7大文化圏会議と元服の宣誓 その4
急な展開に、ナタルとリアは戸惑っていたが、カカノーゼがお構いなしに、サラの紹介を始める。
「こいつはな。サラニュート・ヨークと言ってたな。俺の傭兵団の古株の一人だ。こんなひょろいなりだが、強いぞ。おそらく、お嬢ちゃんよりも強い。」
そう言って、リアに頭を向けた。
リアもかなりの負けず嫌いである。顔から笑みが消える。
「おっと。怖い顔すんなよ。外見と年齢は一致しないこともあるんだぜ。こいつは、ある事情があってな。おそらく俺より年を食ってる。当然その分場数も踏んでるってわけだ。いくら嬢ちゃんが怖い顔したって、実力差は埋まらねえぜ。なあ、サラ、そうだろ?」
カカノーゼが楽しそうに声をあげながら、サラの肩を叩く。
「うちはそこのお綺麗なお嬢様の実力を知らないんだからさ。そんなの知らないさね。それよりもペラペラと要らないこと喋ってるんじゃないよっ!」
カカノーゼのおでこを、ぴしゃりと叩く。
「おお。怖ぇ、怖ぇ。」
「ちょっと待って・・・。」
リアが声を挟む。
「カカノーゼより年上って、何言ってるの?せいぜい、私より少し上にしか見えないわよ。外見と歳が一致しないなんて、人ではありえないでしょ?元力石の力を借りたって、せいぜい少し若く見える程度が限界でしょ?」
素直な疑問だ。
「おお。まあ、そうだな。」
あっけなく肯定するカカノーゼ。
「じゃあ、なんで?」
リアが続けて疑問を口にする。
「だから、事情があってって言ってるだろうが。俺がいくら細かぇことは気にしないって言ってもよ、まあ言えないこともあらぁな。ただ、サラはお嬢ちゃんより強い。ただそれが事実だってことだ。」
「・・・。」
そう言われては、リアもそれ以上は追及は出来ない。
「で、その事情有りのサラさんを呼んだのは、理由があってなんだよな?」
今度は、ナタルが口をカカノーゼに問う。
「それは、サラから直接聞きな。」
そう言って、サラの背中を叩く。
「ちっ・・。呼んどいて、人の秘密を口にするだけじゃなく、その後も丸投げとはね。あきれるさね。」
サラも、困ったように舌打ちをした。
「まあ、いいさ。話に耳を傾けてたのも事実だしね。聞きたいこと聞いてとっとと退散するさね。」
そう愚痴りながら、ナタルに視線を移した。
「そう言うなよ。鱗だぜ?お前こそ、この機会を逃していいのかよ?確かに嬢ちゃん達は、ここ最近は俺らとつるんでることもあるがよ。軍角士様だぜ。そうそうじっくり話す機会なんかねぇだろうよ。」
カカノーゼが大げさに両手をあげて、おどけせてみせると、サラはあきらめたようにため息をつき、諦めたように口を開いた。
「さっきの話だよ。頭の2本の角と、鱗の話さ。」
リアがナタルに目で頷くと、ナタルがもう一度衛士たちの噂についてサラに、先程よりも少しだけ詳しく話して聞かせた。
「なるほど・・・。」
サラは、そのまま黙ってしまう。
そして、急に立ち上がり、ナタルの顔を抱きかかえると、自分の腰に引き寄せた。
そして、そのまま短剣を留めている腰帯を少しだけ緩めると、臀部の一部をナタルに見える様に腰を浮かせた。
「なっ・・・・。」
リアが、短く声をあげる。
「サラは、リアに顔だけ向けると、子供は黙ってるさね。」
そう、目で威嚇すると、
「これだ。この鱗をよく覚えるさね。で、お友達の衛士に確認しておくれ。」
そのまま挑発するかのように腰をくねらせた。
リアは、顔を赤くして、今度はナタルに抗議の視線を向ける。
ナタルも、顔を赤くしながら、急いでサラの臀部から顔を起こすと、
「お、俺は悪くないぞ。」
そうリアに言い訳をするが、明らかに狼狽していては説得力はない。
サラは、面白おかしそうにナタルに顔を近づけ、
「お姉さんに欲情したのかい?坊や。」
言葉と共に、ナタルの耳に吐息を吹きかけた。
「ひゃ、いやっ。」
ナタルが、声にならない声をあげ、椅子からずり落ちた。
「サラ、からかうのはよせ。そいつら初心なんだよ。お行儀の良い軍学士様だからな。はっはっはっ。」
カカノーゼはサラを制止しながらも、そのまま盛大に声をあげて笑い、周りの団員も、サラがからかったあたりから、ナタルの狼狽を酒の肴にしていたらしく、つられて笑い、酒場が笑い声で包まれた。
「ふん。うちにも脈ありかね。」
最後に、そうリアに流し目をして、愉快そうに再び椅子に腰を落とした。




