王都出発 その6 ガリンとは②
レンが何を想像してそのような顔をしたのかはサラにはわからなかったが、ガリンを養子として育てる間に、何かがあったことは容易に予想ができた。
そして、それは強さと同時に危うさをもった何かなのだ。
サラは、もう一度、
「わかったさね・・・・。」
と頷くのだった。
この話が終わると、後の話は早かった。
レンは、サラにお願いして腰の鱗を見せてもらったり、大戦の時の話を聞いたりと、自分の興味を満たしていった。ある程度の話が終わると、
「サラよ。おぬしはかなり常識人なのじゃな。確かに我が弟子には必要な相方なのかもしれないな。」
サラに評価を加えた。
サラは、
「相方?ば、何言ってるんだよ・・・。」
ちょっと狼狽した。
「ふむ。あやつに何か言われたのか?」
「いや、な、なにも・・・。」
「まあ、良いわい。姫様は、強敵じゃぞ。」
レンは、そう言って笑った。
サラはあからさまに嫌そうな顔を見せたが、レンは、
「では、ガリンには、明日屋敷におぬしが行くことを伝えておくでの。明日の昼過ぎに門の兵士にこれを見せるが良い。」
サラに、小さな木片を差し出した。
「これは?」
サラが、受け取った木片をレンの目の前で指に挟んでくるくる回しながら凝視する。
「ふむ。それはな。我が弟子が発明した、木片板の元力石じゃ。ん?元力片と呼ぶべきかの?まあ、門番がそれを特定の元力石にかざすと、城内だけではなく、弟子がおる屋敷まで許可が下りていることが、門の兵士にもわかるようになっておる。」
「水晶以外に、文様を?そんなこと可能なのか?」
「わしは、知らんよ。ガリンが発明した新技術だ。」
「・・・。」
サラが再び言葉を失う。
「言ったじゃろ?だから、あやつは怖いと・・・。はっはっはっ。」
レンが再び楽しそうに笑った。
「ちっ・・・。」
サラが舌打ちをする。
「これ、女の子が行儀が悪いぞい。」
「女の子って・・・・。ったく、弟子が弟子なら、師も師さね。」
サラは捨て台詞を残すと、受け取った木片を再び人差し指と中指に挟んで、くるりと指を入れ替え、今度は中指と薬指で挟み込んだ。
その後ろ姿を、レンは楽しそうに眺めて見送るのだった。
サラは、レンに言われた通りに、翌日の昼過ぎに城の城門に訪れていた。あまり見たことがない光景に、サラなりには観光気分で楽しみながら歩いていた。というのも、サラ自身は昨日学院を訪れた以前に、ほとんど第2城郭市街を訪れたことはなかったからだ。
わざわざ行かなかったというよりは用事がなかったのだ。実際、生活に必要なほとんどのものは外郭市街で揃えることが出来たし、価格も安い。
外郭市街からの門を抜けると、香ばしい焼き菓子の匂いが風に乗って流れてきた。露店の呼び声や、子どもたちのはしゃぐ声が混ざり合い、普段の生活圏とはまったく違う活気が広がっていた。サラは、ぶらぶらとあたりを見て回りながら、マレーン城の門へと向かったのだった。
門に着くと、そこはかなり多くの人で賑わっていた。毎年の事で、去年はガリンとルルテも観光に訪れた『王座の間』が今年も解放されていたからである。人によっては、毎年城を訪れ、城内の雰囲気を楽しむ者もいる。サラは今まで一度も王座の間の観光に来たことはなかったが、もし時間があるのであればカカノーゼを誘って見に来てもいいな、とも思うほどの盛況ぶりだった。
内堀にかかる橋を超えると、目の前の門は、一般の国民用の大門と、その横の貴族や兵士たちが使う通用門の2つに分かれていた。王座の間を観光にきた多くの国民は、大門の前に列を作っているのだ。
サラは、レンに指示された通りに通用門脇の小さな詰め所に向かい、昨日渡された木片を兵士に掲げて見せる。
兵士は、その木片に刻まれた小さな王国の刻印に驚き、すぐに詰め所の元力石を木片にかざし、確認を始める。
サラにはよくわからなかったが、ここで待つように言われ、しばらく待つことになったのだ。
ほんの少し待つと、急いで2人の軽装備の男女が走ってきたのがわかった。
カカノーゼの知人で、自身も何度も会ったことがあり、例の護士の王女を紹介した2人、そうリアとナタルだった。
誤字脱字の修正と語尾の修正。2026.3.30




