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マレーン・サーガ  作者: いのそらん
第13章 7大文化圏会議と元服の宣誓
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7大文化圏会議と元服の宣誓 その8


7大文化圏会議は、マレーン城本翼3階にある、大会議室で行われた。

ドーナツ型の円卓に、それぞれが向き合う様に座り、城の入り口から向かって一番奥にマレーン王国国王であるルラケスメータ座っており、その左後ろに宮廷晶角士であるイクスレンザ、右後ろに宰相であるキムエラ公爵が立っていた。

マレーン国王から、時計回りに、クエルス文化圏大使のジャラザン、レタン文化圏大使のウラマダ、イルケス文化圏大使のセンタラ 、ノール文化圏大使のネノラス、コンヌ文化圏のデドロー、ウェンザ文化圏のエトランゼの順であった。

大使たちは、それぞれの見た目だけで護衛とわかる者を1名ずつ後ろに立たせていたが、ジャラザンの後ろに立つ護衛だけは商人風の出で立ちの男であり、目を引いていた。それでも、やはり一番目を引いていたのは、王の左隣のウェンがザ文化圏のエトランゼが連れている剣歯虎であり、馬ほどどの大きさのある虎は、視線を感じると口元を舌でペロリと舐めた。


そもそもジャラザンには、それを見る余裕すらももなかったのはあったが。

なにせ、王の右隣りである。故意にここに座らされているとしか思えない。ジャラザンの推測はもちろん正しい。


『今度は逃がさない』


という、マレーン王国からの明確な意思表示である。

そして、闘技大会で使われた元力石の文様が、惑星、次元両方の特性をもった文様であることから多少ではあるが関係を疑われるウェンザ文化圏の大使が左隣である。ウェンザ大使のエトランゼ女史は、大使の中ではもっとも若く経験も少ないと思われたが、逆にその顔には余裕ともいえる笑みが浮かんでいた。


ジャラザンは、自分の席がマレーン国王の隣であるとわかると、一瞬だけ足を止めたが、挨拶もせずに椅子についたほどである。かなり追い詰めらている様子であったため、王はまったく対照的な二人の大使の態度に心の中で笑みを浮かべたほどだ。


全大使が席につくと、レンが部屋全体に『誠実』の結界を張り、エランが7大文化圏会議の開催を告げる。そして、開催国であるマレーン国王、ルラケスメータ・マレーン・コグソの挨拶から会議は始まった。


「まず、各文化圏の大使の方々には、この多方面に憂慮が絶えない情勢の中、欠けることなく7大文化圏会議に参加してくれたこと、誠に嬉しく限りである。

平素の会議とは異なる議題を掲げ、これを各文化圏と話し合いが出来ることに心から感謝を述べたい。」


そう言いながら、ルラケスメータは軽くはあったが、頭を下げた。

それを見た、各大使が一斉に息を飲んだ。


そもそも、いくら開催国がマレーン王国であり、また、この7大文化圏の会議のホストが国王であったとしても、一国の王が位の低いものに頭を下げることは原則ない。それは、ここに座る、新任であったとしても大使の任を受けた者であれば、誰でも知っている常識である。

しかし、マレーン国王は、確かに頭を下げた。あまりに異例の事であり、大使が息のを飲むのも仕方がないことだと言えた。


逆に言えば、これこそマレーン国王からの先制攻撃である。

先の闘技大会では、自国民が起こした事件ではないにせよ、結果的には各国の重鎮を危険な目に合わせることになった。この会議でもそれを糾弾する声があがるだろうことは予想できた。だからこそ、王は、この感謝が事件に関わることであるという核心に触れるような言葉こそ避けたが、先に謝罪ではなく、感謝をすることで機先を制したのだ。


マレーン王国を責を問うことでのみ、自身の責任を避けうる立場であるクエルス大使のジャラザンは、この王の言葉に一手先んじられたとに、心の中で舌打ちをするしかなかった。

各国大使が静まるのを待って、エランが会議を進める。


「この度は、マレーン王国 宰相 キムエラ・ウアラ・キジシが議事を進めさせてもらう。開催の文、また開催にあたっての先触れでも伝えたように、まずは各国大使がその攻撃の対象となった、あの次元人による卑怯で、下劣な惨劇を2度と起こさぬよう。そしてあの惨劇に対し、我々7大文化圏がどのような協力を行い、今後の安全を確保できるのかを協議する場としてこの会議を設けたということを改めて伝えさせていただきたい。」


エランは、一同に視線を投げかける。

大使たちの何人かは重々しく頷き、そして何名かは曖昧に微笑んだ。特に、面白そうな目で、このエランの第一声を聴いていたのは、ウェンザ大使のエトランゼだった。


『実に、うまい言い回しだ。』


それが、彼女のエランの言葉への印象だった。


まず、あの惨劇が『各国大使がその攻撃の対象となった』と、これだけでマレーン王国の生誕祭で起きた事件が、なぜか各国大使を巻き込んだ、文化圏全体の問題へとすり替えられた。


確かに、あの場には各国の大使がおり、被害はなかったもののその観戦席も攻撃対象となっていたのは事実。しかし、もとより大使たちの座っている観客席には防護結界があり、被害を受ける可能性が少なく、場合によっては、首謀者側が、自信への嫌疑を避けるための自演である可能性すらが高い。それを、攻撃対象だったと言い切る。これはひどいすり替えだ。

更には、本来、マレーン王国が責を負う部分には一切触れず、『我々7大文化圏がどのような協力を行い、今後の安全を確保できるのかを協議する場』と改めて念を押している。これは、『みんなで協力しようね』という、同調圧力をうまく利用しているのだ。エトランザは、マレーン国王の横で苦い顔をしているクエルスの大使を見て目を細めた。


「まずは、闘技大会のホスト国として、マレーン王国側で掴んでいる情報を開示する。もし、付随するような情報を持っておられる方がおれば、ご意見も頂きたい。特にあの事件の首謀者である次元人が属しているクエルス大使からも、身元など補足をいただければありがたい。」


エランが続けた。

エトランザは、心で声をあげて笑った。

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