を使える人員がいないのが一般的なのかと・・・。」
ガリンも、考えながら返答する。
サラが、困ったような顔でため息をつき、
「あのね。確かに、晶角士を連れた傭兵団なんか、あるわけないさね。ただ、それは問題じゃないんだよ。どうせ、普通の人間には、結界が何かも分かっちゃいないさね。うちだって、よくは知らないさね。問題は、目立つんだよ。暑い中、汗もかかずに涼しい顔をして歩いている集団は、とてつもなく目立つだろうさね。」
「・・・。」
「・・・。」
今度は、ガリンとルルテが同時に言葉を失った。




