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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第13章 7大文化圏会議と元服の宣誓
137/148

タイトル未定2025/11/22 08:47


エランは、木片をよく見える様に掲げて見せながら、


「この木片には、水晶の粉を利用して、日時、場所を生力石に記録させるための文様があらかじめ彫られている。もともと生力石は、生力石を用いて金銭授受を行うとき、生力石に記録されている預貯金情報を読み取って、それを随時書き換えをしているのだ。光浴を行う際は、前回の調整日と今回の調整日を記録し、その差異を調整しているのは知っての通り。また、それぞれの情報は履歴も記録されている。それら2つは故意に消すことこそできるが、今回の木片は、ただ記録するだけであり、勝手に消すことは出来ない。情報の追加記録だけであれば、売買の元力石や光浴設備同様に晶角士は必須でもない。貨幣の残額情報の更新の文様、及光浴時の日付情報更新の文様の2つを改変することにより、時と場所を一時的に生力石に記憶するこの木片を生力石にかざすだけで実現できるのだ。」


一気に説明した。


「なぜ、元力石を直接使わず木片なのですか?」


エトランゼが面白そうに問う。


「この方法だと、ある程度の木片は各文化圏用意せねばならない。元力石はそれなりに貴重で、使用できる状態まで研磨するのに手間がかかる。しかし、その水晶紛ならどうだろうか。各文化圏とも、日々水晶を生成し、加工し、元力石に文様を刻んでいるはずだ。その際には沢山の水晶紛がでるのでだろう?少なくとも我が国ではそうらしい。意志力を蓄積する機能さえ考えなければ、文様自体が水晶で書かれていれば問題はないとのことだ。」


「とのことだ?とは?」

「私は晶角士ではないのでな。この技術は、我が国の晶角士が開発した技術なのだ。詳しくはわからん。」


エトランゼの疑問にエランが答える。


「そんな安易に文様を刻めるのであれば、戦争利用も出来る技術なのではないか?」


エトランゼが、更に追及をする。


「開発した文様術師によると、水晶の量と質が均一ではないため、一方的な情報の記録ぐらいにしか使えず、意思放射を蓄積することも出来ないため、応用は効かないそうだ。武器でもなんでも意思力が介在しなければ意味はないと。逆に言えば、この木片は、時間は生力石内の時間情報を拾って記録するが、場所の情報はそうはいかないため、どうしても記録場所の情報だけは木片に文様で直接刻む必要があるらしい。だから、場所ごとに1枚ずつ別に必要となるわけだが、次元門と正門への配置、それと各文化圏で定めた数か所程度であれば、多くても1000枚を超えることはないだろう。マレーン文化圏でもそうなのだから、他の文化圏でもそれを超えることはあるまい。」


エランも、あらかじめ用意していたかのように流暢に答えを返す。

同時に、エランはルルテの護士に心の中で称賛を送った。今しがたエトランゼから発された質問は、2つとも護士が予測し、答えを用意していたものだったからだ。


「その技術は、公開していただけるのか?それとも、貴国が一手に製造を引き受けるのか?」


また、別の大使が質問をする。

エランは、大きく笑みを作ると、


「もちろん、独占などはしない。この技術は無償で公開しよう。」


と、各国大使に微笑みながら伝えた。これでは、大使たちは納得せざるを得ない。


確かに、元力石に変わる技術ではないにせよ、生力石への情報の付与が可能な技術だ。しかも元力石を使わずにそれを可能とする素晴らしい技術だ。生力石も元力石の1つであり、このことは、この水晶紛を使った文様技術は、あらかじめ記載した情報のみではあるが晶角士が介在せず他の元力石にも新たな記録が可能ということになる。既存情報の書き換えであれば、現在も元力石を配置した設備であれば可能だが、新規となるとまた違う。その応用範囲はかなり広いといえるだろう。しかも、意思力が蓄積できないということは、継続的な効果を維持するような文様を中心とする医療、軍事、工業などの核技術には抵触しない。既得権益にも抵触しない画期的な技術だ。

それを無償で提供するというのだ。これだけでも、この会議に参加した価値があるというものだろう。


「その技術は、この会議で公開されるのか。」

「その技術を開発した晶角士と話はできるのか。」


等、会議を忘れたような発言をした大使もいたほどだった。

天秤が1つマレーン王国に傾いたといっても過言ではないだろう。


「この新たな技術は会議が終了した後改めて日を定め、理論、及び実際の工程を、我が国の晶角士により実演させてもらうこととする。また、現物もサンプル品としてお渡ししよう。ただ、開発した晶角士は技術者であるため、その場には参加しない。」


エランは、その1つ1つに丁寧に答え、より新技術への各大使の興味をものにしたのだった。


「各大使らは、この我が国の提案を受けるもの考えても良いかの?」


唐突にレンが会話に割って入り、決を取る。

この流れで反対できる文化圏はない。全員一致でこの案は採決されたのだった。


「その技術は素晴らしいが、大切なことを忘れているのではないか?」


ジャラザンが重い口を開く。


「大切なことは?」


エランが問う。


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