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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第3章 王女と護士
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王女と護士 その4


ガリンは、1人でもあまり街中の見物などしたことが無かった。

ガリンには7歳より小さいときの記憶がなく、気づいたときは宮廷晶角士に養子として迎えられた後で、既に学院で生活をしていた。

以来、あまり学院の外に出たことはなく、ましてや誰かを連れ立って歩いたことは、師ととでさえ滅多に無かった。


それが任務であるとはいえ、自分の年の半分しかない少女を連れて街を歩いている。あまり現実味がないともいえた。


付け加えれば、自分が連れ立っている少女は自分以上に街に出たことなど無いだろう事は間違いが無かった。

ガリンは、


「ルルテ殿、ここからすぐそばに、あなたがこれから最低でも数度は訪れなければならない初等教育機関の学院がありますので、まずそこに参りましょう。

そこをぬけると、生誕祭のメインの市が立っている中央広間にでますので、そこでゆっくりと楽しんでみてはいかがですか?」


と、ルルテに提案をした。

ルルテは、学院などにはあまり興味が無かったが、話に聞いている中央広間の市には十分に興味があった。にべもなく、


「そうするとしよう。」


と同意すると、学院に向かって歩きはじめたガリンの後に続いた。


ガリンは、あまり知人には会いたくないと思いながらも、楽しそうにまわりを見渡しながら後をついていくる、少女の様子は決して不快なものではないと感じてもいた。


ややして学院に着くと、ガリンは、今となっては我が家ともいえる学院の説明を始めた。

学院は、初等教育機関と角士養成機関に分かれていたが、建物は大きな円形状のものが1つのみで、その東棟と西棟でその用途を隔てていた。

その奥には書庫棟や、晶角士個別の研究塔などもあった。


これから、ルルテが初等教育機関を出来るだけ早く卒業するための勉学を毎日少しずつ教えることや、どのような勉強をするのか等を説明していった。

また、初等教育期間の卒業や、王族であれば軍角士としての資格を後々は取らねばらないないこと等も、丁寧に説明を加えた。

最初はあまり、興味がなかったルルテも、いままで食事の作法や言葉遣いなどの強制的に学習させられた様々な”しつけ”よりは、ずっと面白いものだどだという感想を抱くと、後半はむしろ積極的に質問を交えながら話を聞いていた。


2人は、学園の入口脇にあるベンチに腰かけて話を続けた。傍から見ればちょっと年の離れた兄妹が楽しい会話をしているようにも見えるのだろうか?そんな雰囲気ともみれた。


ちょうどその時に、黄色い短髪の大柄な男と、赤い髪をした女性が、門からさほど遠からぬところを連れ立って歩いていた。


ナタルとリアである。

リアが、ナタルの腕を引き、歩くのを止めた。


「おい、なんだよ。早く広場に行こうぜ。」


「何いってるのよ。あそこ。門の横のところ。良く見て?」


と、その方向に目くばせをしながらナタルを促した。


「ん?あのカップルがどうかしたのか?知り合いか?」


何を言いたいんだ?といった顔でリアに聞き返す。


「ナタル・・・。あんた本当にどうしようもないわね。良く見なさいよ。見覚えがあるでしょ?」


「ん?そういえば・・・。どうでもいいけど、カップルにしては、年齢に差がないか?」


リアが促した答えとはまったく見当はずれな結論にたどり着いている。

リアは、あきれ顔で、


「・・・。あれは、例の晶角士よ!ちゃんと目付いてるの?」


と、半分怒りかけながら、ナタルを問い詰めた?

ナタルは、


「あ?あの白い・・・・・あぁぁぁあ!確かにあいつだ。あの晶角士じゃないか。一体こんなところで何やってんだ?それにあんな若い子供に手を出すなんて、あいつ実はおかしいじゃないか?」


と、ようやく気づき、リアの手を引いた。


「ちょっと・・・ナタルどうするのよ?」


「だから、ちょっとあいつの趣味をからかってやろうぜ。」


そう答えると、更に手を引っ張ろうとした。

リアは、もう一方の手を握りしめて、ナタル脇腹に一撃をいれた。

ナタルは、思わぬ抵抗にあい、一瞬せき込み


「何をするんだよ?」


と、リアに詰め寄った。


「あんた、本当に何も考えてないのね・・・。わたしも城でちらっとしか見たことはないから確信は持てないけど、あの女の子が晶角士が護士として仕える王女様なんじゃない?」


と、口早にいった。

それを聞くと、ナタルも、リアを引く手を緩め、


「なるほど。つまり、お忍びで城下街を見物ってことだな。最初からそういえばいいだろう?」


ナタルに自覚はなかった。

リアは、


「だから、考えて動きなさいよ。私の説明も何も晶角士だとわかった瞬間にもう歩き始めてたじゃない!」


と、今度は半分本気で怒っていた。


「ごめんごめん。いや、俺がわるかったよ。でもよくわかったな?」


「だって、今さら王妃に護士なんかいらないし、付けるとしたらそりゃ王女様でしょ。それに、このタイミングで、あの晶角士が子供を連れて街にでてくるなんてそれぐらいしか思い当たらないでしょ?」


「なるほど。」


ナタルがうなづく顔をみると、リアは思いきりおかしそうな顔をして


「それにね、ナタル。あの晶角士の格好を見てみて?。黒から一転して白よ?それに何あの趣味の悪い金の刺繍・・・あんな服、相当な成金趣味か本当に身分が高い者の礼服とでしか見たことないわよ。」


といって、声を殺して笑い、更に続ける。


「今度会ったら、あの宮廷護士に、ぴったりの服を見たててあげようと思ったけど、あの王女様、わたしより一枚上手だわ。だって、あんな面白い服を着せるんですもの。お忍びのつもりだろうけど、ぴったりだわ。。。あれじゃ金持ちの馬鹿息子ってところだもの。」


ナタルも、改めて椅子に腰かける2人を眺め、


「確かに、王女と護士には見えないな。」


といってリアの笑いを受け継いで、笑った。


「じゃあ、私達も、生誕祭楽しみましょう。」


リアは学院を背にして、広場に向かって歩き始めた。

ナタルは、


「おい、声をかけないのか?」


と、未練がましくベンチの2人を見たが、リアは


「せっかくのお忍びでしょ?私達がばらしてどうするのよ?

それにいいの?ゆっくりしてると闘技大会の出場申し込み終わっちゃうわよ?」


と、含み笑いをしながら、どんどん足を先に進めていってしまった。

ナタルも、


「まぁ、これからあいつを捕まえるチャンスはいくらでも有りそうだからな。今回は見逃してやるか。」


等と勝手なことをつぶやきながら、リアの後を追った。


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